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千文小説 その1186:愛愁
こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。
あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
ぴーぷす、ぴーぷす。
ぽわ。ぽわ。
愛猫ミント、推定年齢五歳、どっちりむっちり体型のオス、ただ今、炬燵で、爆睡中。
愛深海生物カイ、年齢性別不詳、多分リュウグウノツカイ、ただ今、砂底で、呼吸中。
穏やかな年明けを迎えられましたことを、感謝いたします。
どうぞ、みなさまに、たくさんの幸せが訪れますように。
ぴーぷす、ぴーぷす。
ぽわ。ぽわ。
炬燵の上には、昨年末まで、電子機器集団、カメラレオンが並んでいた。
年明け現在、機器とその配置は、変わらない。
しかし、カメラレオン、というくくりが、もはや、存在しなくなってしまった。
愛機は、MacBook Pro。
補佐として、iPhoneのProシリーズ。
先代たちとして、その他三台。
きちんと決まったため、全体として、チームを組む必要がなくなった。
…年明け早々、失われたものの話というのも、あまりふさわしくないけれど。
とにかく、確かに、何かが、抜け落ちた。
代わりに、個々のデバイスが、くっきりと、輪郭を現してきた。
切ないけれど、これが、世の理。
時間をかけて、受け入れるしかない。
ぴーぷす、ぴーぷす。
ぽわ。ぽわ。
…なんか、後が、続かなくなっちゃうんだよな。
MacBook Proをメインに据えることの欠点は、話が、そこで終わってしまうこと。
ノートパソコン、ついに、決まったんだね。
良かった、良かった。
おしまい。
というわけにはいかないのが、物書きの性。
必ずや、次に繫がるフックのようなものを、文章の端々に、残しておかなくてはならない。
MacBook Proと、書いていく。
決めたこと自体は、よく頑張ったけれど。
じゃあ、これから、どうする?
無印の第五世代のiPadも、第六世代のiPod touchも、iPhone7も。
最愛の、iPhone14 Proも、みんな、脇役?
人生、書くために、あるの?
…ある意味では、そうなのですが、でも。
そう言い切ってしまうには、僕には、才能がない。
ぴーぷす、ぴーぷす。
ぽわ。ぽわ。
言い訳じゃない?
努力しないことの口実として、才能がない、という文言を使うのは、常套句中の常套句。
紋切り型の発想をしているからこそ、ろくな作品が書けないんだよ。
その通り。
MacBook Proだけで書いていくには才能がない、そう思ってしまう、そのあり方こそ、凡庸の証拠。
そのあり方こそ凡庸の証拠、と断言できることこそ、物書きであることの露呈。
自分は凡庸である。
自分は物書きである。
この二文は、物書きにとって、完全に、別物。
凡庸だろうがなんだろうが、物書きは、物書き。
才能がないからと言って、書くことはやめない。
そのうえで、では、才能とは?
磨けば光るのか、それとも、一生そのままか。
MacBook Proで書くには、僕は、才能がない。
この文章を、推敲できるか否かによって、その答えは、変わってくる。
ぴーぷす、ぴーぷす。
ぽわ。ぽわ。
MacBook Proで執筆する限り、僕は、才能がないという劣等感に、終生、さいなまれ続ける。
敷衍すれば、そういうことで、それは、事実か?
…残念ながら、事実らしい。
機械の優秀さについていけない違和感が、手を鈍らせ、文章を滞らせているのは、明白。
でも、じゃあ、Airにすれば?
ほっとして、すらすら書けて、うんと楽になるのでは?
…楽になりたくて、書いているわけではない。
書けば書くほどつらくなる、というのは、悲しいことに、真実。
だが、書き手が苦労すればするほど、文章がどんどん透徹してくるのも、また、真実。
必要なだけの苦労は、しなくてはならない。
Proがつらいからと言って、Airに逃げるわけにはいかない。
それなら、MacBookではなく、iPhoneにしたら?
己とのガチンコタイマン勝負より、もう少し、ソフトになるよ?
ぴーぷす、ぴーぷす。
ぽわ。ぽわ。
繰り返しますが、楽になりたくて、書いているのではない。
僕は、物書き。
書くに決まっているから、書いている。
ただ、…それを言っちゃあ、おしまいよ。
文章には、ニュアンスというものがある。
正真正銘、文字通り字義通りの発言をし続けていたら、やがて、周りから、人がいなくなる。
MacBook Proと書いていく、という単直な宣言に、どうにかして、含みを持たせないと、いずれ、僕の書く物は、どなたにも、読んでいただけなくなる。
…iPhone14 Pro以下、四台のみなさん。
今年は、あなた方に、頑張っていただきたい。
杓子定規なMacBook Proに、愛と憂愁の彩りを。
今後とも、精進してまいります。それでは、また。