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ポッケからするめいか19

ミキさんが好き。


しょうさんとミキさんの馴れ初め。


出会いは今から60年くらい前のこと。

しょうさん17歳。ミキさん14歳。

貧乏子沢山の家庭で育ったしょうさんは、
中学を卒業すると、土方の道に進んだ。

当時働いていた職場の近くにミキさんの家があり、

毎日、中学生のミキさんが歩く姿を見かけていた。


可愛い子だな。

しょうさんはそう思っていた。


中学を卒業するとミキさんも、社会人に。


地元の繋がりは強く、世間は狭く、
知り合いを介してしょうさんとミキさんは顔見知りになった。

おとなしくて優しそうな人。

笑顔が可愛い控えめな人。

お互いの印象は良かった。

仲間同士で集まると必ずお互いの存在があった。


知り合って何年か経つと、
なぜか年に一度だけ2人で会ってドライブに行く仲に。

けれども、
愛の告白はなく、
交際の申し込みはなく、
ただお互いに気になる存在であっただけ。

知り合ってから10年経った頃。

綺麗だったミキさんには、交際の申し込みや見合いの話が絶えなかった。

けれど毎回ミキさんは断っていた。


きっと、ミキさんもしょうさんが好きだったから。


2人の仲を薄々気づいていた友人や親戚に囲まれ、いつの間にか結婚へと話が進んだ。


出会いから、
あれよあれよと60年近く経った。

血気盛んな自己中のしょうさんも、
だいぶ落ち着いた、
白髪頭のハゲじじいへと。

ぽっちゃりの時期は過ぎ、
多少スリムになったけど、
笑顔は相変わらず可愛い年輪を重ねた
ばばあへと。


しょうさんは、朝起きると神棚と仏陀と、
自分とミキさんの分のお茶を必ず入れる。

夕飯には畑で取れた自慢の野菜を煮たり、焼いたりして、
必ずミキさんの分のおかずを作る。


しかしミキさんは、
しょうさんが淹れたお茶は飲まない。

みきさん朝起きる時間が遅く、
しょうさんが淹れたお茶はぬるいし濃すぎるから。

しょうさんが、作ったおかずも食べない。
なぜならしょっぱくてまずいから。


2人は月一で必ず馴染みの寿司屋へ行く。
帰りは代行を使って帰宅する。

スマホの機種変は一緒にする。
俺は黒にすっから、
おっかは赤にしろや。

通販で布団を買う。
俺は茶色で、
おっかはオレンジな。

そろそろ髪染めて来いや。
俺がマジックで塗ってやろうか?

しょうさんの作業着は、
風呂場の足拭きマットと、犬の毛布と一緒に洗われる。

毎日畑に行く夫。

毎日クロスワードパズルに夢中の妻。

60年経った夫婦の日常。
仲は、
なかなか宜しいんじゃないかと?

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