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【DTM/作曲】Makinaの作り方 概要&構成編【初心者向け】
Makina(マキナ)はスペイン発祥のハードコア・テクノに分類される音楽ジャンルで、イングランドのノース・イーストに大きなシーンがあるダンスミュージックです。
音楽としてはけっして複雑ではなく、DTMないし作曲の経験が少なくても作りやすいと思うので初心者向けです。
ということで、今回は日本国内では超がつくほどマイナーなジャンルであるMakina楽曲の作り方(How to make Makina)を解説します。
解説する人はNasobemです。日本人のトラックメイカーで、作曲を始めてからMakinaばかり作っています。よかったらYouTubeのチャンネル登録をよろしくお願いします。
この記事は音楽的な構成を解説する総論的な内容で、DTMの経験は少しあるけどMakinaを全然作ったことがない人向けです。すでに作ったことのある人は、もう分かっていることばかりでしょう。
また、具体的な音作りやコード進行、メロディについてすぐ知りたい場合は、構成の各パートの作り方や具体的な音作りについて解説した「音作り&楽器編」を読んでみてください。
とにもかくにも、1人でも多くの人にMakinaを知ってもらい、1曲でも多くMakinaの楽曲が日本で生まれて、Makinaが当たり前に楽しまれるようになれば嬉しく思います。
※マイナーではありますが、先人の活躍のおかげで国内にもシーンがあり、コンポーザーやプロデューサーがいます。
注意事項として、この記事での解説は僕なりのMakinaの解釈であり作り方なので、数ある作り方の中の1つとしてお試しください。
※本場のMakinaのチュートリアルを知りたい人はRewired RecordsのFree Makina Courseや動画を見てください。例えば下記ではドロップの作り方が解説されています。
Rewired Recordsはノース・イーストにあるMakinaのレーベルで、日本人が英語で触れられるMakinaシーンの最先端を作っています。
※Makinaの楽曲を作るなら同じくRewired Recordsが販売しているサンプルパック「Makina Starter Pack」が無料なのでおすすめです。
有料のものなら「Ultimate Makina Toolkit」をとりあえず買っておけばOKですが、leadが不足しがちなのでSerumがあるなら「Infinite Makina for Serum」と「Infinite Makina 2 for Serum」もおすすめです。
Makinaらしさ
まずは実際の音作りの前に知っておきたい「Makinaらしさ」を解説します(例外と多様性あり)。
Makinaってどんな曲なのかを知りたい人は↓の曲を聴いてみてください。この記事でリファレンスする僕の『Desert Succulent』という曲です。
Makinaの特徴
クラブミュージック
打ち込みで作る
BPMは160~180
1パートは16小節(8小節×2)
kick、bass、leadが主体で特にkickとbassが強い
kickは原則四つ打ち
bassはルートの八つ打ちで、表拍は1オクターブ下(なくてもいい)
leadのメロディはシンプルで繰り返しが多い
rayada(screech)という楽器を使うことがある
コード進行自体は使わなくてもいい
ボーカルやボーカル・サンプルもわりと使う
あまりPanしない
使う音や楽器について
ほとんどすべての場合でサンプル音源、ソフトウェア音源、ソフトウェア・シンセサイザーを使います。
主に使う楽器は下記です。
kick
bass
lead
rayada
open hi-hat
close hi-hat
clap
crash
reverse crash
snare
pad
pluck
stab
acid
keys
FX(riser、down sweep、impactなど)
vocal
vocalについて
Makinaはvocalのないインスト楽曲が多いですが、ボーカル・チョップを入れることもあれば、歌詞を伴うVocal Makinaという派生(?)ジャンルもあります。vocalを使う場合はmain leadの代わりに。
コード進行について
コード進行は使わなくても全然OKです(使ってもいい)。作曲するときにコード進行で頭を悩ませている人には朗報ですね。
その代わりにルートをbassで強く鳴らすので、bassはルート進行とでも呼ぶべき奏法になります。
![](https://assets.st-note.com/img/1702016299390-KEuhQ1yoBR.png?width=1200)
ほとんどの場合、4小節 or 8小節 or 16小節でルート進行のパターンを作ってあらゆるパートで使い回します(使わないパートもあります)。
と言いながら、bassと同じタイミングで、ルートに3度や5度を足したleadやstabを鳴らすこともあります。pianoやstringsでハーモニーを作るというより、bassを起点にハーモニーを作る感じですかね。
Panについて
バンド構成のジャンルではバンドの各楽器が位置しているように楽器やトラックをPanすると思いますが、MakinaではそういうPanはほとんどやらないようです。楽器やトラックは低中高の音域に割り振るだけのことが多いです(vocalを入れる場合はそうでもないですが)。
本当に初心者向け?
最初にMakinaは初心者でも作りやすいと書きましたが、それは使う音やトラックの数が少なく、各楽器やトラックで何をすればいいかが分かりやすいからです(ただし、bassやleadのレイヤーはかなりやります)。
J-POPやボカロ曲のようにいろんな楽器をいろんな音程で重ねてジャカジャカジャカっと音を鳴らしたり、1曲中で1、2回しか使わないような細かいフレーズや工夫を散りばめたりはほとんどしないんですよね。
ただ、それは逆に言えば少ない音数でパワーを出さないといけないということで、楽器を増やして賑やかにするテクニックが効かない難しさはあるかもしれません。
kick、bass、leadだけで楽曲を成立させる。僕はこれがMakinaの原則であり面白さだと考えています(EDMもおおよそそんな感じですよね)。
Makinaの構成
楽曲の構成は自由ですが、オーソドックスなのは下記のような感じです。ただ、これは僕の用語で正しい名称か分からないため、将来呼び方を変える可能性もあります。
Play Intro前に「遊び」として入れるパート
Intro kickとbassでリズムを強調するパート
Bridge Introに楽器やボーカルチョップを足したり、Rayadaでリズミカルなメロディを奏でたりする最初の盛り上げパート
Verse 激しいBridgeからいったん落ち着いてBuildupに繋げるパート
Buildup Verseを受けながら、Dropに向けて盛り上げていくパート
Drop 楽曲の中で最も盛り上がるパート
Ending Introと似た感じにする締めのパート
各パートの長さはそれぞれとはいえ、だいたい16小節か32小節、IntroやDropは32小節が多い印象です(Dropは16小節ずつでメロディを2パターン作ることが多いかも)。
では、各パートを『Desert Succulent』を参照しながら詳しく解説します。
1. Play 0:00~0:11
曲の始まりはIntroなんですが、その前に短い「遊び」のパートを入れることもあるのでPlayとして分けました。ない場合もわりとあります。いわゆる掴みのパートですね。
Playではドロップのメロディ(またはちょっと変えたもの)を使ったり、Verseと同じにしたり、作り手によってさまざまです。リズムだけのIntroが地味になりがちなので、アニソンやJ-POPのようにインパクトのあるパートにすることもあります。
『Desert Succulent』ではスネアロールとriserを入れて、Verseと同じメロディを小さく入れています。それと、背景に砂漠っぽいホワイトノイズ。「これから始まるぞ!」って感じですね。
2. Intro 0:11~0:33
Makinaはダンスミュージックなので、Introでは踊り始める(またはDJが流していた前の曲から続けて踊る)ためのリズムを作ることが多く、だいたい16小節を取ります。hi-hatやclapなどを足して変化をつけながら32小節やそれ以上に取ることもあります。
最もシンプルなのはkickとbassだけのIntroです。bassはルート進行の最初の音、もしくはスケールの中の好きな音を使います(ルート進行自体を使うこともあります)。このパートを装飾する方法は多々ありますので、いろんな楽曲を参考にしてみてください。
『Desert Succulent』では16小節をIntroにあて、リズムを作っています。後ろにpluckでアルペジオっぽいのも入れていますね。
3. Bridge 0:33~1:18
Bridgeは「Dropより先にちょっとノリのいい激しめのパートを入れてみるか!」という感じで入れるパートです。意味的にはDropまでの橋渡し。
ルート進行を使いながらメロディを足したり、hi-hatやclapを足したり、ボーカルやボーカル・チョップを入れてみたり、何でも自由です。
また、ここでrayada(スペイン語、screech/ひっかき音のこと)という楽器のパートを入れるとMakinaらしさを出せます(でも使わない楽曲も多い)。どんなふうに打ち込むかが難しいんですが、基本はルート進行で使っている音(と±1のオクターブ音)をリズミカルに打ち込めばいいと思います。
『Desert Succulent』では2段構えのBridgeです。前半の16小節ではDropのメロディをまったりさせたメロディを入れて、後半の16小節はrayadaで激しめにしています。
4. Verse 1:18~1:40
Verseは激しいBridgeをいなし、ゆったり落ち着いて再び元気をチャージするための準備パートです。
もしpadやkeysでコード進行を使うとしたら、このVerseで使います。コード進行は音符を刻んだりリズムを作ったりしてもいいですし、べたっと全音符でもいいと思います(Makinaの場合は全音符が多い印象です)。
このあと、最も盛り上がるDropに向けて盛り上げていくパートであるBuildupに繋がっていくので、Verseの後半でkickなどドラム系を少し入れてわくわく感を出してもいいんじゃないでしょうか。
『Desert Succulent』ではPlayと同じメロディとコード進行を使っています。
5. Buildup 1:40~2:02
Buildupはダンスミュージックではおなじみ、スネアロールやriserを入れてだんだん盛り上がっていく感じを演出するパートです。
抑えめのlead(3レイヤーなら1つだけ使うとか)でDropと同じメロディを入れる場合や、Dropをちょっとおとなしくしたメロディを入れる場合などがあります。
『Desert Succulent』の場合は、Dropと同じメロディをlead1つで鳴らしています。kickも後半に低音だけ入れて、Dropとのギャップを演出しました。
6. Drop 2:02~2:47
Dropはその楽曲で最も盛り上げるべきパートです。kick、bass、leadを中心に、クラブでノリノリになれるイメージで作ってください。
Makinaの場合、最前面に出てほしい楽器はkickで、次にbass、そしてleadです。楽曲によってはleadの音量が非常に小さくて驚くことさえあります。
Makinaの楽曲を作るのに向いているかを知るには、もしかしたら、kickとbassだけで楽しくなれるかどうかにあるかもしれません。
Dropは32小節が多く、16小節のパターンを2回繰り返す場合と、後半16小節で別のメロディを使う場合(音数を増やしたりスケールの中で高い音を使ったり)などがあります。
『Desert Succulent』の場合は16小節のパターンを2つ作っています。後半のほうが激しいですね。これは前半のメロディを作ってから、それをもとに後半のメロディを作りました。
2:47からは繰り返しです。一般的には「Intro ▶ Bridge ▶ Verse ▶ Buildup ▶ Drop」を2回繰り返します。ボーカル曲でいう1番と2番みたいなイメージです。ダンスミュージックなので踊るために曲の長さが必要なわけです。
1番と2番がまったく同じ楽曲もあれば、パートごとに多少変化をつけたり、最初のDropのあとにCメロ的なまったく違うパートなどを挿入して2回目のDropに繋げていく場合もあります。
7. Ending 5:23~ラスト
EndingはいわゆるOutroで、楽曲を締めるパートです。
ここは楽曲によって本当にさまざまですが、kickとbassでリズムだけ作って、あとはdown sweepでフェードアウトしていく感じがオーソドックスかもしれません。リズムを残すのはDJがミックスするときに次の楽曲に繋げやすいからでしょうか。
おおざっぱにですが、ここまで構成について解説してきました。少しでも参考になれば幸いです。
これからMakina楽曲を作る人のために
Makinaの作り方に関する日本語の情報があまりにも少ないため、今回この記事を作りました。もう1つ、「音作り&楽器編」の記事もありますので、ぜひそちらも読んでMakinaを1曲作ってみてください。
もし何か気になるところ、分からないところ、おかしなところがあったら、ぜひ気軽に教えてください。XのDMでも全然OKです。
一緒にMakinaの高みを目指していきましょう!
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