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千文小説 その1194:幸先

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 今代の、13インチのMacBook Pro。

 リセットは、しない。

 そこは、貫く。

 しかし、…なんというか、もう、限界。

 僕は、期待していたみたいです。

 いずれ、もっと親しくなって、ほとんど全てのデジタル作業を、担当してくれるようになるのでは。

 そんなことはなかった。

 書くことは、全面依存だが、それ以外には、放っておけば、出てこない。

 電子書籍を読んだり、ミュージック・ビデオを観たりは、無印の第五世代のiPadで。

 電卓は、第六世代のiPod touch。

 メインは、iPhone14 Pro。

 たまに、iPhone7で、ネット閲覧。

 …駄目じゃん。

 MacBookから、遠ざかってるじゃん。

 その通り。

 この部屋で、真にMacBookを愛し、MacBookなしでは生きていけないのは、我が愛猫のみ。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 …と言っても、愛猫は、ほぼ一日、食べているか、寝ているか。

 気まぐれにしか、MacBookを開いてくれ、とおっしゃらないので、実質、出番は、あまりない。

 そうか…。

 もう二度と、やるぜ、と鼻息荒く、MacBookを買うことは、ないんだな。

 OSの期限、切れちゃったよ。

 どうする?

 そうだな…。

 高いしな…。

 ぼんやりと、やる気のない感じで、次代を検討する未来しか、想像できない。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 MacBookを、失ったのではない。

 MacBookに乗せていた思いを、失ったのだ。

 勝手に思い入れて、勝手に失望して。

 挙句、悪口を言って、八つ当たりして。

 …申し訳ない。

 まことに器の狭い人間で、お恥ずかしい限り。

 「香水」の下司さを、笑えない。

 みじめなフラレ男から脱するためには、どうしたらいい?

 それは、もちろん、書くこと。

 毎日、noteの原稿を、MacBookで仕上げる。

 ここを外さなければ、大きくは、曲がらない。

 そのうえで、では、どうなの?

 noteの原稿書き、すなわち、インターネット上での執筆作業、のみであれば、スペックは、そんなには、要らないのでは?

 今代の、OSの期限が切れたら、なにも、無理をして、14インチのガチのProを、あつらえることはなくない?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 …ですよね。

 心から、そう思う。

 MacBookであること。

 Wi-Fiが繫がること。

 パソコンに関しては、この二点を、とにかく、死守する。

 残りのあらゆる要素は、おまけに過ぎないと、繰り返し、言い聞かせる。

 MacBookを買ったのに、使っているうちに、MacBookではなくなった、ということは、あり得ない。

 なので、事実上、Wi-Fi接続が、肝となる。

 どんな名機であろうとも、インターネット環境が悪化したら、OSの期限に関わらず、即買い替え。

 逆に、その他の機能にどんな不備があろうとも、インターネット環境が安定しているなら、文句は言わない。

 それだけ?

 基本的には、それだけ。

 そこを踏まえて、さらに、さて。

 どうなの?

 放っておけば、僕は、MacBookは、あまり使わない、と前述した。

 意志の力で、それを曲げることは、可能か?

 MacBookとの距離を、望み通り、どんどん詰めていって、最終的に、SIMカード入りの現役iPhoneを上回る使用量を叩き出すことは、できるの?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 炬燵の中、爆睡の愛猫に、布団の裾で、換気の風を送りつつ。

 天板の上、静かに横たわる、薄灰色のノートパソコンを見やって、ため息をつきます。

 まさに、それが、もう限界、の大元。

 やればできる、と思ってしまうことに、僕はもう、疲れた。

 そもそもが、やる気と気合いに満ち溢れた人間ではない。

 いいじゃん、無理しなくて。

 だらしないのは、苦手だが、暑苦しいのも、ごめんこうむる。

 一寸先は、闇か光か、決めるのは、僕ではない。

 数限りない偶然が織りなす網目模様を愛でることが、僕にできる、唯一のこと。

 MacBookと、今後、どうなるか?

 わからない。

 むしろ、知らない方が、楽しい。

 書くことだけは続けて、あとは、様子を見る。

 もしかしたら、仲が深まるかもしれないし、さらに遠ざかるかもしれない。

 あっさりと、次代を買ってしまうかもしれないし、ものすごく長い間添い遂げるかもしれない。

 隙間を、空けておくこと。

 愛猫が蒸し焼きにならないよう、いつでも、風を通しておくように。

 どうしようかな…。

 iPad、買おうかな。

 それとも、クローゼットに眠る、無印の第九世代を起こすか?

 迷う余地が出てきたのは、幸先の良さの表れです。それでは、また。

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