見出し画像

一緒におじいさんを助けた「同志」(2)

前回(1)はこちら。

朝、起きて、妻にはこう話をした。
「昨日の夜、すごい雪で、おじいさんが道で寝ちゃっててさ。声かけて家まで送った。そしたら終電なくなってさ、タクシーで帰ってきた。」

「へぇー、大変だったね。そんなことするんだね。」

とりあえず助けた話は伝えた。(というか、どういうイメージ?)



それにしてもメールは来ない。とても美しい女性だった。その間にも、私の頭の中でどんどん美化されていくような気がする。あれは、夢だったのだろうか、と思ったり、おじいさんとあの女性が組んだ芝居だったのでは、とすら思えてくる。



おじいさんを助けた夜から、一ヶ月が過ぎた夜。携帯電話が光った。「おぼえていますか?一緒におじいさんを家まで送った者です」彼女からだった。来ないのかと思っていたから、興奮した。それからは、たまにメールのやり取りをするようになり、メールの中で自己紹介をした。彼女は26歳だという。こちらは妻と二人の息子がいること、38歳だということを伝えた。そして、そのメールの中で、二人で会う約束をし、私は、すすきのにある居酒屋を予約した。



2012年2月8日(水)私たちは、再会を果たす。
緊張した。思ったよりも彼女は若かった。緊張のせいだろう、はじめはなかなか上手く話すことが出来なかった。あの夜の話はするものの、共通する話はなかなか見つけられなかった。酒はすすんだ。

少しずつ緊張は解けて、楽しい時間が流れ出した。可愛らしい女性と一緒にお酒を飲む時間の喜びも感じた。けど、なんだかこれからも長らく、話をしたり、お酒を飲んだりするような間柄ではないな、と気持ちは固まり始めていた。

その日は22時頃に店を出て、そのまま別れた。



メールはほとんどしなくなった。

季節は夏になり、たまに旧センターで仕事があるときに、おじいさんを助けたあの場所を通ったら「見かけましたよ」とメールが来たりした。「あ、久しぶり!元気?」と返すと、「暑くなりましたね。ビールがおいしい季節ですね」と返事があった。「そうだね。ビアガーデンとか行こうか?」なんて一瞬盛り上がったりもしたけど、なんとなく都合が合わず、夏も過ぎていった。


そこからは、もう連絡を取り合うことはなくなった。LINEを登録したときにアイコンが表れて「懐かしいな」と眺めたりする程度だった。




つづく。 

(つづくの?)


いいなと思ったら応援しよう!

なさじ
いつも読んでいただきありがとうございます。