RAGEがesportsシーンで一際輝いている要因は、運営トップの「選手好き」にある【CyberZ 大友真吾インタビュー】
2017年7月に公開したRAGE 総合プロデューサー・大友真吾さんへのインタビュー記事はそれなりの反響があった。あのあと、RAGEは瞬く間に国内esportsシーンにおいてトップクラスの大会へと駆け上がっていった。それはたしかにゲームタイトルのポテンシャルによるところが大きいのかもしれない。
しかし、RAGEに参加したいという気持ちを湧き起こさせたり、数千人の予選を捌ききったりできるのは、RAGE運営陣の手並みがあってこそ。どうにも熱意が空回りしていると感じるときもあったが、いまやその懸念は消えてなくなった。
RAGEの2017年における輝かしい躍進はいったい何に支えられていたのか。サイバーエージェントグループで、かつ広告マーケティング事業という柱――つまり「お金」があったからだろうか。いや、もし「お金」だけが要因なのだとしたら、ほかの企業も同じようなチャンスを掴めたはずだ。RAEGにはお金と、それ以外の要因があったのだ。
では、それ以外の要因とは何だったのか? この疑問を解消すべく、半年ぶりに大友さんにインタビューをお願いし、RAGEについて話を聞いてきた。CyberZ(サイバーエージェントグループ)の資本力の影に隠れて見えづらい、RAGEが躍進した大事な要因をぜひ知ってもらいたい。
※大友さんの人柄や考えについては前回のインタビューを読んでほしい。また、今回のインタビューは1月12日(金)に行なった。
オリンピックの議論と距離を置いてるわけではない
――前回のインタビューが2017年7月で、そこから半年。いろいろありましたが、やはり唯一日本人としてTGS 2017の基調講演に登壇したことについて、まずはうかがえればと思います。
あの場のお話で印象的だったのは、ほかの登壇者に比べて大友さんが「選手をどう魅せていくか」という点を強調されてたことです。これは前回のインタビューでも、あるいはほかのゲームメディアのインタビューでも繰り返されていることですよね。
大友:
僕以外の登壇者は3人とも海外の方でした。アメリカは日本以上にesportsが盛り上がっていて産業として成り立ちつつありますから、そういう状況を前提としたお話をされてたと思います。一方で日本はesports黎明期。自分の立場でどんな話をすればいいのか、少し悩みました。
ですが、RAGEのコアコンセプトが「選手ファースト」ですし、自分たちが力を入れ続けてきたのもそこです。なので、講演は実例を示せることとして、選手にフォーカスした内容にしました。
――ほかの方の話を聞いてどうでしたか?
大友:
海外のesportsは日本と比べてかなり発展しているという印象を持ってたんですが、実際にお話を聞いてみて、プロゲーマーという職業が完全に一般化してるわけではないんだなと思いましたね。esports先進国として雲の上の存在的に捉えられがちですが、日本と似たような課題感も持っているんだなと。
あと、オリンピックが話題に上がってても、そればっかりに意識を向けてるわけでもない。既存のファンやユーザーが求めていることに応えていきたいという、当たり前かもしれませんが、地に足が着いてるという印象を受けました。
――日本でちゃんとesportsに取り組んでる人なら、自分たちと同じようなことを考え、同じような課題を持ってると共感する話でしたよね。
とはいえ、esports業界外で分かりやすくてウケがいいのはオリンピックです。2017年の後半はesportsといえばオリンピックというくらい並列してニュースに取り上げられていました。ただ、その中でCyberZやRAGEはオリンピックと距離があるというか、同じ記事の中で見かけることがほとんどなかったですよね。
大友:
オリンピックは大きなトピックだと思いますし、もしesportsタイトルがメダル種目に採用されれば市場拡大のチャンスとなるはずです。我々としてもまったく他人事というわけではなく、何かしら協力できることがあればいいなと考えてます。
――わざと距離を置いてるわけではないんですね。いわば中立で、それはまさに僕がCyberZに期待してるところです。esports業界にも、熱い人と冷ややかな人、両方いますから。
選手みずからパフォーマンスするように
――僕は大友さんがTGSでお話されたことをこの半年間、まさに有言実行されてきたんだなと考えてます。特にRAGE 2017 WinterのGRAND FINALSを会場で観戦して、それを強く感じました。
これまでは運営側の「選手ファースト」を始めとする膨大な熱量を選手・観客側が受け止めきれてない印象を持ってたんですが、このときはその熱量がついに届いたのか、選手自身が大会を盛り上げようとしてて、観客も自分から全力で楽しもうとしてるような印象を受けたんです。
もしくはRAGEを中心としたコミュニティができ上がってきたと言えるかもしれません。急にそうなったのか、あるいは何か仕掛けがあったのか、ぜひ教えていただきたいです。
大友:
たしかに、回を増すごとにGRAND FINALSの熱気は増してます。その理由として、観客の皆さんがどのタイミングで何を楽しめばいいのかを分かってくれるようになったことが大きいと思います。試合開始のフレーズである「3 2 1, Bring it On!」がどこまで浸透してるか分かりませんが(笑)、声を上げて選手の応援をしたり会場で騒いだりしていいんだと認識されてきたんでしょうね。
――RAGE 2017 Winterの決勝戦では、hasu選手が先攻を取るだけで会場が沸いてたのも印象的でした。あれはちょっとできすぎでしたが……(笑)。
※hasu選手が3連続で先攻となり、対戦相手の紅茶/PaR選手はまったく何もできずに敗北した。が、そのあと紅茶/PaR選手は世界大会のWorld Grand Prixで優勝を果たす。
大友:
それと、特に変わってきたのが選手たちの言動です。例えば、最初の頃は入場すること自体を恥ずかしがる選手もいて、まっすぐステージに歩いていって直立する、それで精一杯でした。ところが次第に、選手側から「こういうパフォーマンスをしていいか」といった提案を受けるようになってきたんです。過去の選手がどんなことをしてきたのかを見てきたので、こんなことをやれば観客に受ける、かっこいいということが分かってきたんだと思います。
――vol.1と2017 Winterの選手入場シーンを見比べたいですね。パフォーマンスに関して選手からの提案があったとのことですが、運営側からも指示やアドバイスはするんでしょうか。
大友:
以前はリハーサルのときに細かく指示してましたが、最近はほとんど選手に任せてます。もちろん困ってる選手がいたらアドバイスはしてますね。
――GRAND FINALSに出場する選手って毎回違うじゃないですか。つまり、ほぼ全員が初めて大舞台に立つわけです。なのにパフォーマンスできてしまう、しようと考えるっていうのは率直にすごいなと思います。
大友:
リハーサルで「大丈夫かな」とちょっと不安に感じる選手も、本番になるとスイッチが入っていい顔をするんですよ。予選からがらっと印象が変わる選手もいますし、撮影会のときに「気合いを入れて来ました」とコンタクトレンズで来てくれる選手もいます。やはり人に見られることへの意識が出場選手全体に共有されつつあるんだと思いますね。
――そういえば、繰り上げで出場して2017 Winterで準優勝、World Grand Prixで見事優勝した紅茶/PaR選手は予選時から名前を変えましたよね。リプトンはやっぱりダメでしたか。
大友:
他社の商標のため、商標権侵害のリスクがあったので、本大会で使うことはやはりよくないと判断し、変更をお願いしました。
――提案した際、紅茶/PaR選手の反応はどうでしたか?
大友:
僕が直接やり取りしたわけではないんですが、すぐに対応してもらえたようです。
――ゲーム内の名前ってけっこう適当に決める人も多いんですが、RAGEのような規模の大きい大会に出場し、さらに今後シーンの中心で活躍しようと考えるなら最も大事と言ってもいいことです。紅茶/PaR選手がどういう経緯で名前を変更したのかは気になってたので安心しました。
数千人の予選を捌く運営ノウハウ
――2017年の後半からRAGEの種目は『Shadowverse』だけになりましたが、ほかのタイトルはしばらく予定がないんでしょうか。
大友:
実はほかのタイトルを準備してます。これについてはしばらくお待ちいただければと。
――それは期待大ですね。大友さんも「esportsを盛り上げていく」と言われてますが、種目が『Shadowverse』だけになってしまうと「esports」は大言壮語な感じで首を傾げるところがあるので、ぜひまたいろんなタイトルで同規模の大会をやってもらえると楽しそうです。
それにしても、『Shadowverse』の1本になったのはどんな意図があったんでしょうか。
大友:
タイトルについては現状の規模感だけでなく将来像も大事なので、かなり厳密に議論してます。昨年は6月以降、タイミングや巡り合わせがよくなかったこともあり、『Shadowverse』に集中することにしました。開催できそうなタイトルもあるにはあったんですが、やはりお互いのタイミングが合わなかったんです。
――数千人の予選を大きな問題なく開催してこられて、しかもGRAND FINALSは日本でもトップクラスの演出になってますから、大会運営に関してはものすごいノウハウが蓄積されてると思います。おそらくどんなタイトルでも運営に関しては困らないんじゃないでしょうか。
大友:
失敗もしてきましたが、この1年でRAGEチームの運営力は飛躍的に高まったと思います。もちろんタイトルごとの特徴があるのでそれは踏まえないといけませんが、大会としてケアすべき点は把握できていますね。
――これまでは1日3000人の予選が最多だったんですよね。ところが、2月のRAGE 2018 Springの東日本予選はさらに増えて6000人と(西日本予選と合わせて8000人)。そんな人数が一堂に介して試合をするって、もう意味が分かりません(笑)。
※2017 Winterの東日本予選の参加者数は5000人だが、2日間に2500人ずつが参加したので、1日の最多はRAGE vol.5の3000人の東京予選となる。
大友:
『Shadowverse』のパワーにも驚かされてます。毎回応募人数が増えていて、6000人の枠でも足りず抽選になってますから。なんとか抽選しなくていいようにしようとしてるんですが、追いついてないのが現状です。そこは申し訳ないです。
――ちなみに、告知ってどこでやってるんですか?
大友:
Twitterとプレスリリースを通してのメディア掲載、それとゲーム内でのお知らせが主です。有名プレイヤーに協力してもらうこともありつつ、基本的にはSNSが中心です。肌感覚ですが、口コミも増えてるようですね。
――ゲーム内告知は強力なので、グループ会社とはいえCygamesに密な連携をしてもらえるのはいいですよね。他タイトルでもそうした部分を期待してます。
賞金100万ドルが話題に
――参加人数もそうなんですが、会場の一体感、選手のパフォーマンスなど含めて、RAGEはまさに毎回成長してる大会だと思います。RAGE 2017 Winterの2週間後に同じ会場でWorld Grand Prixがあると聞いて、しかもそれがより豪華になってるのを見て、大会を成長させながら開催し続けることが日本のesportsシーンにおいていかに大事か、改めて感じました。
大友:
大会を開催してる立場の方なら分かってもらえると思いますが、会場を毎回広くしていくのは簡単ではないんですよ。実際、9月に開催したRAGE vol.5 with シャドバフェスは東京ビッグサイトでしたから、12月のRAGE 2017 Winterを開催したベルサール高田馬場は会場としては狭くなりました。
ただ、会場が狭くなったから大会自体もしょぼくなったとは絶対に思われたくなかったんです。なので実は9月よりも12月のほうがプレッシャーが大きかったんですが、演出や映像にこだわって、会場の一体感と熱気は9月以上にパワーアップさせられたと感じています。
3月のRAGE 2018 Springは幕張メッセでの開催で、会場は広くなります。いろいろと仕込んでいるので、ぜひ楽しみにしておいていただきたいですね。
――それと、年末には例の100万ドル大会、2018年のShadowverse World Grand Prixが控えてますよね。100万ドル……ほんとですか?
大友:
本当です。メディアでもかなり取り上げられてましたし(笑)。
――その発表があった頃、国内では高額賞金大会について議論が巻き起こってました。特に、esports統一団体によるプロライセンス制導入の目的が高額賞金大会の開催だと言われてましたが、それを気に留めることもなく100万ドルの発表があったので驚きました。
大友:
これは通常のRAGEと同じくオープン懸賞の枠組みに則った賞金拠出です。弊社グループとしてはこの賞金額でも問題ないと考えてます。
――それまでesports団体やプロライセンスの議論に登場してこなかったサイバーエージェントグループが一石どころか一億石を投じたわけですが、ここから業界が高額賞金大会の開催をどうしていくのかも楽しみですね。高額賞金は大会ブランドとコミュニティがあってこそ意味があるものだと思いますが。
ところで、CyberZとしてはこうした議論についてどう思われてますか?
大友:
現時点で、プロライセンスについては情報の出方、受け取り方によって誤解が生まれてる気がします。「高額賞金を出すにはプロライセンスが必要!」といった捉えられてることもあるようですが、我々がやってるように方法はそれだけじゃないはずです。
また、プロライセンスは高額賞金大会のためというよりも、ゲーマーの地位向上にポジティブに働くといいなと思ってます。統一団体としても、ゲーム会社と連携してプロライセンスを発行し、ゲーマーやesportsの地位向上に前向きに取り組んでるはずなんですよ。おそらくリリースのタイミングで出せる情報も制限があったのかなと推察します。僕らも統一団体側の方と何度も話をしてますし、協力できることがあれば取り組んでいくという姿勢でいます。
――この件ではももちさんや江尻さんが力のこもった記事で「得体の知れない新団体がプロライセンスを発行すること」に懸念を表明してました。大友さんも読まれました?
大友:
はい。プロライセンスが選手の皆さんにとって有益で、目指すべき存在になるといいなと思います。
――僕としては、すでにさまざま言及されてるような問題点や課題はありつつ、なにより団体やゲーム会社が選手・プレイヤーと全然コミュニケーションできてないことが明白になったと思うんですよ。
大友:
それもあるかもしれません。僕らも新しい企画に取り組むときは、選手やプレイヤー目線を持ってる人にどうすべきか尋ねます。やはりユーザーがわくわくして楽しめるかどうかが一番大事なので、コミュニケーションで得た反応が重要な基準になってますよ。
運営トップが選手とゲームの話で盛り上がれる
――先日とある人と話してる際、プレイヤーファーストを謳うようなゲーム会社でも実はプレイヤーときちんとコミュニケーションできてない(企業論理を優先してしまう)、ということが話題に挙がりました。CyberZはゲーム会社ではないので直接プレイヤーとやり取りする機会は少ないと思うんですが、どうやってプレイヤーとコミュニケーションを取ってるんでしょうか。
大友:
運営陣は予選大会のときにプレイヤーと話すことが多いですね。ファイナリストが出揃ったあとは撮影会やインタビュー、抽選会などでけっこう気軽にコミュニケーションしてます。
僕もそれぞれの現場にいるので、休憩時間に選手と「いまどんなデッキを使ってるのか」みたいな話をします。それと、実は選手紹介動画のインタビューは僕がやってるんです(笑)。
――カメラの横には大友さんがいると(笑)。大会運営のトップが選手とゲームの話で盛り上がれるって、たかがそんなことと思われるかもしれませんが、案外……なんですよね。プレイヤーとコミュニケーションしててもお金がない、お金があってもコミュニケーションできてない、そんなちぐはぐな企業が多いように感じます。資本力とコミュニケーション力が噛み合ってることがRAGEの強さなんでしょうね。
大友:
あと、選手のキャッチフレーズ(二つ名)も僕が考えてます。予選の試合や立ち振る舞い、インタビューのときの印象などを踏まえて、その選手を一言で表せるようにしてますね。最近ではメンバーにも一部任せていますが、すべて私が納得したものを出してます。
――インタビューだけでなくキャッチフレーズもですか。大友さんの立場なら誰かに任せるような仕事かと思いましたが、意外です。
大友:
それは好きだからというのもあると思います。僕はK-1の全盛期を小中学生のときに見てて、キャッチフレーズがとても印象に残ったのを覚えてます。やっぱり選手の特徴や個性が一瞬で分かるキャッチフレーズって大事だと思うんですよ。
あと、アフターパーティでも来場者の方に積極的に話しかけてます。皆さんからいただける意見は本当に参考になりますから。時に耳が痛いこともありますが……(笑)。
――実際、僕もアフターパーティでスタッフの方に改善点を訊かれたことがあり、PDCAが存在してることにめちゃくちゃ驚かされました。コミュニケーションしないと、という使命感のようなものがあるんでしょうか。
大友:
単純に好きなんですね。前回のインタビューで選手が変わってく姿を見るのが楽しいとお話ししましたが、選手と話をすることも楽しいんです。
――ゲーム会社や大会オーガナイザーなどは選手ファースト、プレイヤーファーストを謳うことが多いですが、じゃあ実際どれくらいプレイヤーとコミュニケーションしてるのか、疑問に思うこともけっこうあります。現場の人はまだしも、上の人がどうかですよね。RAGEの場合、そこはあまり心配しなくてもよさそうです。
読者の皆さんも、もしRAGEに何か意見などあれば送ってみてください。きっと何かしら応えてくれるはずです。
CyberZはesportsプラットフォームに
――ところで、2017年のCyberZといえば、ゲームとesportsへの全方位的な進出が印象的でした。配信プラットフォームのOPENREC.tvから始まり、大会のRAGEが加わって順調なところにストリーマーやキャスターを抱えるeStreamの設立、ゲーム攻略サイトであるGAMY(サイバーエージェントからの事業移管)の運営開始が続きましたよね。それと、選手やチームのスポンサードも行なってます。
これは会社として全面展開することになったということですか?
大友:
2017年9月の決算報告で、サイバーエージェントグループの新規事業領域に初めてesportsが登場しました。これまでは単体でやることが多かったんですが、グループオールで取り組んでいくことになったんです。やれることは何でもやろう、という姿勢です。
――本当にesportsプラットフォームになろうとしてる感じですよね。AbemaTVでもゲーム専門チャンネルのウルトラゲームスが始まり、そのPVの最後にRAGEが出てくるのが印象的というか、象徴的でした。一方で、OPENREC.tvとAbemaTVの兼ね合いも気になります。
大友:
AbemaTVはチャンネルごとに編成された、テレビ局に近い放送プラットフォームです。OPENREC.tvにも公式番組はありますが、メインは個人のための配信・コミュニティプラットフォームです。外からはカニバるように見えるかもしれませんが、プラットフォームとしての成り立ちが異なるので、シナジーを生める関係にあるんです。
あと実は、ウルトラゲームスのプロデューサーは弊社代表の山内です。OPENREC.tvの総合プロデューサーと兼任してるので、相乗効果は大きいと思いますね。
――そうなんですね、であれば大丈夫そうな気がしてきました。僕も最近OPENREC.tvを観ることが増えてます。視聴者数の多い配信者でも多様なゲームタイトルをプレイしてるのがいいですよね。『スプラトゥーン2』を始め国産ゲームも多いですし。
大友:
いま、OPENREC.tvは弊社の最注力事業になってます。片手間でやって当たればラッキーという事業ではなく、これが外れたらCyberZはおしまいだという投資やリソースの配分をしてるんです。何か懸念や問題があったら全員で集まって対応することになってます。
――CyberZといえば広告マーケティング事業が柱ですが、いま段々とゲーム事業との両輪になりつつあると。
大友:
広告マーケティング事業も順調に成長してまして、その利益をRAGEやOPENREC.tvに投資してる状況です。
――第9期決算公告を拝見したところ、7600万円の赤字が計上されてましたが、これはつまりゲーム・esports事業への投資だと考えていいんでしょうか。
大友:
会社としては想定外の数字ではないですね。
――非常に心強い数字に思えます。
2018年の目標は来場者数3万人
――では最後に、大友さんとRAGEの2018年の抱負を教えてください。
大友:
2018年はesports自体の認知度が高まり、2017年以上に盛り上がりそうな期待感があります。国内の複数のゲーム会社もesportsタイトルを準備されてると聞いてます。そんな状況でRAGEの存在感を際立たせるための目標として、来場者数と視聴者数を倍以上にしたいと考えてます。
具体的には、2017年は来場者数1万人を達成できたので、今年は3万人ですね。いまのやり方を続けていけばいずれ5000人、1万人が来場するイベントを定常的に開催できるようにはなると思うんですが、そこをブレイクスルーして2万人、3万人を目指すには足りません。
2017年はたしかに参加者数も来場者数も伸びましたが、小さな変化や進歩はあったとはいえ、RAGEに何か大きな変化があったわけではないんです。だからこそ、今年は2017年以上に大きなチャレンジをしていかないといけません。
――たしかに、予選の参加者数が何千人いても、その全員がGRAND FINALSを観戦しに来たかというと別ですよね。
大友:
それは大きな課題として感じてます。さらに言えば、ゲームのプレイヤーはもっともっといるわけです。その人たちが遊びに来たくなるようなイベントを開催するために、120%の成長ではなく、150%、200%の成長を目指して一捻り二捻りを加えていきたいですね。
――例えば『Shadowverse』のポテンシャルを考えると、参加者・来場者ともにもっと伸ばせるだろうと。そこをうまくやったのが、プロリーグを視聴すること、会場で観戦することをプレイヤー文化として根づかせた『LoL』でしょうね。ただ、さすがの『LoL』もまだ1日で3万人は来場してません。日本のesports関係ではまだ誰も到達したことのない数字かもしれません。
大友:
esportsイベントに限らず、簡単ではないでしょう。だからこそ、1日で3万人来場というのは大きな目標となる数字だと思います。現状で満足はしてませんから、ぜひこれからのRAGEに注目しておいてください。
インタビューを終えて――いい意味で「サイバーエージェントグループだから」
CyberZやRAGEの話をするとき、どうしてもサイバーエージェントグループであるということが頭を掠める。要するに、力強い組織力と資本力が背景にあることを前提で語ってしまう。しかし、成長しない事業は早々に見切ってしまうのもまたサイバーエージェントグループの特徴だとも言える。そんな環境で、RAGEは成長の萌芽を見せつけ、現に成長してきた。
たしかに、RAGEの成長には豊富な資本が欠かせなかっただろう。しかし、今回のインタビューを通して、大友さんを始めRAGE運営陣が積極的にプレイヤーや観客に寄り添おうとしていることが感じ取れたと思う。正直、外から見ると札束で殴りかかったのではないかと思えるような取り組みもあるが、実際にはその裏に相手方との密なコミュニケーションがあったはずだ。そして会社としての覚悟があるからこそ、お金も用意できる。
もちろん、大友さんが言うように多くの失敗を重ねてきたはず。僕もいくつかRAGEに対する「憤り」を耳にしたことがある。けれども、それを乗り越えて、RAGEは飛躍的な成長を遂げている。「サイバーエージェントグループだから」という一言でRAGEの躍進を説明することは最初からできなかったのだ。むしろ、今後グループ全体で取り組んでいくということで、そのときにこそポジティブに「サイバーエージェントグループだから」と言える日が来るのではないだろうか。
esportsに取り組む各社各人の試行錯誤が続く中、3万人来場を目指すRAGEの行く末から目が離せない。
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大友真吾 @o6ulys_o
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取材・執筆
なぞべーむ @Nasobem_W
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