ポッケからするめいか
今から15年ほど前、しょうさんは初期の胃がんを患った。開胸して胃の3分の2を摘出した。
胃がんが発覚する数ヶ月前、
しょうさんは胃に違和感を感じていた。
キリキリが取れなくて市販の胃薬を飲んでは騙し騙し過ごしていたが、気休めにしかならず、俺の胃はやっぱりいつもと違うおかしい。と思って病院へ行った。
最初は近所の個人病院を受診した。
そこの先生は、レントゲンを撮ると異常はなさそうですけど、そんなに気になるなら念のためがんセンターに紹介状を書きましょうか?と言った。
今思うとその時点でがんだったのだ。
でもそこの先生は遠回しに伝えたのだ。
がんセンターではすぐに胃がんと診断された。
俺の勘は当たってたべ!絶てぇおかしいと思ってたよ。
入院と手術日はあっという間に決まり、
しょうさんが一番心配したのが入院費用。
けれど、こんなこともあろうかと10年も前にミキさんは家族全員をがん保険に入れていた。
しょうさんに保険加入の相談をすれば、おそらくそんなもん必要ねぇ!とバッサリ言われるだろうと思い、内緒で入っていたのだ。
保険に加入してたと知りしょうさんは安堵した。
手術は無事成功。
術後2日間は絶食。3日目にして食べられるのがおも湯だった。
先生には何回かに分けて咀嚼しながらゆっくり食べてくださいと言われたが、おも湯が配膳されると軽く口をつけたかと思ったら2口目で一気に飲み込んだ。
次の日にはあの食事では完全に物足りんと思ったらしく食事が配膳される前に、点滴をガラガラ引きながら自ら売店へ行き、魚の缶詰を数個買ってお粥に混ぜて食べていた。
またその次の日には3食だけでは足りず煎餅を買ってきて間食していた。
しょうさんが売店で缶詰を買った時、レジを済ませて振り返ったらそこに主治医が並んでいた。主治医の顔は引きつっていたそうだが軽く会釈してシラっと戻ったそうだ。
胃がんと宣告された時、しょうさんはもちろん家族みんなが死を覚悟し、不安な日々が始まったが、許可もなく術後には、おかゆに秋刀魚の蒲焼缶をぶっかけてかきこむしょうさんを見てミキさんは、
この人は生きる。と思ったそうだ。
あれから15年。
再発することなくしょうさんは今も元気に生きている。
しょうさんは破天荒。
昔も今も己の価値観を振りかざし、
去る者追わず来る者拒まず、
規則正しく、
流されず生きている。