息子が自らつかみ取った信頼。
ズバン!と力強い球が、キャッチャーミットのど真ん中に叩き付けられている。
今シーズン初めての練習試合。
グラウンドにラインを引き終えたお父さんたちが、うちの子の投球練習に注目している。
「なさじさん、ずいぶん力強い球を投げるようになりましたねぇ。これではバッターもなかなか当てられませんよ。」
「うーん。体重が増えましたしね。」
なんとなく照れ臭くてそんな風に返したが、彼は自粛期間も、グラウンドで投げ続けていたし、家でも自主練に励んでいた。これまでのうっぷんを晴らすように、彼は力強い球を思いっきり投げ込んでいる。
一試合目は、六年レギュラーの試合。息子は三番ファーストで先発出場。
四回表、こちらの先発ピッチャーが崩れて、2-4とリードされ、ランナーを一人おいてピッチャー交代となった。ファーストからマウンドに上がる息子。力強い投球練習に、相手監督たちがざわめく。「これは当たれば飛ぶぞ!」と声をあげる。
ピッチャーゴロ、三振、セカンドゴロ、と三人でその回を抑えた。コントロールもまずまずだ。そして、その裏、こちらの打線がつながり逆転。結果、そのまま得点を与えず、7-4で勝利をおさめた。
次の五年以下試合は、先発ピッチャーとしてマウンドに上がった。あちらの監督たちは、またしてもざわついている。「え?え?六年じゃないんだ」
守備のエラーで失点したものの10-2で勝利した。練習試合だが、ずいぶん自信になったと思う。
バッティングも二試合通じて全打席出塁し、二試合で五打点。
最後まで下げられることなく、中心として使っていただいた。昨年の監督なら信じられない采配だ。
監督からの信頼を自分で手繰り寄せたようだ。
来週土曜日は、さっそく公式大会の一回戦。相手は優勝候補。勝ち上がっても次は昨年のチャンピオンが待ち受ける。険しい山に入ったが、きっと、またみんなを驚かせてくれるはずだ。
相手チームが帰るとき、選手の一人が家族に話しているのが聞こえた。「だって、あんな速いピッチャー出て来るんだもん」
さぁ、開幕です。
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