自信を失うことは自身を失うことでもある
少しずつ、認められているような感じがあった。
転職をしてから、ずいぶんと調子がよい。やはり、人間関係、というものは居心地や働きやすさ、という意味でだいぶを占めている。
本当に、よい職場に恵まれていると思う。
これまでの経験も十分に活かされており、頼りにされている部分も出てきていると思う。実際に、仕事を任されることも多くなってきた。
人同士の関わりが重要なこの仕事においては、連携や信頼は必要不可欠なものである。
違和感を覚えたのは、秋、冬に入る時期になってからだ。
何年前からか忘れてしまったが、この時期には体に赤く、ぽつぽつとした、湿疹が見られるようになった。特に胸のあたりは目立って見えて、年々ひどくなっているのは自覚しているが、これまでは皮膚科で処方されているクリームを使って春までにはよくなる、というサイクルができていた。
今年は殊更にひどく、いつもは見えない場所だけであったが、首筋や顔のあたりにまで広がってしまった。
そうして、数日後にはみるみるうちに体全体に広がった。まるで皮膚から噴火した溶岩があちらこちらへ広がっては、固まったり、蕩け出しては広がったりを繰り返し、それこそこれまでと同じ場所でありながら地形がまったく変わってしまってかのようになってしまった。
それからの、同僚の反応は微妙であった。
同じこと、同じ対応、同じ声かけ、同じ人間が行っている、と思えないような、妙なよそよそしさや距離感が見られていた。
それはまるで、私が私でなくなってしまったかのような、感覚。
私はもしかしたら、違う誰かになってしまったのだろうか?
私の記憶、感覚、知識、意識、それは何も変わっていない。しかし、外見の印象が誰に聞いたとしても、私であると判別できる証拠が何一つとしてない!
私はきっと、カフカの『変身』のように、私ではなくなってしまったのかもしれない。
しかし、それとは違って、同じ人間であることに変わらないというのに。私は何が変わってしまったのだろう。
仕事への貢献も性格も違うことは何もないのに。
そうしているうちに私は私を認識できずにおり、これまでの経験も、これまでできていたこともうまくできず、自信を失ってしまった。
そうして、私は、本当に私でなくなってしまったことを、自身で認識してしまったのだ。