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【読書レビュー】遭難者

美しい。紙でザラザラした表紙へのこだわり。

【基本情報】

著者 折原一氏
ジャンル ミステリー
発行 1997年5月30日
※私が入手したのは、単行本版。アマゾンでも古本でしか売っていないという一品。下の写真は、文庫版の表紙デザイン。

【ストーリー】

息子が遭難!?びっくりする母の目線でスタート。関係者数名の手記を通して、少しずつ遭難への経緯がわかってくる。ひょんなことから母は本当に事故なのかという疑問に陥る。関係者を探る母だが……。

【魅力①装丁】

三冊並んでいるが、左がカバー、真ん中が一冊目、右が二冊目。
青が出題編、赤が解決編と思って頂ければよいだろう。本書の登場人物が作った追悼集(個人が100冊作った冊子)を模しているため、表紙はザラザラした紙を使っている。このこだわりが美しい。

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【魅力②付録】

写真のように冒頭に地図がついている。この地図を見ることで登場人物の足取りがわかるというもの。他にも遭難者が出した絵葉書や作文も掲載。作者が新しいことに取り組んでいるのがよくわかる。こういったことができるのも単行本のよさ。内容も小説形式ではなく、関係者の手記を順に掲載する形で話が進んでいく。手記の形を取ることで、リアリティが増している。

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【魅力③北アルプス】

舞台は長野県、北アルプス。白馬岳や唐松岳といった私が登ったことのある山々。この周辺には登山やスキーによく通っていたため、想像しやすく惹きつけられる。上の写真の地図にも知っている名前がたくさんあり、懐かしかった。松本駅から白馬駅まで電車だと2時間もかかるのだ。ちなみに松本から新宿までは特急があるので3時間。登山好きの方や白馬地方にスキーなどに行ったことのある人に手に取ってほしい作品。

【まとめ】

職場近くの個人古本屋で見つけた。何気なく100円コーナーを見ていると折原一氏の単行本がいくつか並んでいる。最近並べたのか。著者代表作の「倒錯のロンド」と共に2作購入。「倒錯のロンド」は知っていたが「遭難者」は初めて見た。装丁を見て衝動買い。Amazonを見ると、残念ながら絶版の模様。単行本も文庫本も古本でしか扱っていない。
出題編の青い本しか読んでいないが、とても読みやすかった。
さぁ、これからの解決編を!