👔黄ばんだシャツは売れますか 12/9
この日は、昼に一度様子を見に実家に行く。
するとちょうど母親は、タクシーの福祉の助成券を使ってかかりつけの心臓内科から帰ってきたところらしく、その話をしていた。
なんでもタクシーの運転手さんから、家に着いた時「ご主人はどうしてますか」と聞かれたとのこと。
どうも父はどこに行くにもタクシーを呼びつけていたらしい。
「主人は亡くなりました」と言うと、「残念です」と言われたと言う。
母は父を懐かしがっていたが、私の感想は、そのタクシー代どこから出たんやであった。
一旦自宅に引き上げる(実家で作業すると母が話しかけてきて中断させられるので)。
そして、実家の父宛郵便物に、外資系の証券会社からの本人の身分確認の書類が来ていたので、それに関して問い合わせ窓口に電話する。
というか、こんなところの証券会社の口座持っとんたんかい、小人閑居して不善をなす。
証券会社の職員は最初の窓口の女性も、電話を代わった担当者の男性も非常におぼつかなかったが、大丈夫か日本の金融資産の大半は老人が所有してるんだろ、こういうの日常茶飯事じゃないの?
とりあえず、父の死亡について伝えた時、担当者にあわあわした様子で「相続ですか?」と聞かれたのが印象的だった。
口座がゼロ円ならそのまま閉じてもらってもいいんだが、なんかあるらしい。
先日見つけた端株っぽいやつの所在はここか?分からんけど。
直後、伯母の家の火災保険の営業さんからも電話がかかってくる。
こちらは父の死亡の連絡をしておいたので、父の死亡日と私の生年月日の確認だった。書類の訂正にいるらしい。
電話の多い日だ。
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さらに、郊外の土地について「売ってますよ」と言っていた不動産屋から掛かってくる。
不審なのは、「売ってます」と言ったのはこの不動産屋なのに、「土地は高梨父さんの名義でした。扱うならうちに。」的なことを言ってきたところだ。
一昨日はっきりち「売ってます、隣の土地の人が持ってます」と言ったのに説明なしに言を翻してくるのは信用ならない、「自分で確認すること」をタスクに加える。
そしてこの日。
夕方実家に行ったら、書斎のテーブルの上に、これ見よがしに、古物買取商の見積書及び買取の同意書、それと領収書が置いてある。
なんだこれ。
母に聞くと、前日ゴミ袋から取り出して紐で括った父の黄ばんだシャツを、電話をかけてきた古物買取商に売ったと言う。
明細には、靴、シャツ、時計等の物品が記載されている。が。
金額が二千円……。
あの、ゴミとしか言いようのない品々が二千円?と思っていたら、一旦部屋を出て行っていた母が自慢げに、
「私の時計も売ったんよ、他に何かありませんかって聞くけんね!
あんたがくれた高いのはちゃんととっといたけん!」
と言って、3本の、いわゆるファッションウォッチを持って再びやってきた(いずれも電池は切れてはいたが、母は婦人用の時計を二十本近く持っていた)。
「え、ちょっと見せて!」
……!
やられた!
電池が切れて動かなくなっていたのは確かだが、うちの母。
私が昇進した時に記念に買ってやったロンジンの時計まで売り払いやがった!
「いやちょっと、これ、ロンジンがないとやけど。」
母は言った。
「ロンジンってなんね!」
……。
あのな。
黄ばんだシャツが二千円で売れるわけないだろ。
それはロンジンの値段だ。
投げ銭歓迎。頂けたら、心と胃袋の肥やしにします。 具体的には酒肴、本と音楽🎷。 でもおそらく、まずは、心意気をほかの書き手さんにも分けるでしょう。 しかし、投げ銭もいいけれど、読んで気が向いたらスキを押しておいてほしい。