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千文小説 その1197:安定

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 今代のMacBook、13インチのProと、僕は、生涯、添い遂げる。

 OSの期限が切れ、あちこちガタが出て、最終的に、電源が入らなくなっても、手放さない。

 しかし、それは、他のMacBookを買わない、ということを意味しない。

 頃合いを見て、新調しようとは思っている。

 今代の後継機としてではなく、まるで別物として。

 おかしくない?

 君だけが好きだよ、と奥さんに言いながら、よそに愛人がいる、みたいなものでしょう?

 人として、どうなの?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 だからこそ、まるで別物、なのです。

 多分、次代は、14インチのProになる。

 それ以外の選択肢を、どうしても、措定できなかった。

 そして、14インチのProは、継続反復が可能。

 実際に、買うか買わないかは別として、シリーズとしては、確定して、僕のMacBook。

 ということは、もはや、個体への愛は、薄い。

 発売年代が異なるだけで、あるいは、インチや容量等、細かいスペックが変更になるだけで、どれを買っても、結局は、一緒。

 対して、13インチのProは、二度と反復できない。

 この機体を手放してしまえば、それで、終わり。

 次代が14インチのPro、というのも、ひとえに、この機体あっての仮定であり、単独で、宙に浮いている蜃気楼ではない。

 僕にとってのMacBookの元祖であり、代替不能な真の意味での愛機として、13インチのProよ、最後まで、ともに書きましょう。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 炬燵の中、爆睡の愛猫に、布団の裾で、換気の風を送りつつ。

 天板の上、静かに鎮座する、薄灰色のノートパソコンを見やります。

 MacBook Pro、最小インチ、最小容量、黒色系。

 それが、僕の愛機の基本型。

 価格も含めて、数字は、変動する。

 いかに惑わされず、踏襲し続けられるかが、物書きとしての、僕の課題。

 同時に、二台、同じものは置けない。

 MacBookは、そのつど、一台きり。

 この機体が、あらゆる意味で、限界を迎えるまで、次代は、買わない。

 というか、次代など、ない。

 MacBookは、常に、MacBook。

 同じものが、繰り返し、新品になって、帰って来るだけ。

 …そうか。

 ここが、iPadとMacBookの違いなんだな。

 僕にとって、iPadは、無印の第五世代、ゴールド、32GB。

 無印シリーズが、キーワードなのかと思って、同じホームボタン搭載の第九世代を、色違い容量違いで、二台、買ってみたけれど。

 いずれも、続かなかった。

 MacBookに倣うことは、どうしても、できない。

 iPadに対する僕の愛は、個体で止まってしまい、その先の、シリーズとか、形態とか、類似品に共通点を見出す力を持てなかった。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 iPhoneは、Proシリーズを、継続購入する。

 これと、MacBook Proの反復とは、同じものなのか?

 …違うな。

 iPhoneは、デバイスへの愛と、個体への愛が、両立している。

 ProはProでも、同一物の反復ではない。

 君も、変わったね。

 僕も、歳を取ったね。

 時間の経過を確認し、しみじみと、想いを馳せるための継続であり、MacBookの、時が止まったような、時間など存在しないかのような、永遠の形態模写には、なりようがない。

 だからこそ、IntelのMacBook Airは、リセットされ、iPhone7は、今も元気に、通電中。

 じゃあ、iPhone12 miniは、なんだったの?

 iPhoneなら、なんでも大好き、ではないの?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 愛には、憎しみが伴います。

 裏と表なので、こればかりは、切り離せない。

 その意味で、僕は、MacBookを愛していない。

 愛していなければ、憎みようもない。

 なので、比較的、すんなりと、先代のAirを、クローゼットに安置することができた。

 iPhoneは、そうはいかない。

 愛が深いほど、どうしても、許せない点も出てくる。

 iPhone12 miniとのトラブルは、まさに、その象徴として、起こるべくして、起こった。

 個体への愛とデバイスへの愛、どちらを優先させるか、となった時、僕は、デバイスへの愛を、取らざるを得なかった。

 ミニサイズは、とても好きだけれど、iPhone12 miniは、僕にとって、iPhoneではなかった。

 この痛みは、MacBookには、抱けない。

 抱けないまま、生涯、添っていく。

 愛していない方のデバイスが、真の愛機だなんて、矛盾してるね。

 ねじれた安定をエンジンに、これからも、書いて、生きます。それでは、また。

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