止められる大人たち。
朝、私は職場に向かって歩いていた。
途中、押しボタン式の横断歩道があって、小学生の女の子三人組が、こちら側に渡りきったところだった。
彼女たちは渡りきったところで、また青になるボタンを連打し始めた。
「ん?何か忘れ物でもしたのかな」
そう思いながら私は通過したが、振り返ると、彼女たちはそのまま、その横断歩道から離れていった。ただ面白がって、押してみて、そのまま去っていったようだ。
私は、わざわざ戻ることも、注意するようなことももちろんしなかったが、なんとなく心がざわついた。おそらく青信号が点っているうちにボタンを押したところで、青信号が延長になるわけでも、次の赤がすぐに青になろうとするわけでもないだろう。でも、もしかすると、それによって無駄に止まらなくてはいけない車両が発生することを想像して、なんだか大人が軽んじられたような、そんなさみしい気持ちになった。
もしも、私が彼女たちに声を掛けるとしたら、どんな言葉を掛けるだろうか。
「止められた車の運転手の気持ちになってごらん」とでも言うかもしれない。「君が押さなければ、あの車たちは待たなくて済んだんだよ」などと言うかもしれない。そこから、「時間というのは貴重でね」などという話にまで及んでいたかもしれない。
それでも、どれも彼女たちの心には届かないだろうなぁ、と思い知る。思い浮かべれば思い浮かべるほど、無意味な考察に感じてくる。
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