一緒におじいさんを助けた「同志」(5)最終回
第一話。 第二話。 第三話。第四話。
実話です。
2019年11月20日(水)
八年前、一緒におじいさんを助けた同志と、八年ぶりに連絡を取り合うようになっていた。
いくつか、LINEのやり取りをしながら、近況や仕事の相談などを聞くようになった。「そういう職場環境は大変だね。応援してます。」と送ったら、「ありがとうございます!近いうち会いたいですね✨」と返ってきた。
急展開。
いや、もちろん「会いたいな」とは思っていたけれど、さすがにこちらからは言い出しにくかった。八年前、おじいさんを助けたあとに、一度だけ二人で食事をした時に感じた年齢差と、なんとなく湧く後ろめたさが、少し後味として残っていた。さらに、今、あちらは34歳になっている。結婚しているかもしれないし、子どももいるかもしれない。
私はすかさず返事をした。「来週とか再来週とかどうですか?」(素直。笑)
「今月は予定入ってて、厳しいです。ごめんなさい」
「じゃあ、12月に。それとも1月にしましょうか」
「いえ、12月にしましょう。お仕事は何時頃終わるんですか?」
そんなやり取りを数日しながら、12月3日(火)に再会する約束をした。私は「18:30~」でお店を予約した。
2019年12月3日(火)
今日もしんしんと雪が降っている。積もりそうだ。
店に向かいながら、私はどんなことを話そうか、イメージトレーニングをした。まず、何を話そうか。「この八年、何がありましたか?」そう切り出すのがいいかな。正直なところ、彼女の顔を覚えているか、自信は無かった。店に着く直前でLINEが鳴った。
「すみません、少し遅れるかもしれません!」
先に入っていることにした。ちょっと緊張する。
「こちらでございます」店員に導かれ、彼女は現れた。「お久しぶりです」
一気に八年前にタイムスリップした。
そうだ、この子だ。
あのとき26歳だった彼女は34歳になっていた。綺麗な大人の女性になっていた。
「この八年、何がありましたか?」
彼女は、昨年結婚したこと、仕事のこと、転職のこと、旦那さんのことなど、色んな話をしてくれた。
おじいさんを助けたときの話も少しはしたけれど、ほとんどが今の話だった。
「そういえば、あのおじいさんを助けた後、すぐにメール来ると思ってたんだけど、なかなか来ないから書き間違えたかと思ったよ。」
「あれは・・・メールアドレスを聞いてはみたものの、大人の男性に、軽はずみにメールしていいものかと、躊躇したんですよ」
「なるほど。でも、つながって良かった。」
店員が声を掛けてきた。「お時間となりますが」予約していた飲み放題コースの二時間が過ぎていた。
彼女が「延長します?それともお店変えます?」と言う。
「このまま飲もう」私はそう答えた。
お互い、果てしなくビールを飲み続け、話し続けた。
23時を過ぎ、やっと重い腰をあげた。「帰りますか」
「前は小娘感があったけど、今は話しやすくて、こんな美人と飲めるなんて幸せ、って思ったよ。また飲みましょう」たしか、私はそう言って、彼女は「ぜひ!」と答えた。
「そうそう!今度はお姉様たちも連れてくるよ」
「そうですね。楽しみ。」
そして、二人で駅まで歩き、それぞれの地下鉄に乗って帰った。
ここまでが、今ある「おじいさんを助けた同志」の物語だ。
そして、私は、その翌朝に、このお話を書き始め、noteに投稿した。
これを投稿した前夜、そんなことがあったんですよ。
おしまい。
【おまけ】
いつも読んでいただきありがとうございます。