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【後編】人の成長を生み出す企業カルチャーのつくり方。

✔データサイエンスカンパニーの株式会社サイカが、社員に求める行動規範(バリュー)として「XICA WAY」を設定。
✔「XICA WAY」の社内浸透に向けたワークショップの企画・運営をナラティブベースに依頼。
✔ナラティブベースが、自社やお客様の課題解決の実践のなかから生まれた「ナラティブ・アプローチ」の手法を用いてマネージャー向け→全社向けのステップで「ナラティブ・ワークショップ」を実施。

 サイカ代表平尾様とナラティブベース代表江頭の対談の後編をお届けします。

前編では、サイカ代表平尾様に、サイカのバリューであるXICA WAYはどのように生まれたか、それを全社に浸透させ社員全員がジブンゴト化していくためのワークショップ伴走者として、なぜナラティブベースを選んだか、などを語っていただきました。そのなかで、背景にあったナラティブベースでの実践や、両代表の意外な接点も浮かび上がりました。

後編では、XICA WAY全社浸透のための「ナラティブ・ワークショップ」が実際にどのように行われたか、から振り返り、そうした取り組みから見えてきた、人の成長を生み出す企業カルチャーのつくり方についても意見交換しました。

<半年間のプロジェクトの流れ>

1.マネージャー向けナラティブ・ワークショップ
■目指すゴール
・マネージャー全員が「XICA WAY」を自分の物語として意識できている
・行動規範を受けた具体的なDoを共創・更新し、全社浸透に動き出す準備ができあがっている
■実施の流れ
①マネージャーを3グループに分け、各2回のオンラインワークショップを実施
②マネージャーと役員全員での全体ワークショップを実施

2.全社向けナラティブ・ワークショップ
■目指すゴール
・「答えのある議論」ではなく「正解のない対話」を社員全員が体験しその価値を体感してもらう
・現場のエピソードを部門ごとに話し「共通言語」につながるキーワードを抽出する
■実施の流れ
①部署横断グループで、共有の練習・対話の体験をオンラインで実施
②部門別グループで、各自のエピソード交換などをオンラインで実施

あえて“ひっかかり”をつくるファシリテーションが印象を残す

XICA WAYを現場に浸透させる第一段階として、まずマネージャーがジブンゴト化し、自分の言葉でXICA WAYを語れるようになるための「ナラティブ・ワークショップ」が実施されました。

――ナラティブベースの実践知を、社風の異なる会社に対し、どのように応用していったのでしょうか。

【ナラティブベース 代表 江頭春可 ※以下、江頭(ハル)】 最初からサイカの世界観を理解することは難しかったのですが、ワークショップをファシリテーションするなかで、平尾さんの生い立ちや極真空手の話を伺うなど、参加者の皆さんのお話から徐々に理解が進んでいったように思います。

なかでも私がピンときたのは、「ペイパルマフィアみたいな人材を輩出する会社になりたい」という話が出たときですね。サイカという“場”で社員がどんどん才能開花していき、会社の外に出ても活躍するようになる。そんな、会社の枠組みにとらわれない世界観をもつ集団なんだ!と思い至り、テンションが上がりましたね。

――平尾さんはマネージャー向けワークショップは全回(グループごとに6回実施)に参加しご覧になっていたそうですね。

【サイカ 代表取締役CEO 平尾喜昭さん ※以下、平尾さん】 はい。その様子を思い出すと、ハルさんにとって、あのワークショップは演劇の舞台をつくるようなものだったんではないでしょうか。ごく真面目なテーマであっても参加者の背景やナラティブを加えて面白い名作にしていくかのように、演出家のような感覚でファシリテーションしていたのかな、と。

【江頭(ハル)】 そうですね。いろんなファシリテーションのスタイルがあり、そのスキルの解説本も多数ありますが、私のベースにあるのは相手の物語への関心です。なので、場の目的にもよりますが、自分がひっかかったり、面白いと思ったりしたことには、積極的に介入していくほうですね。

【平尾さん】 その介入ポイントも独特ですよね。話に論理的な矛盾があったときに介入するという人は多いと思うんですが、ハルさんの場合はそこじゃない。それは、いわば面白い台本を作るような作業だったからじゃないでしょうか。「面白い舞台をつくるにはまだ足りないぞ」と感じたポイントで質問を入れ、参加者の考えを解きほぐしたり深掘りしたりしていくような…。

【江頭(ハル)】 図らずもそれに近い作業だったのかもしれませんね。物語は必ずしも論理的にクライマックスを設定するものではなく、観る人によって「あのやりとりが泣ける」とか、「あのシーンが自分の経験と重なる」とか、ハイライトは異なるものです。そんな個人的にエモーショナルな部分を紡いでいくことに、私はついこだわってしまう。その感覚がワークショップにも、戦略的にではなく、自然と表出したのかもしれません。

【平尾さん】 それ、今回のワークショップでは、めちゃくちゃ重要だと思います。

一般的にバリューの文言は非常に整合性が取れているものですが、それゆえプラスチックな感じというか、何のひっかかりもなく流れちゃう面もあって、それも「バリューが形骸化しがち」という問題につながっている気がします。例えば映画でも、論理構成がパーフェクトな作品は「どんな話だったっけ?」と印象に残らず、何かひっかかるシーンがある作品のほうが心に留まりますよね。

XICA WAYのジブンゴト化にあたっても同じなのだと、ナラティブ・ワークショップだからこそ気づけたと思います。理路整然とした意見交換で終わるのではなく、まさに参加者それぞれのナラティブを大事にしながらひっかかりをしっかり残しにいこうとする。そんなファシリテーションができるのは、御社の大きな強みですよね。

【江頭(ハル)】 確かに、人の話は“ひっかかり”があるほうが引き込まれますよね。そして、そんな凸凹やいびつさがあるからこそ、トランポリン競技が1回へこんで大きくジャンプできるのと同じように、その人の成長やステージアップに関係しているように思います。

<ナラティブ・ワークショップの様子>

体験重視のワークショップで、ナラティブ(対話)のある職場づくりへ

――そして、今度はマネージャーがファシリテーションにも入りつつ全社員を対象としたXICA WAY浸透ワークショップが実施される流れとなりました。こちらもナラティブベースに設計や全体ファシリテーションをご依頼いただきました。

【平尾さん】 マネージャー向けワークショップがとても良かったので、ごく自然な流れで全社向けもお願いすることになったと記憶しています。

【江頭(ハル)】 続けてご相談いただけたのはたいへん光栄です。

全社向けワークショップの重要な役割の1つが、XICA WAYが浸透する土壌づくりとして、対話の習慣化に向けて「対話を体験してみる」ことでした。「やってみたらよかった」という体験になるよう、企画には偶発性や遊び的な要素を取り入れることにも力を入れたつもりです。

ナラティブベースでは私を含めた4人のチームでプランニングやファシリテーション、ワークショップ運営を担当させていただいていましたが、後半の全社向けワークショップではナラティブベース側のチームメンバーもサイカさんのカルチャーへの理解が深まり、「対話しやすい環境づくりのために、あんな工夫も、こんな工夫もしたい!」とさまざまなアイデアが出てきて、盛り上がりながら設計していました。

実際に開催してみると、このワークショップがサイカの皆さんにも“ナラティブの場”として受け入れられてきている感触がありました。皆さん、どんなアウトプットを出すかよりも、その場自体を楽しんで体験することに重点を置いてくださっていたように思います。

半年に渡る連続のワークショップで、狙い通りに体験が少しずつ日常化していったかと思います。ひいてはナラティブ(対話)のあることがサイカさんのカルチャーになっていったら嬉しいですね。

「XICA WAYはみんなでつくり続けるもの」という気づき

――一連のワークショップのなかで、特に印象的だった場面はありますか。

【江頭(ハル)】 私はマネージャー向けワークショップが終わったとき、平尾さんが「XICA WAYに完成はなく、今後もみんなでつくり続けていくものなのだということがわかった」とおっしゃったことが強く印象に残っています。

自社でパターン・ランゲージをメンバーとともにつくっていくなかで、まさに私も平尾さんと同じ思いに至ったんです。ナラティブベースでうまくいった部分が、サイカさんでも少しは再現できたのかもしれない、と思えて嬉しかったですね。

【平尾さん】 今のお話で、心理学のツァイガルニク効果を思い出しました。人は完了・達成したことよりも、作業途中や未達成のことのほうが、緊張感が持続してよく覚えているそうです。バリューのようなものを浸透させる際も、完成形として下ろすのではなく、作成途中のものとして共有することが大切かもしれません。

そんなふうにXICA WAYに完成はないということがわかり、静的ではなく動的なものとして進化させられたのは、ナラティブ・ワークショップだからこそできたという感じがしますね。

――実際にXICA WAYの中身は変化しているのでしょうか。

【平尾さん】 はい。まずマネージャー向けワークショップの対話を終えた後、マネージャーから出た意見を活かしてXICA WAY12項目のうち半数の表現や説明を修正し、また各項目がどう関連しあっているのかを表す相関図も見直しました。その後、全社向けワークショップの後も、メンバーの視点も活かしてさらに修正しています。今後もこのように、少なくとも年1回は更新していきたいと思っています。

<最新版のXICA WAY 構造図  ※前編にも掲載>

【江頭(ハル)】 対話によるXICA WAYの更新の工程が、才能開花の土壌をつくっている。素晴らしいことですね。

「未完成」が止まらない会社をつくり出し、人を成長させる

――XICA WAYは社員の才能開花に向けた取り組みの一環だというお話でしたが、人の成長を生み出すカルチャーをつくるにはどんなことが大切か、お二人のご意見をお聞かせください。

【江頭(ハル)】 先ほど平尾さんがおっしゃった「完成がない」は、非常に重要なポイントではないでしょうか。

会議1つとってもそこに誰がいたかで全く違った展開になるように、会社の成長でも社員の成長でもそのプロセスにおいて、それに関わった人の痕跡は必ず残ると思っています。相互の関わりが人の力やモチベーションを引き出し、さらには資質がにじみ出ていくような才能開花につながっていくものなのかなあと感じるんですよね。

ですから、まず未完成であることが重要で、それをつくっていくプロセスに関われるということが、人を成長させるのかなと、本日のお話のなかで改めて感じました。

そういう意味で、サイカさんの人を成長させる土壌は、大きく進化しているのではないでしょうか。

【平尾さん】 確かに、人の成長を生み出す企業カルチャーをつくるには、思考し続ける・感じ続けるということが大前提だと思います。それを止める会社に未来はないでしょう。だから、止まらない。それが、人の成長を生み出すし、生き続けることになる…。

ふと、学生時代、宮大工の方に聞いた話を思い出しました。宮大工は千年以上の歴史のなかで伝統技術を継承してきたわけですが、「同じものを作り続けるコツは何ですか?」と聞いたら、「変わり続けることです」と。つまり、資材は常に変化しているので、同じものを作るためには、職人の技術や対応を変えるしかないという話で、「なるほど!実はずっとイノベーションを起こし続けていたのだ!」と感銘を受けたんです。

企業のカルチャーも同じで、変わり続けることが前提なのかなと思いますね。

【江頭(ハル)】 「生き続ける」という言葉、しっくりきました。最初にお話していた「形骸化」と真逆のことですよね。変わらないように見えても、そこには関わる一人一人の息吹のようなものが必ずあって、それを大切にすることが対話なのかもしれません。

これからのXICA WAYとXICA EXの益々の進化に期待しています!
本日はありがとうございました。

主に関わっているナラティブベースメンバー
江頭 春可・中澤 利恵・石橋 奈津子・木本 文絵

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