![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/163274914/rectangle_large_type_2_104d755bbb0495dc9dce45bd5b7e8791.jpeg?width=1200)
千文小説 その1157:土竜
こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。
今代のMacBookに関しては、だいぶ、諸々、クリアになった。
しかし、やはり、次代が、決まらない。
Proシリーズを買い継ごうと思うと、資金の面で、苦しい。
Airシリーズに乗り替えようと思うと、色の点で、もめる。
…これは、根本的に、何かが、間違っている。
そもそも、まだ、次代を検討する時期ではない、というのもあり、いまひとつ、ぴたっと来ない。
のだが、なぜか、このところ、今代ではなく、次代のMacBookのことばかりが、頭を離れなくて。
なんで?
今代の、13インチのProに、何か、問題でも?
にちにちにちにち。にちにちにちにち。
あるんだろうな…。
そうでなければ、これほどまで、真剣に、買い替えについて、悩まない。
新しいMacBookが欲しいな。
でも、今代が、まだまだ元気だし。
お金も、あんまりないし。
せめて、 OSの期限切れまで、待たない?
…うーん。
ぼんやりと、夢見ては、打ち消して、それでも、あきらめ切れなくて、ぐるぐると、引きずって。
さらにぼんやりと、問題の外側に出てみると、さほど、大したことではない。
微細な違和感に目をつむり、ごまかしごまかし、使い続けても、そうひどいことにはならない。
しかし、きりっと神経を研ぎ澄ませて、渦中へと、深くもぐっていくと。
危ない。
このままだと、いずれ、書けなくなる。
ぼんやりしたもやに覆われて、退屈に呑み込まれ、言葉を聞き取る耳が鈍る。
どうにかして、薄い膜を、抜けないと。
どうやって?
にちにちにちにち。にちにちにちにち。
どうにもならない。
これは、もはや、MacBookの問題ではないから。
機体を交換する等の、物理的な解決では、ほぐれない。
書くことの、根幹を、問い直せ。
お前は、なぜ、書いている?
…わからない。
物心つく前から、書いていた気がする。
どうやって、字を覚えたのか。
どうやって、文章を習ったのか。
全く、記憶にない。
鉛筆、シャープペンシル、ボールペン、万年筆、クレヨンに至るまで、ありとあらゆる筆記用具を試して。
ワープロ、Windowsのデスクトップとノートパソコン、MacBookに、たどり着いて。
小説、詩、俳句、短歌、エッセイ、論文、作文、戯曲以外のオールジャンルに、手を出して。
書いて、書いて、書いて、四十歳を超えて。
その原動力は何か、と訊かれても。
さあ…。
なんなのか、わからないねえ。
トラウマもないし、才能もない。
なんで、書いてるのかね。
自分では選べない、大きな力によって、ここに運ばれてきた、としか言えない。
ぴーぷす、ぴーぷす。
ぽわ。ぽわ。
おやつのするめをかじり終え、満腹で、寝落ちした愛猫を、ひよこの毛布でくるんで。
食べ残しのイカを口に、天井を仰ぎます。
これをしよう、という強い意志を持って、物事を遂行していく人を、昔から、いいな、と思っていました。
実業家タイプというか、プレゼンテーションの達人というか。
独自の判断で、唯一の道を切り開き、後の人々にも役立つ発明なり発見なりを成し遂げる、偉大な人。
…どうも、違うのではないか。
僕は、風に舞う、一枚の落ち葉なのでは。
ぴらん、と地面に落っこちて、踏まれたり、さらに飛ばされたり。
植物にとって、不要になった葉なので、厳密には、生きてはおらず、いずれは、朽ち果てる定め。
なのだが、なぜか、いつまでも、その辺にいて、誰か片付けてくれないかな、とうっすら邪魔にされる、薄汚い小山を形成する。
雨に濡れた落ち葉ほど、厄介なものはありません。
側溝を詰まらせ、景観を害し、それでも、手が付けられなくて、放置プレイ。
価値的には、僕と落ち葉は、完全に等価で、どうしようもないところも、そっくり。
ぴーぷす、ぴーぷす。
ぽわ。ぽわ。
落ち葉は、物を書くのか?
書くかもしれない。
書いていないとは、誰にも言えない。
その程度の、ちっぽけな文章を作るための道具を、己の一存で決められると思うなど、愚の骨頂。
僕には、13インチのMacBook Proが、与えられた。
選んだのではない。
気づいたら、目の前にあった。
Touch Barを始め、一癖も二癖もあって、扱いには苦心するけれど、押しも押されもせぬ、ノートパソコンの最高峰。
ただの落ち葉には、まことに、もったいない。
使うか使わないか、そんな我がまま、言える身分ではない。
これしかないのだ。
良くも悪くも、僕には、これしか書けない、これでしか書けない。
評判が芳しくなかろうと、ちっとも儲からなかろうと、後には退けない、ただただ、前進。
もぐらのように、土を搔き分け、しゃにむに、貫通を目指します。それでは、また。