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(18)負けない態勢-竹簡孫子 形篇第四

それでは形篇を読み進めてまいります。

【書き下し文】
孫子曰く、昔の善く戦う者は、先ず勝つ可(べ)からざるを為して、以て敵の勝つ可きを待つ。勝つ可からざるは己に在るも、勝つ可きは敵に在り。故に善く戦う者は、能く勝つ可からざるを為すも、敵をして必ず勝つ可から使(し)むること能わず。故に曰く、勝ちは知る可きも、為すべからざるなり。

【現代訳】
孫子は言う。「昔の戦上手の者は、まずこちらが負けない体勢を作り上げてから、敵が体勢を崩して容易に撃破できる状況になるのを待った」と。
 負けない体勢は自己の範疇ですが、敵を撃破することは相手の範疇です。
 したがって戦上手の者は、自軍が絶対に負けない体勢を作り上げることはできても、絶対に勝てる状況を自己の努力で作り出すことができないとするのです。それゆえに昔から「勝利の理屈はわかっても、勝利を意図的に作り出すことはできない」と言うのです。


孫子のいう負けない態勢とは、戦力が充実した「形」の状態です。

スライド15


負けない態勢、つまり戦力充実を維持することは自己の努力の範疇であるが、敵の戦力が消耗拡散して、隙を作り、我が軍が勝てる態勢になるのは、敵の範疇であるとします。

スライド17

戦さ上手の者は、自分を負けない態勢に置くことはできるとするが、相手に勝てる態勢を作り上げることは、相手の範疇にあることなので、できないとする。

スライド16

勝利は、自軍と敵軍の間で戦力差を作り出すことで得ることができるが、戦力差を作り出すことは、必ずこうすればできるとはしない訳です。

この構図に持っていくことは、「孫子」の正攻法です。
「正で以って合し奇で以って勝つ」の「正」になります。

地形篇第十では、正の兵法の応用例を述べるのですが、味方と敵の間で、戦力ケージを低減させる様々な要因を説明します。その前提は、自軍は「戦力充実の維持」を図り、敵軍は戦力消耗拡散をさせる形篇の考えが前提にあるのです。


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