創作『よみがえるおじいちゃん』
おじいちゃんは旅立ってしまった。たぶん別の世界に。そう思うことにした。
痴呆症が進行し、みんなのことを忘れてしまったのだ。
抜け殻のように家を徘徊する毎日。僕たちは扱いに困り果てていた。
そんなある時だった。
強盗たちが僕たちの家に押し入ってきた。
強盗は容赦なく母を殴りつけ、おばあちゃんをも鈍器で殴ろうとした。その時。
強盗の身体が宙で一回転した。おじいちゃんが投げ飛ばしたのだ。
他の連中も何か叫びながら向かっていったけれど、おじいちゃんがかたっぱしから投げ飛ばした。
「よみがえった……あの時のおじいさんが、よみがえりおった!」
おばあちゃんがそんなことを言って歓喜していた。
おじいちゃんは昔、武術の達人だったという。
「どうした! そんなもんか! もっとかかってこんかい!」
強盗たちは全治三か月の重傷を負った。ちょっとしたニュースになったっけ。
僕の視界がぐるんと回る。おじいちゃんに投げ飛ばされたのだ。
おじいちゃんは今、90歳。今日も元気で、道場で僕を投げ飛ばしています。