【140字小説 Ⅹ 6】『非日常的日常』
【1.フリ】
優等生のフリをやめた。
合わないと感じていたから..
すると周りに異性が寄ってくる様になった。
自信満々の男子達だ。
「俺と付き合わない?」
言われるまま付き合い、相手を貪り、味を覚えた。
本能に従うだけだ..
今も暗がりで相手を待つ。
来た..
寄ってくるよ、餌が..
人間のフリしてるだけで..
【2.お返し】
1月某日
新しい上司が私の部署に来た。
陰湿な男。一気にブラックな空気。
辞めたくなる。
2月14日
憂鬱だ..
暗い気持ちで神社にお参り。
「職場が良くなります様に」
チョコをお供えした。
3月の朝
会社がザワついている。
例の陰湿な上司が失踪したらしい。
そういえば今日、ホワイトデーだ..
【3.限界】
恋人が殺されて今日で1年。
刑事が私の部屋を訪ねてきた。
捜査は膠着状態らしい。憎き犯人は野放しだ。
「引き続き、犯人逮捕に全力を尽くします」
頭を下げる刑事。
だがこの1年、気が休まる時が無かった。
このままでは精神が崩壊する。
私は声を荒げた!
「早く捕まえてよ!」
私の中に隠れた犯人を..
【4.反射的行動】
街にゾンビが大量発生中だ!
俺は書店に隠れ、息を潜めている。
突然!窓ガラスが割れ、奴らがなだれ込んできた!
もうダメか..
いや、一か八かの勝負だ!
俺は最後の望みに賭け、大声で歌い出した!
すると..
奴らは一斉に出口に向かって歩き始めた..
やったぞ!
俺はそのまま、蛍の光を熱唱し続けた!
【5.素朴な疑問】
「じいじ!お兄ちゃんが勝手にボクの陣地に入ってきた!」
「ん?お庭は皆のものだよ。お..電話か。もしもし?」
『総理!領空侵犯です!』
「なに!今すぐ撃ち落とせ!」
『はい!』
《攻撃シテキタゾ》
《占領シマスカ?コノ惑星》
※※
※※
一体、何を争ってるのだ?
ワシが造った生き物達は..
【6.同窓会】
明日は高校の同窓会。
私の脳裏に暗い記憶が甦る。
卒業して五年も経つのに..
でも私は変わった。変われたんだ!
そして心に決めた。
あの嫌いな男子を消してやる!
当日。私は覚悟を決めて会場に入った。
私を見た同窓生の声が聞こえる。
『あれ誰?』『綺麗!』
生まれ変わった..嫌いだった男子。
【終】