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自らの手で勝ち取った栄光を。

「えー、それでは、優秀選手賞を一名発表いたします」

球場の真ん中に、準決勝、決勝を戦った4チームの子ども達が集まっている。その子ども達の中から、走り出してきたのは、うちの次男だった。

小学五年生。うちの中では一番小さくて、赤ちゃんのように可愛がられている次男が、まるで別人のように大きく見える。大会委員長から、盾を渡される息子を見ながらじわっと目頭が熱くなった。

夏の大会で完敗した優勝候補との準決勝。三位以内に入れば、来春の全市大会出場権を掴むことができる。どうしてもこの試合に勝ちたい。夏の雪辱を。そして勝てば二位以内確定となり出場権を勝ち取れる。

大事なこの試合、彼はピッチャーを任された。

初回から調子よく先制するものの、味方の守備のエラーもあって、中盤までは混戦。そろそろ制限時間で「最終回」となりそうな四回。4対5と、一点リードされ苦しい展開。なんとかこの回で追い付き、追い越したい。

二三塁のチャンスで彼に打順が回ってきた。

「来~い!」

打席で大きく叫ぶ。気合いが入っている。

左打席の彼が放ったその打球は、ライトを守っている子の横を抜けていった。

2点タイムリーツーベース。逆転!

そこから、相手ピッチャーが崩れ、その回なんと9得点のビッグイニングとなった。その裏、彼は再びマウンドに上がる。反撃を抑え、13対6で勝利。

私は、ゲームセットのときに涙を流すだろうと思ったが、逆転のあと、想像以上に点差がついたため、ゆっくりゆっくり噛み締めるような喜びとなって、涙は流れなかった。まさかのコールドゲーム。投げては完投。打っては3打数3安打。4打点。フォアボールが一つ。素晴らしい活躍だった。


決勝進出。


彼は午前中に完投しているため、14時からの決勝戦、彼はキャッチャーを任された。


だが、チームは準決勝ですべてを出し尽くしたようだった…。

0-5とリードされて、最終回。

彼に打順が回ってきた。

ランナーはいない。

一矢報いたい。

彼が放った当たりは、センターの頭を大きく越えていった。


ボールはホームへ帰ってきたが、頭から滑り込んだ彼はキャッチャーのグラブをかわしてホームイン。

ランニングホームラン。

反撃は、それだけ。でも、爪痕を残すことはできた。

準優勝だった。

そして、優秀選手賞。



個人賞を選んだのは、監督だ。

昨年は、選ばれなかった。活躍しても、選んでもらえなかった。でも今年は、圧倒的な結果を出して、自分で掴み取った。昨年の悔し涙を彼は嬉し涙に変えてくれた。

雪虫が飛んでいる。そろそろ今シーズンも終わる。

来年は六年生。さらなる大爆発に期待したい。

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なさじ
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