見出し画像

千文小説 その1180:区別

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 iPhoneとMacBook、どちらを取るか。

 …ここが、逆だったんだな。

 iPhoneが、好きなのだけれど、iPhoneを、取ってはならない。

 物を書くには、己の好みを、全面に、押し出してはいけません。

 もちろん、好みは、好みなので、それは、尊重すべき。

 しかし、好みだけで書こうとすると、なんとなく、小さく、つまらなくなる。

 好みを超えて、もっと大きな、必然性のようなもので、書けるようになりたい。

 にちにちにちにち。にちにちにちにち。

 その人によって、必然性の形は違います。

 そんなに好きじゃないんだけど、なぜか、寄って来ちゃうんだよな。

 そういう物や人があれば/いれば、それが、あなたの必然。

 僕の場合、わかりやすい例で言うと、King Gnu。

 表面的に、僕と彼らは、似ていない。

 また、彼らの音楽も、僕の趣味嗜好どんぴしゃでもない。

 なのに、彼らと彼らの音楽は、完全に、僕の人生。

 空気がなかったら生きられないレベルの、あまりにも、あって当たり前で、ものすごく重要なもの。

 手持ちのCDやBlu-ray、ダウンロード音源等、全て処分したとしても、多分、いつの間にか、また溜まっていくだろう。

 にちにちにちにち。にちにちにちにち。

 求めているわけではない、というのが、ミソ。

 要するに、欲が入っていない。

 もしくは、極端に、少ない。

 嫌いなわけではないが、熱烈マニアにはなれない、それくらいの温度が、ちょうどいい。

 というのを、頭で計算したか?

 自分で温度管理をして、適温を導き出したのか?

 訊かれたら、ノー。

 なんにも、していない。

 必然としか言い得ない形で、彼らは、僕のもとへ、やって来た。

 MacBookは、やや異なる。

 King Gnuほど、完璧に透明ではない。

 かなり、欲が混じりつつ、それでも、…まあ、そうなるよね。

 Windowsでは、代理できない。

 iPadでもなく、iMacでもなく、MacBook。

 そこは、決まっている。

 では、MacBookなら、どれでもいいのか?

 AirでもProでも、13・14・15・16インチでも、256GBでも512GBでもそれ以上でも、なんでも、構わないか?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 おやつのするめをかじり終え、満腹で、寝落ちした愛猫を、ひよこの毛布でくるんで、抱き直し。

 食べ残しのイカを口に、天井を仰ぎます。

 MacBookでなくては駄目だ。

 というのと、

 このMacBookでなくては駄目だ。

 というのは、

 根本的に、意味が違う。

 僕は、女の人が好きだ。

 僕は、女の人であるあなたが好きだ。

 さて、どちらが、あなた、に対して、愛があるか?

 後者のようですが、実は、前者なんですね。

 後者の場合、あなたが好きだ、とは言っているけれど、それは、あなたが女の人だから好きだ、ということになる。

 個体への愛ではなく、個体はどうでもいいから、女が欲しい。

 みたいなことになり、まことに、無礼。

 前者の場合、女の人なら、みんな、好きだよ。

 でも、その中でも、あなたは、特別だね。

 となって、なんとなく、胸がじんとする。

 このMacBook、に執着するということは、要するに、概念としてのMacBookにしがみついているということで、このMacBook、はもちろん、MacBook全体に対して、愛がない。

 …どちらかというと、今の僕の、MacBookへの態度は、後者。

 今代の、13インチのProに固執していて、どのMacBookでもいいよ、という境地には、とうてい、至っていない。

 それでも、MacBookは、僕を離れない。

 愛を学べ。

 底を抜いて、偉大な必然をつかめ。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 ちなみに、iPhoneに対しては、僕は、愛を知っている。

 どのiPhoneでもいいよ。

 でも、やっぱり、君が好きだよ。

 SIMカード入りの今代、14 Proに対して、目を細めて、胸を張って、そう言えるし、初代にして先代、7のことも、うんと大事にできる。

 iPodは、はなから一台きりだし、iPadは、どうしても、初代にして今代の、無印の第五世代しか、好きになれなかった。

 MacBookは?

 …このところ、いつでも、一つの文章が、脳内を回転している。

 好きでもないのに、好きなふりをするな。

 初めは、なんのことだか、さっぱりわからなかった。

 どうして?

 このMacBookを、僕は、とても好きなのに。

 でも、そうではなかった。

 僕は、iPhoneが好きだ。

 MacBookは、それほどでも。

 その辺りを、きっちりと、区別すること。

 そのうえで、どうしたらいいのか、改めて、考えるのです。それでは、また。

いいなと思ったら応援しよう!