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千文小説 その1104:露呈

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 目の前で、ぶちっと、切れたんだよ。

 電源、繫いでなかったかな、と思ってね、何度も、挿し直してみたんだけど。

 充電ランプが、どうしても、点かなくて、ああ、こりゃ、本格的に、いったな、と。

 データ、全部、飛んだよ。

 怖いね。

 みんな、気をつけてね。

 …のんびりとした口調で繰り出される、世にも恐ろしい、ノートパソコンの最期の話を、オンライン会議の後の雑談で、同僚から、聞きながら。

 やっぱり、パソコンは、複数台、持つべきだな。

 それも、年代やOSが、若干、異なっていた方が、生き延びる率は高い。

 データは、全台揃えて、それぞれが、それぞれに対しての予備機になるようにして。

 よほどのことがなければ、リセットせず、動くうちは、動かす方向で。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 膝の上、大爆睡の愛猫に、時折、ひよこの毛布を、掛け直して差し上げつつ。

 zoomを切って、天井を仰ぎ、今後のデジタルライフについて、長考です。

 とにかく、OSが最新である機体が、最低、一台はあること。

 iPhoneは、絶対。

 MacBookは、多少、切れてもいいかな、と甘くみていましたが、そんなことはない。

 本体のため、ではなく、データのため。

 OSの異なる機体を、複数台、併用することで、共倒れを防ぐ。

 長く一台だけ、というのも良くないし、ころころ買い替える、というのも、効率が悪い。

 少しずつ、パソコン自体のグレードを上げていくことにより、無駄な散財を防ぐとともに、よりいっそうの安全を確保する。

 初代は、IntelのMacBook Air、13インチ、256GB。

 今代は、M1のMacBook Pro、13インチ、256GB。

 では、次代は?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 Airシリーズ、13インチ、256GB、Appleシリコン、日本語キーボード。

 おそらく、これが、炬燵の上の電子機器集団、カメラレオンにおける、最も適正な、MacBookのスペック。

 なのだが。

 …二台とも、絶妙に、外してない?

 初代は、Intel、アメリカンキーボード。

 今代は、Proシリーズ。

 完璧に五点を押さえている機体は、今のところ、ない。

 でも、逆に、外したことによって、こうして、千文小説が書けている、とも言える。

 もし、初代の時点で、びしっと決まっていたら。

 あとは、完璧さを反復するだけ。

 せいぜい、色が変わるくらいで、非常に安定した、裏を返せば、ダイナミズムに乏しい作品が、生まれていたかも。

 しかし、やみくもに外せばいい、というものではない。

 たとえば、なんとなくだが、15インチや16インチはないな、という気がする。

 そこを外すと、違う話になってしまう。

 僕の書く物の、絶妙に中途半端なスケール感を保つには、13インチ、せいぜい、14インチでないと、矛盾してしまう。

 また、AppleシリコンでないMacBookは、廃版だし、手違いで頼んでしまった初代はともかく、今さら、意図的に、JIS規格以外のキーボードを発注するのも、わざとらしい。

 したがって、チップと言語の二点は、確定。

 条件から、除外して、残るは、三点。

 シリーズ。

 インチ。

 容量。

 とはいえ、Proの13インチの256GB、も、既にない。

 本家本元、Airの13インチの256GB。

 ややひねって、Proの14インチの512GB。

 さらにひねって、Airの13インチの512GB。

 選択肢は、三つに、しぼられた。

 が。

 …ここまで、二台、外しておいてからの、王道回帰というのは、なんと言うか、終わってしまう。

 栄えある初代で、Intelのアメリカンキーボードを引き当てた時点で、物書きとしての僕の行く先は、かなりの程度、定まってしまった。

 生涯、13インチの256GBのMacBook Airを、買うことはないだろう。

 となると、13インチのMacBook Airであれば、512GBに変えたところで、見た目は、同じ。

 小細工の分だけ、労力もお金も、無駄。

 では、ずばり、次代以降のMacBookは?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 MacBook Pro、14インチ、512GB、Appleシリコン、日本語キーボード。

 iPhoneのProシリーズ、スタンダードサイズ、256GB、と同様、反復継続するべきスペックであると同時に、僕の文体、そのもの。

 …バレたか。

 ついに、晒してしまった。

 がっくりと、肩を落として、天板の上、鎮座する愛機たちを、見やります。

 どんなに隠そうとしても、正体は、いずれ必ず、暴かれるものです。それでは、また。

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