「絶対に完全復活してやる」と言い続けた一年。
脳出血で倒れた彼が
ちょうど一年経って、
なんと職場に帰ってきた。
***
倒れて、病院に運び込まれたあと、彼は何日も眠ったままで「このまま目が覚めないのではないか」「目が覚めても、何も覚えていないのではないか」と周りを心配させた。コロナ渦で、家族でも面会が難しい中、なかなか良い情報は流れてこなかった。
そんな彼が、それから一年経って、一人で職場にやってきた。それは、プロジェクトを離任する手続きのため。そして、みんなへのお別れの挨拶のため。
彼自身、一年後の完全復活を目指したが、それは叶わなかった。脳出血の影響により、記憶障害や視野狭窄が残った。
見た目はまるで元通り。
一年ぶりに見たみんなも、元通りの彼に驚いている。
ただ、言葉が出てこなかったり、挨拶にいった先で名前が出てこなかったりして、隣で私が先回りして名前を出したり、おそらく彼も思い出せないまま「ご無沙汰していました。すみません」と言って、不自然な空気が流れることはなかった。
最後、長年働いた職場で、みんなの前で挨拶をした。
大変なことになってしまって・・・
申し訳ありませんでした。
絶対に一年後に、完璧に復活してやるぞ!と。
絶対に完璧で戻ってくるぞ!と、思っていたのですが。
こうして、終わりになってしまって・・・
そこで、彼の声は止まった。
少し経って、絞り出すように
ありがとうございました
よく頑張った。
何人かが涙ぐんでいた。
会社は彼の居場所を用意してくれて、休職が明けた後に、新たな業務に就くことになっている。
完全復活とはならなかったが、また会える。また彼は働ける。本当に良かったと思う。
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