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校長室通信HAPPINESS ~「おせっかい」を育てよう!

「指示通り」に行動できない子どもたち

 学校やサッカーの指導など子どもたちと関わっている中で、最近ちょっと気になることがあります。それは「教師の指示通りに行動できない子が増えている」ということです。先日、高学年の子どもたちに体育の指導をする機会があったのですが、そのときにも気になりました。例えば「2列になってごらん」と指示したのに3列に並ぶ、「あのマット、ここに持ってきて」と頼んでも、全く別のところに持っていってしまう…。さらに気になるのは「教師が指摘するまで、だれも修正しようとしない」ということです。少年サッカーの指導の場でも同じです。パスの動き方を説明しても、いざ始めてみると説明した動きとは全く違う動き方をして、平気な顔をして誰も間違いを指摘しない、ということがあります。
 こういうことは、低学年のような幼い子どもたちにはありがちなことですよね。気になるのは高学年になっても、簡単な指示や説明通りに行動できない、さらにそれを修正しようとしない、という子どもがけっこういることです。
 もちろん子どものせいにだけするつもりはありません。指導側の「分かりにくい指示や説明」が原因であることも否めません。でも、子どもの指導に携わっているかなりの方々から、同じような悩みを聞くことが最近増えてきたことから考えると、これは一般的な傾向なのかもしれません。だとすると、もっと問題の本質を考えなければならないのかもしれません。

子どもたちの世界からいなくなった「おせっかい」


 そもそも「指示通りに行動できない子」というのは以前からいなかったわけじゃありません。でもそういう子たちは、うまく集団の中に溶け込んであまり目立つ存在じゃなかったような気がします。ではなぜ今は目立つのか?おそらくそれは「子どもたち同士の関わり方の変化」によるところが大きいのではないかと思っています。以前は教師や指導者の指示通りに行動していない子がいても、「今は集合だよ」「2列だから、君はこっちでしょ!」「動き方が違うよ」というふうに、声をかけてくれる子どもがどの集団にも必ずいました。いわゆる「おせっかい」な子たちです。実は、こういう「おせっかい」な子たちは、仲間の行動を上手にコントロールしながら、全体の「聞く力」を高めてくれる、貴重な存在だったんじゃないかと考えます。
 もちろん今の子どもたちの中にだって、友だちの間違った行動に気づいている子もいるはずです。重要なのは「それ、違うよ」と声に出して言えるかどうかです。「ジコチュウ」傾向の低学年が、友だちの行動がどうであろうと「われ関せず」なのはまだわかります。問題は、他者意識が高まっているであろう高学年になっても、「ジコチュウ」的な関わり方しかできないことです。友だちが間違った行動をして先生に叱られたり、みんなから遅れたりしているのに気にならない、あるいは気がつかない…。原因はなんでしょうか?もしかすると、昔はご近所さんに必ずいた「おせっかいなおばさん」が、最近見られなくなった…ということに関係しているのかもしれませんね。

「おせっかい」の育成方法とは…


 この問題の解決策は「仲間と深く関わる習慣を子どもたちにつけていく」こと。そのために「おせっかい」を育てることです。ポイントは、「仲間に声をかける場面を増やす」ことです。例えば子どもたちを集めたい時、あえて小さな声で「集合…」と言います。そうすると、声が聞こえた近くの子たちだけが集まります。集まった子どもたちに、「あのグループは気がついていないみたいから声をかけてくれる?」とお願いします。すると「おーい、集合だよ!」なんて何人かが必ず大声で呼んでくれます。もし間違った行動をしている子がいたら、「あの人たち、説明したことと違うことをしているような気がするんだけど大丈夫かな?」と言うと、「こうやるんだよ」なんてわざわざ説明しに行ってくれます。そんなときは必ず「ありがとう。助かったよ」とか「コーチ(先生)より教え方上手だね」と感謝を伝えることが大切です。
 ただ、気をつけなければいけないことはきつい口調にならないようにすることです。「早く集合しろよ!」なんて、ちょっと言葉がきつくなってきたなと思ったら、「そんないい方しなくても大丈夫だよ。一生懸命だから気がつかなかったんだよ、きっと…」とフォローしてあげましょう。あなた自身がイラっとして、感情的になってしまいそうになったら、「子どもたちはわざと間違えているんじゃない」「子どもの成長というのは真っすぐにはいかないものだ」と、小さな声でつぶやきましょう。私はいつもそうしています。
 
 あなたの関わる子どもたちの中に、愛すべき「おせっかい」を育ててみませんか?

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