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SE、人事、デザイナーと職種を変えてきた私が、経営の大学院に行くということ:M1春学期振り返り

M1前期生活のストレスを、noteを書くことによって発散させてから3か月がたちました。時が経つのが早すぎて、恐怖しかありませんw

このままぼんやりしていると、あっという間にM2になってしまいそうなので、ひとまずM1春学期の振り返りを書いてみます。


1.年間スケジュールと時間割

1-1.年間スケジュール

全体のスケジュールはこんな感じです。実質、学校に通うのは半年ほど。

4月8日(土)~7月7日(金)春学期
7月8日(土)~7月21日(金)春学期補講期間
7月22日(土)~9/30(土)夏休み(夏季集中講義あり)
10月5日(木)~12月25日(月)秋学期
1月16日(火)~1月29日(月)秋学期補講期間
1月30日(火)~3月31日(日)春休み

1-2.時間割

実際に私が受講した科目はこんな感じです。

M1春学期に受講した科目の時間割

黄色い箇所はオンライン青い箇所は対面です。
平日がオンラインのみだったのは、体力を温存するのに本当にありがたかったです。

1-3.取得した科目数

私の行っている学校は、ゼミ以外の講義は20単位(=10科目)が修了要件です。

私の場合は春学期と夏季集中講座で12単位(6科目)
秋学期で8単位(4科目)の予定のため、
M1で必要な単位は取り終わる想定です。


1-4.その他、大学院に関する前提

私は、YBS(横国MBA、横浜国立大学大学院 国際社会科学府 経営学専攻 社会人専修コース)に通っています。

多くの学校は少なくとも同期は30人、多い学校だと300人ぐらいいらっしゃると思います。

ですが、私の学校の同期は14名です。超少人数制

2つの演習(ゼミ)に分かれており、1つの演習に7名が所属しています。
演習Aのテーマは「イノベーションの普及戦略」、
演習Bのテーマは「日本式オペレーションの再考察」。
そのうち私は演習Aに所属しています。


2.科目ごとの振り返り

自分のとった科目ごとに、概要と振り返りを書いてみます。

2-1.経営組織論

ジェフリー・フェファー先生による「影響力のマネジメント」の輪読です。
毎回該当章を誰かが読んでサマリを作成し、別の方も読んで問題提起をするといった形式で進めます。

この本は、社内政治に関するさまざまな実践事例が記載されており、パワーの源や影響力の高め方について書かれています。翻訳が読みづらいのが難点です…。

多くの企業に社内政治があるのはわかりますし、それ自体にいい悪いはないのでしょうが、自分の会社の場合は変革を推し進めていった結果、情報の透明性があがり、結果として社内政治があまり機能しなくなったと感じています。その方が組織としても健全だと思っており(=社内政治に時間を使うより、顧客のニーズを満たしたり、社会をより良くする方向に力を使う方がよいと思うため)、この本が書かれたその次の世界に自分はいるように感じました。

ITも社会も人の価値観もこれだけ変化が早いと、数年前なら「本質だ」と思ったことも変わっていってしまう可能性があるということも感じました。「すでに出現しているより良い実践を、もっと社会に拓いていく必要があるな」と、気持ちを新たにさせてもらえたのがこの科目です。


2-2.サステナビリティ・マネジメント

サステナビリティがどのように企業活動と融合していったのか、その歴史を紐解き、これからの未来について考える科目です。

私自身、生活者を起点としたサステナビリティのワークショップを開催したり、自社がサステナビリティを起点とした新しい事業モデルを展開していることもあり、高い関心をもってこの科目を受講しました。

サステナビリティに関する規制の歴史が複雑で、すべてが理解できたとは言い難いですが、とにかく面白かったです。ESG、TCFD、マテリアリティ、カーボンプライシング、統合レポートなどに関心のある方におすすめです。

特に、外部講師としてサステナブル・インベストメント・オフィサーの方が来てくださった回はとてもおもしろかったです。サステナブル投資のリアルの一片を知ることができました。

サステナブル・インベストメント・オフィサー(右上)の方の講演にて


2-3.マーケティング・アナリティクス

R言語を使い、実際に手を動かしながら統計を実施することで、定量分析にチャレンジする科目です。提出するレポートが2つあり、自分自身でアンケートを設計し、データを取得して分析するレポートと、自分なりにビジネス課題を設定して分析するレポート(データは使えるなら自社のデータでもいいし、オープンデータでもよい)の2つがあります。

分析テーマと仮説を立てるところから始めるので、大変ではありますがかなり力がつく科目だなと思いました(私が学士が心理学で、定量で卒論を書いています。そのためある程度地の利はある状態でこの科目を受講しています)。

私自身、大学院では定性研究になるため定量研究は行わない予定ですが、この科目を受講することで、他社のさまざまな定量データを難なく見ることができるようになりました。


2-4.リサーチ・メソッド

研究をする上で、最低限知っておくべき研究法の全体像を理解するための科目です。研究テーマの探し方、論文の見方から始まり、定量データの扱い方や統計、定性研究法までを学びます。

こうした研究法のオーバービューを学ぶ機会が今までなかったので、「大学時代に受講できていたらよかったな…」と思いました(もしかしたら実は大学時代も受講していて、自分が忘れているだけなのかもしれませんが)。

途中、デンマークの大学で経営学の博士課程にいる方が講演をしてくださる機会がありました。研究内容は、「研究の生産性を高めるためのリーンモデルの活用」について。

リーンやカイゼンは製造業のイメージが強いですが、それらを「研究」に当てはめて考えている点がおもしろいなと思いました。本当にいろんな研究があるんだなぁ…。

2-5.グローバル・マネジメント

担当の先生の研究内容の共有と、定性研究の詳細について学ぶ科目です。グローバル・マネジメントというタイトルとは少し離れている印象がありますが、この科目を取らなったら私は定性研究を理解することはなかったと思います…。

そしてこの科目、1日目から「自分の執筆中の論文で”おもしろい!”と言わせる要素は何か?どのような”世間一般に考えられている事象”と異なるのか?」を一人ひとり発表するというアクティビティがありました。

入学してまだ1週間、4月8日のこと。
これが大学院の洗礼なのか…」と心の中で思いましたw

定性研究に関するレクチャーは、こちらのサイトに担当の先生の資料がまとまっています。

この授業の根幹となる部分を以下に抜粋します。

Larsson and Lowendahl (1996)は,定性研究のどの研究戦略が組織研究者にとって支持され,実際に使われているか調査を行いました.

Academy of Management Journal,Journal of Administrative Science Quarterly,Organization Science,Strategic Management Journal を経営学におけるトップジャーナルと定義し,その中から1984年から1994年の間に出版された12本の定性研究論文をメタ分析しました.その結果,下記の三つの文献を引用することで自らの方法論の正当化を図っていることが明らかになりました.
Glaser, B. G., & Strauss, A. L.(1967). The Discovery of Grounded Theory: Strategies for Qualitative Research: Aldine.
Yin, R. K. (1984). Case study research: design and methods: Sage Publications.
Eisenhardt, K. M. (1989a). Building Theories from Case Study Research. The Academy of Management Review, 14 (4), 532-550.

経営レクチャーシリーズ第1回
研究戦略としてのケース・スタディ―ケース・スタディとは何か

上記に掲載されている、Glaser& StraussYin、さらにはEisenhardtのスタイルを知ることで、定性研究自体の理解を深めていきます。

特に以下の論文を読むことが理解の助けとなりました。
どちらも、Eisenhardtが執筆した論文です。

Making Fast Strategic Decisions in High-Velocity Environments
Kathleen M. Eisenhardt
The Academy of Management Journal, Vol. 32, No. 3 (Sep., 1989)

Building Theories from Case Study Research
Kathleen M. Eisenhardt
The Academy of Management Review, Vol. 14, No. 4 (Oct., 1989)


Glaser& Straussについては、以下の本を読み進めています。
夏休み中に読み終えたい…。


定性研究は、普段自分が実務でやっている「デザインリサーチ」に近いなという印象です。
授業内で、とある経営者のスピーチおよび二次データをもとにコーディング(文字テキストデータに対して一種の小見出しをつけてゆく作業)する練習も行いました。
具体的なコーディングの方法は、こちらの本に詳しく書かれています。



また、5月にはメキシコから来日したBazzara教授のセッションがありました。「マヤ文明とカイゼン」に関する講演で、こちらもまた「こんな研究あるのか…」と驚きました。


2-6.ワークショップ演習(ゼミ)

この授業の中で、自分の研究の進捗を報告します。
最初の1か月は自己紹介で終わり(笑)、5月から各自のリサーチクエスチョン、仮説、命題を話していくことになりました。
その上で、鍵概念または関連しそうな本を精読して発表するといった形をとっています。

いろいろと報告はするものの、自分の研究の進捗が進んでいるのか否かがわからず、だいぶ不安な日が続きました。

先生からは「論文を書くというのは創造的な行為。今は試行錯誤を楽しんで。進捗は十分進んでいるし、もしこれはまずいと思ったらちゃんと言いますから」と言っていただけたので、ひとまずこのまま歩んでみようと思っています。


2-7.アカウンティング(夏季集中講座)

これは現在受講中の科目です。
毎週土曜日の朝から晩までひたすらアカウンティングについて学びます。

PL、BSなどは面白いのですが、原価計算で落ちこぼれ気味…。
けれど、この授業に出ることで簿記の本を読めるようになりました。


2-8.全体を通して言えること、感じたこと

どの科目も面白く、とってよかったなと思いました。

授業を受けている最中は必死なので気づきませんが、授業が終わった後に関連する本を読んでみると、明らかに本が読みやすくなっていることにも気づきました

知らぬうちに、力がついてきているのだなぁと。


3.授業外の出来事

少しだけ、授業外の出来事も。

3-1.ジョブ・クラフティングに関するイベントへの参加

自分の研究にジョブ・クラフティングが関わってきそうなので、たまたまタイミング良く開催されたジョブ・クラフティング関連のイベントに参加しました。

ジョブ・クラフティングを研究されているさまざまな先生と会話することができ、非常にありがたい機会となりました。

ジョブ・クラフティングのイベントにて


3-2.ネコサークルへの入部

大学院入学の少し前、たまたまTwitterでネコサークルがあることを知りました。大学内にいる地域猫のお世話をさせていただきます。猫好きの自分としては「これは入るしかあるまい…!」と意気込んで、入部しました。

ネコサークルはものすごくデジタル化が進んでおり、「今どきの大学生は、こんなにデジタルを駆使してネコ様のお食事・体調管理をしているのか…!」と衝撃でした。

活動中に撮った写真は、ネコサークルTwitterに掲載していただきました🐈


3-3.先生や同期、先輩の皆さんとの交流会

春学期と夏季集中講座期間を合わせて、ゼミの飲み会は3回ありました。
それ以外に、M2の女性の先輩方が交流会をひらいてくれました。
ほどよい回数、ほどよい距離感が私には心地よかったです。


3-4.同期の方との春学期振り返り会

春学期が終わるときに、同期の方と自主的に大学院に行き、一緒にここまでの学びの振り返りをしました。

また、その時に大学院のさまざまな設備(ロッカーやコピー機、図書室など)についても調べました。毎週土曜日に学校には行っていたものの、朝から晩まで授業が入ってしまっていて、広大な学校を探索する時間がなく…。

特に「学校から近いコンビニ」がどこにあるのかわからず、大学に通い始めて3か月、初めて「10分以内で行けるコンビニ」を見つけることができました

自分の通っている大学は、「土曜日は学食も売店も休み」という社会人大学生にはなかなか厳しい環境(といっても、14名のためにわざわざ学食も売店もやらないよな…とは思います)のため、近くのコンビニを見つけたときには、砂漠の中でオアシスを見つけた気持ちになりました。


3-5.大学院近辺に住んでいる友人たちとの交流会

たまたま大学院の近くに複数の友人たちが住んでいることがわかり、素敵なカフェでご飯を食べることになりました。

いろんなきっかけが、また新たなつながりを生みますね。


4.よく聞かれる質問

大学院に行っている中で、よく聞かれた質問を以下に書いておきます。

4-1.仕事との両立、大変ですか?

大変です。なんとかはなるけど、やっぱり大変w
私のように体力がない&器用に物事をこなしていくことが難しい人は、なおさらだと思います。

ペースを掴めたかな…と思った頃には、春学期が終わっていました。


4-2.毎週どれぐらいの課題がありますか?

全体でならすと、毎週何かしらの科目で課題は出ていました

科目によって課題の重さは異なりますが、マーケティング・アナリティクスのレポート提出間際は、切羽詰まりながらやっていました。

ただ、自分が行っている大学院はテストとグループワークがない(※)ため、自分でペースを配分することができています。

※ディスカッションはありますが、プロジェクトベースのグループワークはありません。自分自身、個人で考え個人でアウトプットを出して力をつけたかったので、できるだけグループワークのない学校・科目を選んでいます。

4-3.平日夜、夕飯どうしてますか?

授業前にさくっと食べています。そうしないと確実に太りますw
なんせ授業が終わるのは21時過ぎ。

夜間の大学院に通うことになっても、体調管理(食事・運動・睡眠)はしっかりやらないとなぁと思っています💦
何事も、身体が資本。

4-4.会社の残業と授業が重なったときはどうしましたか?授業を休んだりしましたか?

どうしても残業をしないといけないときは、大学院のない日にしていました。

また、会社のイベント等を優先させないといけないときは、先生に事前にお伝えして、休んだ分のキャッチアップ方法を相談しました。

ある土曜日、大学院には行ったものの、体調が悪くて途中で帰ったこともありました。無理せず休むことも大事

私は春学期に6科目とりましたが、5科目(サステナビリティ・マネジメント以外の科目すべて)で1回ずつ休みました


4-5.春学期中は全然余裕がない感じですか?

これは取る科目数にもよると思いますが、ゴールデンウィーク中に1日だけ日帰り旅行をすることはできました。

ちなみにお盆はnoteを書いたり、個人の仕事をや研究を進めることで、すべてが溶けていっておりますw


4-6.春学期が始まる前に何か準備しましたか?

リーディングリストが配布されたので、それらの本を購入し、ざっと読みました。ゼミごとにリーディングリストが異なります。私のゼミでは以下でした。

オープン化戦略 -- 境界を越えるイノベーション
カイゼン 復刻改訂版: 日本企業が国際競争で成功した経営ノウハウ
ガイダンス 現代経営学 
マネジメント研究への招待

入学前に連絡のあったリーディングリスト


また、大学院に入るためのツール群の準備も行いました。


それ以外に「大学院に行ったらなかなかできそうにないこと」を行いました。
例えば、
・沖縄にワーケーションに行く
ヴィパッサナー瞑想に行く
・上司に合格祝いとしてお寿司をおごってもらうw

などです。

自分は2020年にMBA Essentials(アドバンスコース:経営戦略、事業戦略)、2022年にグロービスの単科受講(経営戦略、マーケティング、テクノベート)を会社で受講する機会があったので、経営学の(ものすごーーーーく薄い)地図が頭の中にあった状態で入学しました。

実際に自分の通っている大学院では「ザ・MBA」というような企業のケーススタディを起点に議論しあう科目は少なく、自分も取っていません。

大学院のカラーが実務応用系というよりは研究者養成向け(だと思います、たぶん)だからなのかなと理解しています。


5.秋学期に向けて

秋学期は会計関連の授業が多く、どうにか今のうちに会計のベースを整えておこうと思っています。

なかなか思うようには進みませんが、想定内のことしか起きないなら大学院に来る必要もないのだろうなぁと。

不確実でグラグラしているこの道、上等。
終わらないレポートも、どんとこい。


たくさんの不安と楽しみを両手に持って、これからもずんずん歩んでいきたいと思っています。


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