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千文小説 その1192:はずれて

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 MacBook問題の原因は、MacBookにはない。

 新たに浮上した仮定の真偽を確かめるべく、炬燵の上、全五台の愛機を集めて、精査に入ります。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 まずは、外観から。

 …MacBookだけ、暗い感じがするな。

 他のiOS搭載デバイスたちは、リングとか、ケースとか、ステッカーとか、おしゃれに飾って、色とりどり。

 MacBookは、むき出しで、灰色で、いかにも、メタリック。

 そこかな…。

 MacBookだけ見ると、気づかないが、全員集合すると、なんだか、浮く。

 使い勝手としても、その他機器たちは、ぱっと開いて、さっと使える。

 MacBookは、起動にワンクッションあり、さあ、やるか。

 気合いを入れないと、すぐには、手が出ない。

 要するに、なんとなく、遠い。

 他人行儀というか、構えてしまうところがあり、使用開始後、そろそろ、三年になるも、未だに、緊張感が続く。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 もちろん、全て、MacBookのせいではない。

 単独で存在している限り、バッテリー保ちも抜群、キーボードの打ち心地も申し分なく、実に、名機。

 …組み合わせると、途端に、半減するんだよな。

 かろうじて、ディープパープルのiPhone14 Proとは、色が合うが、使用頻度的に、釣り合っているか、と訊かれたら。

 いまいちだな…。

 iPhoneは、執筆以外にも、あれこれと、出番があって、確実に、なくてはならない、と断定できるけれど。

 MacBookは、マジで、書くだけ。

 午前中に、noteの記事を仕上げて、はい、終わり。

 オンライン会議が入ったり、USBメモリ作業が行われたり、愛猫の推し歌手すりすりタイムに活躍したり、僕の用事以外のことになると、急に、出番が増える。

 …これは、もう、そういうことなのでは?

 MacBookは、僕のものというよりは、他者とのハブ。

 個人的な好みで選ぼうとして、必ずつまずくのは、そのため。

 次代のMacBookの選定に、僕の思惑を入れてはいけない。

 仕事用、と割り切って、あえて、他のデバイスたちとは一線を画して。

 なんか、浮くな。

 見るたびに、そう感じるくらい、自分とはかけ離れたタイプを、謹んで、お迎えするべきなのでは?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 炬燵の中、爆睡の愛猫に、布団の裾で、換気の風を送りつつ。

 天井を仰いで、ため息をつきます。

 その観点からすると、今代のMacBookは、まことに、適合。

 iOS搭載機器たちとは、なんとなく違う雰囲気があり、Touch Bar等、僕には、なじみづらい機能も備えている。

 スペースグレイというボディーカラーも、厳密に言えば、僕の持ち味と、微妙に重ならず。

 なんで、この機体を、買ったの?

 自分でも、首を傾げるくらい、あちこち、ずれている。

 が、ここが重要なのだが、そのずれこそ、僕とMacBookを、長続きさせている秘訣でもある。

 先代のAirは、Intel搭載、ピンクに近いゴールド、アメリカンキーボード。

 とんちんかんにでこぼこな感じが、僕の持つ、どこかすっとんきょうな一面と、ぴったり符合して。

 三年近く、楽しく、筆頭愛機を務めて、OSの期限切れとともに、引退した。

 本来は、先代のAirの後継機を用意して、いつまでも、面白おかしく、書き続けていくはずだったのに。

 そうしてはいけない。

 お前の文章には、他者が必要だ。

 言葉の仰せに従って、僕は、なぜだか、今代の、13インチのProを、自らの意志で、購入した。

 ただでさえ高価なMacBookの、よりにもよって、Proシリーズを、しかし、背伸びをするでもなく、すんなり買うことができたのは、今でも、不思議で仕方ない。

 現に、その後、MacBook Proは値上がりし、優に、当時の倍額。

 もはや、よほどの覚悟がなくては、一括払いは、難しい。

 それでも、買いますか?

 それとも、この機体と、ぎりぎりまで、書いていく?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 …少なくとも、13インチのAirは、もう買わない。

 どうしても、Airがいいなら、15インチを。

 16インチのProを買うのは、狂気の沙汰を超えて、自殺行為。

 Proなら、14インチ、最小構成単位一択で。

 自分ど真ん中から、ずらす、外す。

 しかし、ぶっ飛び過ぎて、この世から、離れないように。

 それが、MacBookのテーマ。

 …今代よ、ありがとう。

 君は、今の僕に、ちょうどいい、ずれ具合。

 ずれたまま、はみ出したまま、毎日、書きましょう。

 実に苦痛ではあるが、そうでもしないと、引きこもりの僕は、他者との接点を、なくしてしまう。

 いつでも、開かれた文章を、生みたいです。それでは、また。

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