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千文小説 その1178:塗炭

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 MacBookが、決まらない。

 14インチのProを購入する勇気はないが、13インチのAirは、やはり、違う。

 もちろん、15インチや16インチに上げたりもしないので、もはや、行き詰まり。

 なもー。

 よしよし。

 なでなで。

 るふーん。

 根本的に、考え方を、変えなければならない。

 あるいは、目の前にある物体を、変更しなくてはならない。

 後者は、何度も、試した。

 先代の、IntelのAirでは、どう頑張っても、続かない。

 今代の、13インチのProが、適合に、最も近いのは明らかだが、それでも、どんぴしゃではない。

 今代に罪はないが、今代を、そのまま反復することはできない。

 何かを、切り捨て、何かを、選ばなければならないのだけれど、その何かが、いつまで経っても、はっきりしない。

 疲れます。

 実に、消耗する。

 しかし、ここで、ぎりぎりまで、考え抜かないと、どのデバイスを、買っても、使っても、一生、もやもやしたまま。

 ぬもー。

 よしよし。

 なでなで。

 くふーん。

 眠くなって甘える愛猫の、ぽさぽさの、青緑色の毛皮を撫でて、しばし、憂さを晴らしつつ。

 炬燵の上の電子機器集団、カメラレオン、全五台を見やって、呻吟です。

 iOS搭載機器に関しては、ほぼ固まった。

 iPhoneのProシリーズを軸に、どうしても、必要な場合に限って、iPhoneのSEシリーズか、iPadのminiシリーズを導入する。

 それ以外は、買わないし、古い機体を引っ張り出したりもしない。

 残るは、実質、MacBookのみ。

 これは、まだ、流動的で、考察の結果によっては、IntelのAirの復活もあり得る。

 …のか?

 なんとなく、それはない、という気がする。

 むしろ、それはない、を前提に、検討するべき。

 今、目の前にある五台が、全てだと思え。

 足りなければ、足す。

 要らなければ、どかす。

 間違っているなら、替える。

 どうなの?

 不足・不要・不適合、どれ?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 無事、熟睡にお入りになった愛猫を、ひよこの毛布でくるんで、抱き直し。

 正面の壁、ドーベルマンの肖像を見つめて、長考に入ります。

 不足や不要では、ない。

 やはり、ぴったり来ない、が正しい。

 二台以上に増やしたり、ゼロまで減らしたりすることはない。

 カメラレオンに占めるMacBookの数は、常に、一台。

 そこは、合っている。

 だが、この機体。

 Proシリーズ、13インチ、スペースグレイ、256GB、JIS規格キーボード。

 この中に、何か、異物が混入している。

 考え方を変えれば、消えてなくなるものなのか。

 物理的に、取り除かなくては、済まないものか。

 その辺りが、いくら考えても、明確にならなくて、しかし、違和感は、変わらずに、そこにある。

 なんだろうな…。

 実のところ、僕は、何に、引っ掛かっているんだろう。

 一見、ものすごく、まともなのです。

 毎日毎日、noteの原稿を書いて、たまに、USBメモリで作業をして、さらにたまに、Blu-rayディスクの視聴をして。

 OSも最新、バッテリーも良好、動作も速やか。

 いいじゃん。

 何も、問題ないじゃん。

 このまま、使い続けて、何が悪いの?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 重いのです。

 散らしても、散らしても、いつの間にか、固まる。

 ずっしりと、どっしりと、のしかかってきて、振り払えない。

 暴力を、振るわれているわけではない。

 しかし、限りなく、それに近い感じ。

 好きではない人と、毎晩、性的交渉を持っているような、いたたまれなさ。

 身体よりは、精神を蝕む、長い目で見たら、するべきではない行為。

 このところ、それが続いて、すっかり、参っている。

 法に触れているわけではないので、誰にも相談できない。

 また、目に見える不具合が生じているわけでもないので、医者にも行けない。

 さらには、MacBookには、何の問題もないので、買い替えることもできない。

 …これは、多分、うっかり異性と結婚してしまった、同性愛の人。

 妻や夫には、落ち度はない。

 でも、自分は、何一つ、楽しくない。

 なのに、周りから見たら、素敵なご夫婦ね、となる。

 きついなあ…。

 すみません。

 異性に、どうしても、興味が持てないのです。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 離婚は、できない。

 相手の性的嗜好を変えることも、できない。

 ならば、自分が、変われば?

 MacBookが、女好きなら、僕は、男に。

 MacBookが、男好きなら、僕は、女に。

 どちらでございましょうか。

 …。

 MacBookは、答えません。

 塗炭の苦しみを味わうのは、あくまでも、この僕です。それでは、また。

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