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千文小説 その1171:臍の緒

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 未来は可変だし、選択肢も複数あることは、知っている。

 それでも。

 …やっぱり、iPad Proを買うことは、ないな。

 Proシリーズは、iPhoneとMacBookで、充分過ぎるほど。

 iPadは、もし、どうしても必要、となったら、miniシリーズにする。

 残念ながら、iPhone miniとは、うまくいかなかったが、僕は、基本的に、ミニサイズが好き。

 今度こそ、小さなタブレットと、楽しく過ごせる未来を、この手に。

 ささやかな希望を、いかつい性能で、握りつぶしたくはない。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 同様に、何度考えても、実際に、使ってみても。

 僕には、Airシリーズは、いまひとつ、しっくり来ない。

 人生にせよ、執筆にせよ、人間関係にせよ。

 物事は、長く取り組むうちに、必ずや、一度は、凄まじい苦しみを、味わうようにできている。

 Airは、初めから、それを上手に取り除いてある感じがして、どうにも、人工的で、落ち着かない。

 我に七難八苦を与えよ、とまではいかないが、やはり、苦しむべきところでは、苦しんでおかないと、死ぬ時/書き終える時/別れる時、いっぺんに、大量の清算を迫られることになる。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 炬燵の上の電子機器集団、カメラレオンの現メンバーは、五台。

 iPhone14 Pro。

 13インチのMacBook Pro。

 iPhone7。

 無印の第五世代のiPad。

 第六世代のiPod touch。

 前者二台は、OSが現役で、後者三台は、アップグレードが終了している。

 ありがたいことに、全台、バッテリーの状態は、良好。

 よほどのむちゃをしなければ、このまま、静かに、自然な劣化を迎えられる。

 iPodの増台は、ない。

 iPad Pro、Air、無印の追加も、ない。

 iPhoneの二眼も、ない。

 MacBook Airも、ない。

 逆算して、あり得るのは、何か。

 iPhoneの三眼/一眼。

 MacBook Pro。

 iPad mini。

 …なるほど。

 現メンバーに、iPhone SEと、iPad miniが加われば、完璧な布陣。

 裏を返せば、それ以外は、買ってはいけない、ということ。

 いや、買うのは、自由だが、いずれ、道半ばで、手放すことになるので、双方にとって、損失しかない、ということ。

 そうなのか…。

 流れ流れて、そのように、決まってしまったんだな。

 意志が、半分、状況が、半分。

 カメラレオンの内訳は、もはや、気まぐれに、いじることはできない。

 では、この先は?

 しばらくは、現メンバーで、執筆と生活の全てを担えるが。

 どうやって、組み合わせていく?

 次代の購入の目安は、どこに?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 昼ご飯を食べ終えて、膝の上、満腹で、寝落ちした愛猫を、ひよこの毛布でくるみ直し。

 姿勢を正して、正面の壁、ドーベルマンの肖像を見やります。

 今ここにない、iPhone SEと、iPad miniは、あくまでも、非常要員。

 どうしてもの場合のみ、ピンチヒッターとして、一代限定で、導入される。

 どこまでも、メインは、iPhone Proと、MacBook Pro。

 この二台は、OSの期限が切れ次第、次代を迎えて、一線を退く。

 でも、その時点で、バッテリーの余力が、残っていたら?

 それでも、無理矢理、天板から、下ろすの?

 箱に詰めて、クローゼット行き?

 リセットは?

 …iPhoneは、リセットしない。

 電源も切らない、箱にも入れない。

 完全に寿命が尽きるまで、カメラレオンの正規メンバーとして、丁重に、お世話申し上げる。

 MacBookが、悩みどころで。

 まず、間違いなく、僕は、この機体を、OSの期限までには、使い切れない。

 そして、我が炬燵は、小型。

 とてもとても、MacBookを、複数台、載せておくだけのスペースは、確保できない。

 となると、今代には、OSの期限に関係なく、そろそろ限界、と感じられるぎりぎりのところまで、粘っていただく方向となる。

 付き合いは、十年近くになることが予想される。

 当然、飽きたり、ダレたり、するだろう。

 買い替えたい衝動に見舞われることも、あるだろう。

 そこを超えて、愛を貫くには、何が、最も肝心か?

 お金ではない、見栄でもない。

 僕と13インチのProを結ぶ、どんな刀にも斬り落とせない臍の緒とは、何か?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 書くことに対して、誠実であること。

 それさえできれば、僕と今代は、たとえ、どちらかが壊れても、消えない何かを残すだろう。

 物書きの威信にかけて、何としても、守り抜きます。それでは、また。

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