【長編小説】(2)青く沈んだ夜明けの向こう
あの明け方の世界で長い時間を過ごした感覚はなかったが、元の世界に戻ると太陽は天蓋の中天を少し過ぎたところにいた。大通りでは昼食を終えたサラリーマンたちが、揃って暗い顔をしてオフィスに吸い込まれていくところだった。
夜道を追いかけてきた借金取りたちの姿はない。そもそも、夜道がない。太陽は細い路地裏の末端まで明るく照らしていて、裏社会の住人たちは光の届かないところで身を隠している。
満たされた胃に血液の多くを持って行かれてぼんやりとした頭で家路を歩いたが、怒号を発するガラの悪い男