Hard Reboot by Django Wexler (2021)

最近では英語圏のSFでも巨大ロボットを扱った作品を定期的に見かけるようになった。2021年も何作か出ており、世評ではシーラン・ジェイ・ジャオのIron Widow(則天武后をモデルにした若い女性が巨大ロボットに乗って戦うらしい。未読)などが人気らしいが、筆者のおすすめは何といってもジャンゴ・ウェクスラーのノヴェラ、Hard Rebootである。

あらすじ

人類が地球から移民して幾星霜。人類文明の中心は宇宙に移り、地球は度重なる戦争によって荒廃していた。
テクノロジー考古学者のジクティキャス・スリーことキャスは、地球への調査旅行の一行に選ばれる。第三世代移民の子孫で、アカデミーでは立場の弱い彼女には降って湧いた幸運だった。だが、観光気分のキャスは地元の少女ジーに騙され、地球唯一の名物ウォーボット・バトルにアカデミーの金を賭けてしまう。ジーはパイロットで、ファイトマネーと賭け金の両方をせしめるつもりだったのだ。
しかし、ジーが試合に負けたことで目論見は潰える。賭けに勝ったキャスだが、アカデミーの金に手を付けたことを知られたくないがため、賭けを無効にしてもらおうとジーの後を追う。闘技場の地下深くにある秘密の格納庫で、キャスはジーと一体のウォーボットを発見する。ジーがアルファ・ゼロと呼ぶその機体は、地球の科学技術の絶頂期に作られた無二のマシンだった。
ジーはキャスの古代知識に目を付け、この機体を動かすために協力するよう要請する。一刻も早くジーと縁を切りたいキャスだったが、研究者としての好奇心と功名心に負け、協力を約束する。
こうして、凸凹なふたりの共同作業がはじまった……。

感想

あらすじを一読して「ガンダムファイト?」とか思ってしまうわけだが、これは日本のアニメにも造詣の深い作者の思うつぼだろう。実際、このインタビューではガンダム派生作とコードギアスの影響について触れている。

特に意表を突いた展開はないが、キャラクター同士の関係の変化やストーリー展開が過不足なく書き込まれている。それにロボットものの緩急というのをよく心得ていて、どこでピンチに陥るか、どう逆転するかが実に自然で心地よい。まるで短めの劇場版オリジナルアニメ(たぶんウォーボットの戦闘シーンは3DCGでぐりんぐりん動く)を観たような読後感すらある。

作者のジャンゴ・ウェクスラーは専業のファンタジィ作家で、元はマイクロソフトでプログラマーとして働いていたという。エピック・ファンタジィの他にもJohn Goldenシリーズのようなテクノスリラーっぽいものも書いているが、書籍の長さのSF作品はこれが初めてはないか。アニオタとしての知見を生かして、こういう路線のももう何作か書いてみてほしいものだ。

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