ポッケからするめいか32
シイタケどろぼうの話。
しょうさん家の隣の家は弟家族が住んでいます。
弟家族が隣に家を建てたのは30年ほど前の話で、
それ以前は、庭としてしょうさん家が使っていた。
そこには、初代犬小屋を建てたり、
地面を掘って池を造ったり、
たまにゴミを燃やして焚き火をしたり、
子供らが走り回ったり、、
今はなくとも
たくさんの思い出がうまっている。
ある時期、
庭の端の小さな林にシイタケを栽培していたこともあった。
原木を10本ほど買ってきて駒菌を植え、
わりとすぐにできるので、
収穫しては料理して、晩のおかずによく食べていた。
多少ほったらかしていても育つので、
初めの頃はまだかまだか?とできるのを楽しみにしていた子供たちも、
そのうち興味がなくなり、
しょうさんミキさんがときどきチェックする程度だった。
ある日のこと。
ミキさんが庭へ洗濯物を取り込みに行ったら、
庭の端の林に人影が見えた。
誰だ?
そう思って近づくと、
頭から手ぬぐいを被り、
黄色いエプロンを着た農家のおばさんらしき人が、
林の中でガサゴソと動いていた。
「何してるんですか?」
ミキさんが聞くと、
そのおばさんは少し慌てた様子でしどろもどろになっていた。
というのも、
おばさんはシイタケの原木のそばで袋を持って立っていたから。
おばさんが持っていた袋の中には、
シイタケ。
それはうちで作ってるシイタケです。とミキさんが言うと、
あら、そうなの?野生でできてるものかと思ったわ。
とかなんとか言いながら採ったシイタケを戻しながら誤魔化して笑っていた。
野生なわけないでしょ。
(綺麗に原木が並べられているのだから)
うちで作ってるんですよ。
ミキさんが少し強めに言うと逃げるようにそのおばさんは去って行った。
その日の晩、
しょうさんが帰宅するとミキさんは、
今日、黄色いエプロンのおばさんがね、、
と昼間あった出来事を説明して、
あー、そのなりのおばさんは、
どこどこの誰々だろう、、
人が栽培してることくらい見ればわかるだろ〜、、
とかなんとか話していた。
それから、
いつの間にかシイタケも採れなくなり、
林も30年経ってだいぶ生い茂っている。
今では林のすぐそばに弟家族の家が建ち、
足を踏み入れることももうない。
家族の思い出は土や緑に覆われている。
そんなこともあったね。
と、しょうさん家族がうっすらと覚えていればいい。
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