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サプライズよりもサプライズ

今日、退院できることになりました。

月曜日の深夜に胸の痛みで目が覚めて、午前3時に自分で119番に電話をしました。「すぐ向かいます」と言っていただき電話を切りました。「うぁ、ほんとに来ちゃうんだ」とドキドキしました。

スマホの充電器とイヤホンをカバンに突っ込んで、服を着替えて、出かけられる準備ができたところで電話が鳴りました。「今、そちらに向かっています。少し状況を確認させてください」
救急車からでした。玄関前の床に座り込みながら話していると、サイレンが近づいてくるのが分かりました。

電話が終わると、私はエアコンと加湿器の電源を切り電気を消して、カバンとジャンパーを手に持って外に出ました。戸締まりをして、階段を下りたら、救急車はまだ到着しておらず。曲がり角を曲がって、こちらに向かってくるのが見えました。ずっと口からは「イタタタタ イタタタタ」という声が漏れていました。

「歩けるの?大丈夫?」

救急車の後ろから、乗り込みました。

***

病院の夜間救急に着き、聴き取りと、レントゲンやCTスキャンなどの検査、採血、点滴をされながら、病室の準備を待ちました。
移動する寸前で、「ICUに入りますのでスマホは一切使えなくなります」と言われたので、あわてて、妻と現場と上司に短いメッセージを送り、スマホを手放しました。


妻に内緒で、長男との旅行を計画していました。

レンタカーを借りて、二人で富士山を近くから観る計画。温泉に泊まって、翌日はヨシモトの劇場で漫才を観る予定でした。出発は2月22日。

2月18日の朝、私はICUで、それを思い出しました。
ICUに入りたてで退院がいつになるかも分からないし、まだ呼吸するたびに胸が痛いのに、旅には行けるだろうか。

キャンセルするしかない。
スマホがあればキャンセルは簡単ですが、ICUから出ることは許されませんし、スマホをICUに入れることは、もっと許されません。ホテルは私が、レンタカーは長男が予約しています。

私が、外に連絡する手段を看護師さんに聞いてみたところ、「院内専用の携帯電話を使って、電話をすることは可能」とのことでした。

時刻は朝7時30分。
ひとまず、妻に電話をしました。

ここまでの状況を説明し、最後に「お兄ちゃんに"レンタカー、キャンセルして"ってラインしといてもらえる?」と伝えると

「え?どこか行く予定だったの?」と聞かれ
「うん」とだけ答えました。

とりあえず、全貌を話すのは躊躇し、そこまでで電話は終えました。

***
9時30分頃、また電話を借りました。

医師との話で、2、3日で帰れる感じは無さそうでしたので、その旨を現場や上司などに伝えました。

そして、また妻へ。

「お兄ちゃんに伝えた?」

「ラインしたけど、既読にならない」

「ホテル、キャンセルしてもらっていい?」

「え??泊まる予定も有ったの?」

ホテルの名前を伝え、キャンセルをお願いしました。

「突然、富士山をバックにした二人の写真を送って、ビックリさせる予定だったんだけどなぁ〜」

と言うと

「そうだったんだ〜。残念だったね。そのサプライズ以上のサプライズが来たけどね」

と返されました。


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なさじ
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