🚙自動車事故は突然に〜緑内障を添えて
これは2009年頃(だったと思う)、実家に帰省した時に、父親が免許を返上していたことについて、親に話を聞いたときのことを書いたものだ。
とりあえず、実家に帰ったら父の車が無かった。
もっともガレージのシャッターは降りていたので、最初は気づかなかったのだが。
車で帰省していた私に、母が言った。
「明日、買い物に乗せていってくれん?」
買い物自体は吝かでは無いが、帰省した私に母が運転を頼むことは少なかったので、違和感を覚えて尋ねる。
「いいけど。
お父さん、用事あるん?」
母の返事。
「お父さん、免許返上したとよ。
事故起こしてね。」
は?
初耳なんですが。
「は?
また?
今度はそんな酷かったん?」
またがつくのは、うちの父は非常に運転が下手くそだからだ。
そう言われてもピンと来ないと思うので、この写真を見てもらいたい。
これは、うちの実家の車庫の前を撮影加工したものだ。
ゆうに、車二台分の間口の広さがあることがお分かりいただけるだろう。
うちの父はこの広さで、車両を頭から侵入させ、横腹を何度もガリガリと削った運転技術の持ち主だった。
誰か轢き殺してないといいと祈りながら尋ねると。
父が何も気にしていないような明朗さで
「運転していたら、突然横から車が出て来たんだよ。
それでぶつけちゃってね。
絶対に見えなかったって言ったら、警察の人が検査に行きなさいって言うんだよなあ。」
父の言葉はそこで切れた。
父は黙り(彼は都合の悪いことになると沈黙する習性がある)、母が横から
「お父さん、緑内障やったとよ。
それで、免許返上したとよ。」
「は?」
驚く私をよそに、父親は、何一つ悪びれることなく
「僕はちゃんと運転してたんだけどねえ。」と言う。
いやいやいや。
「何言ってんの、それ一番駄目なやつやん。
まあでも、誰か轢き殺す前で良かった。」
むしろ安心する私。
翌日。
その年(2009年)買ったばかりの新車に乗って帰ろうとする私。(当時の写真が小さいのしかない上、切ったらめっちゃ小さい)
珍しく父が玄関まで出て来た。
見送りにでも来たのか?(珍しすぎる)
「いいクルマだねえ。
僕に運転させてくれない?」
違った。
こんの糞爺。
「私は、免許持ってない人間に運転させる車は一台も持ってない。」
そう言い捨てて帰ったわけだが、今思い返すと、あの時一度もガレージを開けてない。
あの時すでにガレージの腐海化は始まっていたんだな。
(終わり)
投げ銭歓迎。頂けたら、心と胃袋の肥やしにします。 具体的には酒肴、本と音楽🎷。 でもおそらく、まずは、心意気をほかの書き手さんにも分けるでしょう。 しかし、投げ銭もいいけれど、読んで気が向いたらスキを押しておいてほしい。