短編ストーリー「新年のねがいごと」
「明けましておめでとうございます」
照れながら、駅前の待ち合わせ場所で挨拶する私たち。
クリスマスに初めてデートをした、まだぎこちない私たち。
「手を繋ごうか。」
彼はあったかそうな毛糸の手袋を付けた右手を差し出した。
私は、こくりとうなずいて左手を差し出す。
同じく毛糸の手袋を身に付けた私の左手はどんどんホカホカして、そこだけ体温があがる。
「お正月何食べた?」
彼がいつも通りのテンションで話しかけてくる。
「お雑煮。今年はお母さんと一緒に作ったんだ。」
「へぇ、食べてみたいなぁ。俺、餅4個も食べた。」
他愛もない雑談が嬉しい。
そして、手袋ごしで良かった。直接手を繋いだら、きっと緊張で何も話せない。
しばらく歩くと近所の神社に着いた。
はき清められた境内の道を歩くと、気持ちが晴れやかになる。初詣(はつもうで)に訪れた人でとてもにぎわっていた。
参拝を待つ人の列に並んだ。
行列に並ぶ時間も彼といると、あっという間に過ぎていく。
そして、私たちの順番が回ってきた。
「よぉし、お願いするぞぉ!」
そう言って彼は財布から500円玉を取り出した。
「すごい!奮発するね」
「うん!今日、好きな人と初詣に来ることができたから、願い事をしたら何でも叶うような気がするんだ。だからお賽銭も奮発する!それに、これ新500円玉なんだ。キラキラしていて、なんだか願い事が叶いそうな気がするでしょ。」
「うふふ。願い事、叶うといいね。」
うつむいて真剣に参拝する彼の横顔は
とても清らかで優しい顔だった。
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頬を赤らめながら遠くから手を振る彼女を見ただけで、鼓動が高鳴る。
駅前の待ち合わせ場所には30分前に着いてしまったから、本当に彼女が来るのが待ち遠しかった。
(晴れてるけれど、結構寒い!)
今日の俺のデートミッションは『手を繋ぐこと』。
前回のクリスマスデートでは緊張し過ぎて、手を繋ぐことができなかったから、今日こそは手を繋ぎたい。
「手を…繋ごうか。」
勇気を振り絞って右手を差し出す。
彼女はこくりとうなずいて、左手を差し出した。
その仕草がなんともかわいい。
あ、手袋を外した方が良かった?
でも、楽しそうに高めのトーンで喋る彼女を見ていたら、そんな心配も気にならなくなった。
平常心を装うことに集中しながら、
彼女といろんな話をしているとすぐに神社に着いた。
屋台のりんご飴に誘惑されつつ、
参拝を待つ人の列に並んだ。
りんご飴の話を彼女にしたら、彼女も食べたいと言う。参拝した後、今度は屋台の列に並ぼう。楽しみがまた一つ増えた。
もう一つのデートミッションは、
『初詣で大事なことをお願いする』こと。
俺は財布から500円玉を取り出した。
お釣りでもらった新500円玉。キラキラしていて、なんとなく使わずに大事に財布にしまっていた。
彼女は縁起がいいから、と5円玉を取り出して賽銭箱に納めた。
今まで見たことのない真剣な表情でお参りする彼女の横顔はとてもきれいだった。
俺も心を正して参拝する。
『どうか、彼女といつまでもずっと一緒にいられますように』
(結)
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☆作者メッセージ☆↓
明けましておめでとうございます🗻☀🎍
昨年はたくさんの方にナシノーのnoteを見ていただけました!
本当にありがとうございます😆
今年もどうぞよろしくお願いいたします🙇
さて、2024年第一作目は『新年のねがいごと』という作品を掲載しました。
お正月にキュンとしたい方にオススメしたい作品です。
私はチャットモンチーというバンドの「謹賀新年」という曲が大好きで、いつもお正月になると思い出すのですが、
そんなチャットモンチーの名曲からもインスパイアされて作り上げました。
☆チャットモンチー「謹賀新年」
皆様にとって幸せいっぱいの一年となりますように。
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