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千文小説 その1169:フェーズ

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 大きくて、黒い画面が、ど正面に、長時間、立っている。

 MacBookとの、物理的な軋轢は、まさに、そこから、生じていた。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 猫は、いたずら以外には、自分からは、真正面には来ない。

 なので、かなり、重量級ではあるが、さほどの圧迫感なく、一緒に暮らせる。

 また、iPhoneやiPodは、小さい。

 手に持って、さりげなく、正面を外しているので、こちらも、無理なく作業ができる。

 iPadが、微妙なところで、今代の、無印の第五世代。

 10インチ未満であれば、スタンド使用で、目の前にあっても、大丈夫。

 だが、この間手放した、無印の第九世代。

 11インチに近くなると、もう、つらい。

 したがって、もし、今後、iPadを再購入するなら、選択肢は、ただ一つ。

 8.3インチの、iPad mini、色付き。

 小さくてカラフル、であれば、難なく対応できる。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 今代の、13インチのMacBook Proは、スペースグレイ。

 真っ黒ではないものの、光の加減によっては、濃く感じられて、ますます、存在感が増大。

 しかも、ノートパソコンは、完全に正面に置かないと、打鍵に支障が出る。

 対峙する、という状況が、苦手なんだよな…。

 精神的に、プラス、身体的に、もぞもぞする。

 会社員時代、食事の際、必ず正面に座ってくる、大柄なカメラマンがいらして。

 苦しくて、仕方なく、できれば、カウンターで、横並びで。

 言い出したかったのだけれど、そういう方に限って、なぜか、テーブル席の店がお好きで。

 ペアが解消されるまで、針の筵で、味のしない食事をして、胃腸を害しました。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 同じ大柄でも、仲の良かったカメラマン、伊勢さんは、とにかく、会話が上手。

 気を遣われているな、という気にさせない間合いが天才的で、黙ったり、しゃべったり、スマホを見たり、席を立ったり。

 うまく外してくださったので、口下手な僕としては、とても居やすかった。

 画面が大きいから駄目、というわけではない。

 MacBookは、機械なので、もちろん、人間の言語は使用しない。

 しかし、同じ機械でも、iPhoneやiPadやiPodが平気で、MacBookがしんどいのは、なぜか。

 書いてばかりだから、じゃない?

 …その通り。

 MacBookで、僕は、執筆しかしていない。

 かろうじて、電子書籍は読んでいるが、それって、なんと言うか、書いているのと、一緒。

 こちらからの働きかけばかりで、向こうから、親しくしようとはしてくれない。

 まあ、当たり前と言えば、当たり前なのですが、なんとも、もやもやする。

 iPhoneたちからは、働きかけはあるの?

 …ありますね。

 頭がおかしいと思われるかもしれないが、炬燵の上の電子機器集団、カメラレオン、全五台のうち、四台までは、人間同士で言うところの、会話、すなわち、言語による意思疎通が、成り立っている感じがする。

 MacBookだけが、妙に、通じない。

 それは、今代に、限ったこと?

 先代のAirの時は、どうだったの?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 温かい炬燵の中、爆睡を続ける愛猫に、布団の裾をはたいて、換気の風を送りつつ。

 天井を仰いで、ため息をつきます。

 どうだったかな…。

 通じていたような気がするのだけれど、気のせいかも。

 あるいは、僕が、一方的に、色眼鏡を掛けて、作業させていただけかも。

 今思えば、あの機体は、本来、がっつり執筆するには、向いていなかった。

 学生さんの持ち運び用、学業が終わる頃にOSの期限が切れる、間繫ぎタイプ。

 それを、気合いを入れて、振り回して、すっかり、へたばらせてしまって。

 …申し訳ございませんでした。

 初めから、Proを買えば良かった。

 資金と手間をケチったばかりに、双方にとって、よろしくない結果を招いた。

 先代は、初代だったから、ということで、一度きり、大目に見ていただくとして。

 今後、同じ轍を踏むことは、許されない。

 次代は、MacBook Pro、スペースブラック、最小構成単位、で確定として。

 今代は?

 なんともちぐはぐになってばかりの、この機体と、さあ、いつまで、ペアでいるつもり?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 先代のAirは、会社員時代に戻りたいという、錯誤的願望をあきらめた時に、別れが来た。

 今代のProは、未だ、しがみつきの原因が、明らかにされていない。

 僕とこの機体が、出会った理由であるところのものが、経年によってか、気づきによってか、うまく解消されたなら。

 時代は、新しいフェーズに入るだろう。

 それまでは、できるだけ、和やかに、ともに過ごしたいです。それでは、また。

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