【風の時代の養生学】おならでお困りの方に、ちょっとしたトリビア
実家に帰ると母がプップとおならをする。2〜3年前までは一応、「あら、失礼」の一言があったのだが、最近はもう何も言わない。
でもまあ、ときどき「や〜ね〜」と他人事のような言い方をしたり、「年を取るといろいろ仕方がないのよ」と言い訳したりすることもあるので、「出物腫れ物所嫌わず」と開き直っているわけでもないようだ。
実際、高齢になると腸内フローラの変化に伴う悪玉菌の増加、腹部の筋力低下や腸の乾燥による便秘、肛門括約筋の衰え、消化力の衰えなどなど、いろいろな変化が起こる。だからまあ、ある程度は仕方ないんだろうと思い、こちらもなるべく気がつかないフリをしていた。
ところが先日、久々に帰省して、朝食を一緒に食べたことで、おなら増産の原因となる食のクセが判明した。
おなら増産の原因
①食べるのが早い
早食いをすると、食事と一緒に飲み込む空気の量が多くなり、ガスが多くなる。高齢者は食べるのが遅いというイメージがあるかもしれないが、元気な一人暮らしの高齢者は、テレビを見ながらあっという間に食事を終わらせている人がけっこう多い。噛まないことはおならにつながる。
②毎日、手作りのトマトジュースか小松菜のスムージーを飲んでいる
え〜、めっちゃヘルシーじゃん!と思うかもしれないけれど、これも噛まない食事になってしまう。噛まないことはおならにつながる。
噛まないとなぜおならが多くなるのか
私「おかあさん、トマトジュースも噛んだ方がいいよ」
母「飲めるのに噛まなきゃいけないの?」
私「噛まないと唾液が出ないから、消化が悪くなって、おならがでやすくなるんだよ」
母「へ〜」
うちの母はこれで納得してくれるのですが、もう少しだけ詳しく書きます。
咀嚼は食物を細かく砕き、飲み込みやすくするためだけではない。
噛むことで唾液が分泌される。唾液には多様な消化酵素が含まれている。奥歯でしっかり食べ物をすりつぶし、それが唾液としっかり混ぜ合わされることで、消化が促進される。
噛まずに飲み込まれた飲食物は、消化器の負担となり、未消化のまま腸に運ばれて停滞し、ガスを発生する。そしてさらに腸内環境が悪化する。
ちなみに中国の伝統医学では、唾液は「金津玉液(きんしんぎょくえき)」とよばれ、金や宝石のように素晴らしいものと認識されていて「仙人になるには、口の中を舐め回し、唾液を口いっぱいにためて飲む」なんてことも、伝えられています。
おならにお困りの方も、アンチエイジングを目指す方も、よく噛んで、しっかり唾液を出す食事を心がけてくださいませ。
母のその後ですが、次の日からすぐにおならが減り、お友だちにも教えてあげて感謝されているようです。よかった、よかったww。
年をとっても改善できることってけっこうあります。これって本当に仕方ないことなの?ってときどき考えてみるのも大切ですね。
こんな話題ですいませんでした。
沈丁花の香りを思い出して、気分転換してくださいませ。
参考:腸内フローラと老化 - 日本老年医学会 https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/perspective_53_4_318.pdf