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後三条天皇と隆国の三人の息子たち

今回は古事談の実況と魅力について語ろうとおもいます。
いや実況てどうすんのよ笑、と…まぁ本文に私がツッコム感じで気楽にやります!


王道后宮・六四
後三条天皇、隆国の子息三人を召し仕ふ事

(古事談ちくま学芸文庫の現代語訳より)

宇治大納言隆国は、後冷泉天皇在位の間、並ぶ者のない天皇のお引き立てを理由に、東宮(後三条)のために何かと非常に失礼なことがあった。よって、後三条天皇は即位後、長年の遺恨から、隆国の子息たちを何かの機会に罪に陥れようとのお考えであった。

ですって
あっ隆国は俊賢の次男なんですよ!ということはこの話、俊賢の孫たちの話なんです!

ふふっかわいいな後三条…復讐する気満々じゃないか…(怖)
隆国は頼通の側近かつ大変可愛がられていた。
頼通と確執のある後三条のこと…息子たちに復讐の機会を狙っていた…

お兄ちゃん!源隆俊


まず、権中納言隆俊卿が殿上の間に祗候しているとお聞きになり、小蔀から、殿上の間をそっとご覧になると、容貌体格が傑出している。着座の後、脇見一つせ
ず、笏を持って端座していた。

最初は三兄弟の兄隆俊!隆国と俊賢を合体させたような名前にニヤつく…
容貌体格がって、ガチムチ公卿しか想像できないのですが…?三兄弟の中では隆俊がハンサムなんだろうか。
ちなみに小蔀ってなんか良くわからんが、小窓みたいなものらしい。つまり、小窓から隆俊睨み付けながらのぞく後三条天皇、なのである。
控えめに言って、かわいい。(麒麟がくるでも「正徳寺の会見」で道三が信長を小窓から覗き見してましたね。あんな感じ?)

仕事ぶりはというと、日々精勤し、朝廷の仕事を一人で切り回している。その集中ぶりは回りのことが目に入らぬようである。
「末代には並ぶ者のない公卿である。もし召し使わねばこの上ない朝廷の損失だ」
とご覧になり、…

(切れが悪いので途中でぶったぎる)
祖父(俊賢)譲りな気がする、隆俊…
朝廷の損失だ~的なことは大鏡での俊賢が行成を蔵人頭に推挙するくだりのセリフに似てますね。


真ん中っ子!源隆綱

隆俊の弟、参議中将隆綱に目を移し、何かの機会がないかとお待ちになっていたところ、斎宮寮から、狐を射殺した罪についての報告があった。

まだ復讐する気なんか後三条()

公卿会議で隆綱卿は、筆をとって議定結果の定文を書いた。
「射た矢羽根が深く刺さったという知らせがあったが、(死ぬと自分が住んでいた丘の方に首を向けるという)狐が、死んだかどうかはいまだはっきりしない。」
と、礼記を踏まえた文章をものした。これをご覧になった後三条は、感心なさった上、近習となることをさえお許しになった。

定文を書くのは参議の役割。
私はなんのこっちゃ分からない…が、きっと清少納言よろしく宮廷が好きな漢文を用いた当意即妙な返し、というやつですかね。
勉強好きな後三条なら
「なに!?礼記!?それ礼記だよね!?は?尊ッッ!!」
と目を輝かせてしまったに違いない。良かったね!


末っ子!源俊明

(なんだこの公卿らしからぬ格好は!?と前賢故実初見のころ思った。次の逸話から来ている!)

今となっては三男四位少将俊明に対して、本懐を遂げられようとお思いになっていたところ、里内裏である二条殿の焼亡があった。

まだ懲りないんかい後三条
(かわいい)

そうとは知らない俊明、たまったもんじゃない…

後三条は手輿に乗られ、建物からお出ましになったが、雑人たちが前庭に群がり入ってきて身動きがとれなくなり、座っていらっしゃることもできず、輿の上にお立ちになった。

後三条、ピンチ!!

その時、俊明朝臣は遅いタイミングでかけつけ、後三条が御輿の上に立っていらっしゃる様を拝見し、自ら弓をとって雑人たちをなぎ倒して回った。

な、な、なぎたおしてまわった??
…三國無双??戦国無双??

笑えるのは"遅いタイミングで"って書いてあるところ笑
原文は"すこぶる遅参して"
原文の方がおせぇぞ俊明!!って言ってる感じがする。
よくヒーローは遅れてやって来るって言うから…

雑人たちを追い散らした後、天皇はようやく輿に座られた。避難された後、後三条天皇は「今日の俊明の働きで恥をかかずにすんだ。わたしの帝運が尽きていないから、あの場に俊明が参入してくれたのだ」とおっしゃった。
こうした次第で、隆国の三人の子息はみな後三条の近習となり、肩を並べる人がいなかった。  ~終~

こうして三兄弟そろって優秀であることが分かった後三条。
醍醐源氏すごいだろ!!(ドヤッ)
そう、あの俊明の弓持ってシャキーン!ってしてる前賢故実、この古事談の場面だったのです!

振り返って見てみると、三兄弟の前賢故実はこの逸話から来てるんですね。考えてるな~といつも感心、面白い。


さて、この話の後三条天皇、とても人間味溢れていて良いですよね。
復讐しようと思ってたのにみんな有能すぎて、かえってこちらが感嘆してしまった。そして良き人材を素直に登用するリーダーの本質。

もしかしたらこれはビジネス本なのかもしれない…

ビジネス本は言いすぎでも、古事談には色んな人の逸話が揃っている。著者、源顕兼の古記録の読み取り具合もさることながら、そこをさらに肉付けしてもっと面白くしている。

古事談の魅力って、なんにも分からないところから読んでも面白話として捉えられるし、大鏡や栄花物語などの物語、小右記などの日記類を読んだあとも

あっ!ここの話、あそこのここ脚色したんじゃない?顕兼さん!

と、ネタ元探しもできるところだと思います。

たとえ全然違うと思うよそのネタ元、と人に言われたって、自分はそうだと思うからそれでいいんだ!と楽しみたい。

あとなんで顕兼がそんなところにあんな人登場させたんだろ?と妄想するのも楽しみ方の一つ。

栄華を誇った人も苦労した人も、彼の手にかかれば人間味溢れるいち昔の人。

肩肘張らずそう思えるからこそ、古事談の中の人物は生き生きとしているのだと思います。

顕兼自身、激動の平安末期~鎌倉初期を生き抜いた人生に彼らを重ね合わせたに違いありません。

あぁ…そう思ったら泣ける……泣けてきた…


実況…になったかどうかはまぁいいや
古事談って面白いね!とちょっとでも思っていただけたら幸いです。

古事談には醍醐源氏たちがいっぱいいます!俊賢が!めっちゃいますんで!
どの物語よりいますんでーー!!!!

…これが言いたかった笑
(めっちゃいるって俊賢が大繁殖してるみたいじゃないか)
古事談の俊賢も語りたーい!

それはまた次の機会に☺️

お読みくださりありがとうございました!









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