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千文小説 その1107:脱兎

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 13インチ、256GB。

 もしかして、この二点が、炬燵の上の電子機器集団、カメラレオンにおける、ノートパソコンの条件なのか?

 だからこそ、現在の、手持ちの二台が、どちらも、現役に感じられて、どちらかをリセットすることは、考えられないのか?

 にーぬふ。

 みーぬふ。

 とてとてとてとて。ちりんちりん。

 なわばりの見回りにいそしむ愛猫の、大きなおしりに揺れる、短いしっぽを、目で追いつつ。

 並んで起動している、ゴールドとスペースグレイ、そっくりなMacBookを前に、呻吟します。

 IntelのAirと、13インチのPro。

 キーボードの言語とバッテリーの持続時間だけは、明確に異なるが、それ以外は、同じ。

 このまま、次代も、反復継続でいいのか?

 あるいは、14インチ、512GBに、飛ぶのか?

 価格的には、前者であると、ありがたい。

 だが、同一形態を、三台も、要るか。

 完全に同一なら、まだしも、微妙に違う、類似品が三台というのは、かえって、ごちゃごちゃする。

 さしあたり、目の前の二台は、リセットしません。

 二卵性双生児ということで、大事に、面倒を見る。

 だが、今後も、果てしなく、13インチの256GBを導入し続けるのは、なんとなく、違和感。

 機体をリセット、ではなく、未来予想図をリセットする必要がある。

 まーぬふ。

 かーぬふ。

 とてとてとてとて。ちりんちりん。

 いったん、MacBookの新規購入は、打ち切る。

 現時点で、最新OSを搭載している、13インチのProが、文字通り、使えなくなって初めて、次代を検討する。

 今、この段階で、将来を決めるのは、無理。

 さんざん悩んで、結論は、それでした。

 iPod、iPadは、一台ずつ。

 iPhoneは、初代に加えて、Proシリーズの256GBを、スタンダードサイズで、買い継ぐ。

 iOS搭載機器に関しては、やはり、何度考え直しても、同じところに落ち着くので、おそらく、もう、これ以上の考察は、不要。

 困ったな…。

 MacBook問題が、四次元にわたるとは、思いもよらなかった。 

 できれば、現在のうちに、大筋だけでも、つかんでおきたいのだけれど。

 いーぬふ。

 りーぬふ。

 とてとてとてとて。ちりんちりん。

 初代のAirは、大手電器店の通販サイトで、取り寄せました。

 当時現役だった、iPhone7と、無印の第五世代のiPadが、ともに、ゴールド。

 当然、MacBookも、ゴールドさ。

 色だけ、譲らず、後は、見ず。

 Intelの、しかも、アメリカンキーボードを発注してしまった、とわかったのは、使用開始後、数年経った時でした。

 肝心のゴールドも、ちっともゴールドではなく、むしろ、ピンク。

 電池保ちが良くなかったこともあり、三年経たずに、はい、リセット。

 代わりに来たのが、今代のProで、今度こそ、ロングライフのバッテリーを。

 それだけ願って、やはり、後は、見ず。

 Touch Barという、無駄にチラつく、ミニ液晶に苦しめられて、三年経たずに、次代の検討に入った次第です。

 …あんまり、うまくいってないよね。

 13インチの256GBは、ちっとも、要点ではなさそう。

 たまたま、買いやすい価格帯のものを選んだら、結果的に、そうなった、というだけ。

 今後の選択基準に、そのまま適用していいとは、言いづらい。

 むふーん。

 ぽてっ。

 ほわま、ほわま。

 はいはい、ただ今。

 歩き疲れて、座り込み、抱っこをせがむ愛猫の声に、立ち上がり。

 ぽさぽさの、青緑色の毛皮を腕に、床を歩きます。

 何を主眼に選べばいいのか、わからない。

 それこそ、MacBook問題の核心。

 いったい、君は、何を求めて、MacBookを買うんだい?

 サイズ、容量、バッテリー、色、シリーズ、キーボード。

 君の仕事や生活に、ぴったりのモデルは、どの辺り?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 爆速で寝落ちした愛猫を連れて、ゆっくりと、炬燵へ戻り、大きなおしりを、ひよこの毛布でくるんで、膝にお乗せし。

 もう一度、二台のMacBookを、見つめます。

 ProかAirか、なら、Pro。

 色付きかベーシックカラーか、なら、ベーシック。

 日本語か英語か、なら、日本語。

 インチや容量やバッテリーは、どれでも。

 じゃあ、もう、MacBook Proの、最小モデルしかなくない?

 どうして、こんなに、気持ちが暗いの?

 高いから。

 …ですよね。

 そうそう、うまい話はない。

 撤退です。

 お金の姿が見えたら、脱兎で、逃げるべし。

 ロマンス詐欺や、偽の投資プランに引っかかるおじさんに、なりたくない。

 もう一度、何度でも、初めから、考え直します。それでは、また。

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