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持続性GIP/GLP-1受容体作動薬『チルゼパチド』のまとめ
※この記事は医療従事者向けです。誤りなどがあればご指摘ください。
世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬である、チルゼパチドが3月15日に薬価収載されました!
2.5mgおよび5mg製剤は23年4月18日、その他の規格は6月12日に発売が予定されているとのことです。
恥ずかしながら、GLP-1の作用機序はわかるものの、GIPってどう効くのかが理解不足だったので、この機会にまとめてみました。
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チルゼパチド(商品名マンジャロ)の基本情報
規格:2.5mg / 7.5mg / 10mg / 12.5mg / 15mg
適応:2型糖尿病
用法用量:維持用量として週1回5mgを皮下注。ただし、週1回2.5mgから開始し、4週間投与した後、週1回5mgに増量。なお、患者の状態により適宜増減するが、週1回5mgで効果不十分な場合は、4週間以上の間隔で2.5mgずつ増量し、最大用量は週1回15mgまで
副作用:腹痛・悪心・嘔吐・便秘・食欲減退・重大なものでは急性膵炎・胆管炎など
半減期5−6日
チルゼパチドの作用機序
チルゼパチドは、GIP/GLP-1受容体作動薬です。
GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)およびGLP-1(グルカゴン様ペプチド)は、インクレチンと呼ばれるホルモンの一種です。
食事による糖質や脂質の摂取刺激によって、小腸下部のK細胞からはGIPが、L細胞からはGLP-1がそれぞれ分泌されます。GIP/GLP-1は膵臓ランゲルハンス島のβ細胞に作用し、インスリンの分泌を促して血糖値を低下させます。
GLP-1製剤と同様、単独では低血糖をおこしにくい製剤です。SU剤との併用下では低血糖に注意する必要があります。
マンジャロは、トルリシティと同様のアテオス注です。簡便に操作ができ、使いやすい製剤であると予想されますね。
なぜGIP/GLP-1の同時刺激が矛盾しないのか?
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勉強不足でお恥ずかしいですが、この製剤の情報が入ってきたとき、作用機序がパッと頭に思い浮かんできませんでした。
それもそのはずで、GIPは膵ランゲルハンス島β細胞に作用してインスリン分泌を促進しますが、同時にα細胞にも作用し、血糖値を上げるホルモンであるグルカゴンの分泌を促進するのです。
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しかしながら、それは私がGIPの作用をよく理解していないだけでした。GIPは確かに膵臓α細胞からグルカゴンを分泌しますが、この作用は空腹時や低血糖時には起こりますが、高血糖時には起こらないことが報告されています。
また、マウスにおける実験では、GIPは生理的濃度では肥満を誘導する働きをもつが、薬理的濃度では肥満抑制に働くことが判明しています。
そのため、GIP / GLP-1受容体の同時刺激によって、GIPを薬理的濃度にまで上昇させる本剤では、血糖値低下に作用することになります。
また、GIP受容体の刺激はレプチンの分泌をうながし、食欲を低下させる作用をもつこともわかっています。
チルゼパチドはどのように使用されるのか
上記の記事より、チルゼパチドはデュラグルチド(トルリシティ)、セマグルチド(オゼンピック)よりも有意にHbA1c及び体重を減少させることが報告されています。
このように、チルゼパチドはBMI 30kg/m2などを目安に、既存のGLP-1受容体作動薬から切り替える形での使用が、当面中心となりそうだ。ただし、「GLP-1受容体作動薬の使用歴がなくても、BMI 35kg/m2以上など、血糖だけでなく肥満の改善も急がれる患者では、すぐに考慮したい」と大西氏はアドバイスする。反対に「サルコペニアの懸念から、高齢者への使用は慎重になるべきだ」と説明する。従って、チルゼパチドのメインターゲットは「血糖も体重もなかなか下がらない、中高年の肥満型2型糖尿病患者」(大西氏)と言えそうだ。
なにか誤りなどあればご指摘お願いいたします(._.)