(12)表裏の関係-竹簡孫子 作戦篇第二
作戦篇第二の解説もどんどん深く掘り下げていきます。この作戦篇第二で、「孫子」どんな奥義を教えてくれるのでしょうか。
それはあらゆるものが二重構造(階層構造)になっている。その階層の中でより本質である深い階層で間違いを犯せば、表面上では上手くいっていても、「存」→「亡」に変わってしまう。オセロのように表裏が簡単にひっくり返ってしまうということです。
戦いにおける有利な態勢「生地」、不利な態勢「死地」、これは戦力の虚実(戦力の充実)によって作り出されます。戦力の充実は、補給物資などの充実で、「佚」(お腹いっぱい)と「労」(空腹/疲労困ぱい)できます。補給が上手くいくには「国力」が充実していることが不可欠です。そして国力が充実するには国民の家計が回っていることが不可欠です。
このようにいくつかの階層の中でどこかで過不足を起こすことで、プラス(陽)がマイナス(陰)に転化します。
「孫子」では、国家経済を維持するための方法として、二つの変数を教えてくれます。一つは「期間」、もう一つは「物資」です。
期間が長ければ、戦争で必要な総物資が跳ね上がります。国から物資を運ぶ場合、「孫子」では20倍の価値があると述べていますから、国民の家計の負担は尋常ではありません。故に「物資」を適地調達する。
「期間」と「物資」をコントロールすることで、国家経済、国民の家計にダメージを与えないように、軍隊の戦力を維持する。
そして先に国力が尽きたのか、戦力維持ができなくなった軍が「勢」を失い負けるという訳です。(孫子は、勝利は意図して手に入らない、負けない態勢は自分で作り出せるというスタンスです)
「孫子」では将軍にとって「智」がもっとも重要な能力であると計篇第一の解説で述べさせていただきました。
それはつまり、様々な階層で「利」と「害」を両面を考慮できるということです。仮に自軍が戦場で戦力を充実させ、目の前の敵に勝利を収めたとしても、それが国家の経済にダメージを与えていれば、隣の国に攻められてしまうということです。
「孫子」の奥義とは、いってしまえば、複数の階層構造で両面思考するという事です。
複数の階層すべてで、お金、物資、兵数、戦力などを上手く切り盛りするにはどうしたらよいでしょうか?
そのための方法が謀攻篇第三で述べられます。謀攻篇第三は、戦略の方針について述べている篇です。