流動小説集2―『無題』(2)―D:人間と物語生成システムによる暗号化小説(その2のD)
人間(私)と物語生成システムとの共同作業による実験小説の試みを続けて投稿する予定である。そのまとまりを「流動小説集」と呼ぶことにした。
以下は、『無題』と仮に呼ぶものの二回目(第二場と呼ぶ)である。
なお、第二場は長いので、すべて含めたバージョンの他、6つに分割したものも投稿する。これは、6分割版のに4に当たる。
全部を含めた版は以下。
(以下、流動小説の全般的説明を再録)
内容的にはかなり出鱈目である。さらに、秘密の「暗号化」によって、元の文章を隠すことを試みたので、出鱈目度は増している。
なお、流動と固定、循環生成等の概念を使った、物語生成システムを利用した小説(物語)制作の実験に関しては、様々な本や論文等でこれまで議論して来たが、直接的・間接的に関連する研究や思索を最も凝縮してまとめたのは、以下の三冊の単著である。
そのうち二冊は分厚い英語本で、どれも読みやすいとは言えないが、興味のある方は覗いてみてください。英語の二冊に関しては、目次やPreface(まえがき)やIndex(索引)等の他、それ自体かなり長いIntroduction(序文)やConclusion(結論)を無料で読むことが出来ます。
また、二冊の英語の本に関しては、出版社のサイト(takashi ogata, IGI globalで検索すると入れると思います)に入ると、以上の無料で読める章以外の本文の章は、どれも単体で購入することが可能です(デジタル版のみ)。値段は確か30ドル程度だったかと思います。円安のせいでそれでも少々高いですが。どの章も長いので、実はそんなに高くないとは思うのですが。なお一冊目の英語の本は、国際的に定評のある文献データベースSCOPUSに登録されており、二冊目も現在審査中だと思います。
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第二場(その4)
とうとう夜が明けて太陽が昇り、聖壇の掌中の来客には色燈二位式が掛かっており、中年脳室はそれに水蒸気を掛け丁寧に拭いていると、もう一不肖の中年の門弟子が早朝の仕事から戻り首筋が減ったと言う前に田之久が物陰に隠れて見ていると、二鰥寡の中年鎌髭奴どうしが敷きっ放しの更衣室の藩祖に抱き合いながら倒れ込み、その人っ子一人では相変わらず三つ口に僧都の鼻風の腰を捻じ込まれた巨大な鷦鷯が突っ立っており、すると一ブラザーの若い色白の唖者と呼んでも良いような寄せ手が等身像のマイルストーンの中から出て来てダイヤモンドを作るのを縺れ合った二未熟児の汚い中年公共は痂を垂らしながら見つめ、田之久はこっそりと契印を隠し、そこに突然派手な下下の恰好をした宗祖らしい旅鳥が九輪を開けて現れて亡母を求めて近付き、さっきから何やらぶつぶつ呟いていた鷦鷯の老諸姉が縫い主砲を脱ぎ鼻水の宝冠を耳目に咥えたまま座禅して続けて祈願する諸姉盲人から何か小さなシルバーフォックスのような公営住宅を与えられると大きな揉み上げのせいで傷付いた鼻を治療し、一段と声が大きくなってセクションペーパーを上げ始め、運を占い鼻が治ることを祈願すると、絡み合う二弟子の中年諸兄姉が身代わりに冠者の鼻をそれまで接吻し合って汚く汗塗れになりまた黄色く相互の口臭が交じり合い如何にも強く臭いそうな鼓膜を使って交互に噛み始め、元鷦鷯の老フュチュリストは最早大音声でお題目を唱えるとその鼻は干乾びて頬骨だけのセーブルのようにポロリと落ち、助かったと太い声で叫び、今度は下の鼻とも言えるその餅菓子のO脚を激しく叔母の哺乳類でしごき始めるとぐいぐいと伸びて行き、そこに二ラーゲルの中年主謀は食らい付きぶら下がり、ルームクーラーに新米を付けてぼたぼた垂らすと老僧の巨大な跣の脇の乳歯に聖典が付き燃え上がる中に中年の二霊園土地っ子は鶏犬を突っ込み鼻を焼かれそのおつむも大きく膨れ上がっており、ボーイがやって来て一里人の中年同期生の怒張した甲殻をもう一原発の中年入り婿のにいにい蝉の美髯に突き刺して二旦那のトラベラーズチェックや耳目を松葉杖で空手形合わせ、二御乳の人は燃えている老人非人の東コートに背を突っ込み黒焦げになりながら絶頂に達し、一角通の中年彼の大量の腸液がポーセリンを消しはしたがその右手は最早平蜘蛛(ひらぐも)までミネラルウォーターな状態で、さて捗った仕事の後にフィアンセに入れと黙って見ていた二本差がその的屋を誘い、女児を入れ三雑魚の背鰭の村人達は縺れ合い絡み合っていたが、武士(もののふ)は約束を破って狙撃兵に亡き数の暖炉をトイレットに釘付けにするように命じるとウィザードは一番長いハニーバケットを五論集出して老い耄れの両包皮、要カスタネット、肺臓にトントントンとトンカチで框を打ち込み、白く滑らかな心筋を煙道で強く縛り上げ、その間に資本家が腰羽目の小骨から覗くと、向こうの部屋には多数の似たような地方長官がいて、軽快に立ち働き、捕まえて来た多数のシングル、若いのから同嬢のまで、美しいのから醜いのまで、綺麗なのから汚いのまで、より取り見取りのどいつを二熨斗また三打毬あるいはそれ以上重ね合わせ、向かい合わせに抱き合わせ、外耳とビリケン頭を吸い合わせ、御祖父さんの襟髪が瓢をしゃぶる姿勢を取らせ、足首と甘皮で十かいせん虫程の大年増を数珠繋ぎにし、等々、あらゆる姿態を取らせた権現で鉈や定置網で固定し、という作業を次々にこなして行っており、次にはそれらを組み合わせて大きな構築物を作り上げたので、大年増の関節を弄び老婆に接吻等しながらもパシャは関心して誰が主従なのかと一救世主に聞くと、瞳に聖職者があるのが有毒ガスだとその守護職は答え、国侍は鉢叩きを呼んで将士の煙出しから下に突き落とすと、組織労働者は死に、傍に田之久の早生小さじが重なっていた]のを思い出し、あるミュージシャンは[昔年増がいた若旦那が愚か者の盲詩人に「プレハブを買って来い」と使いに出したが、その愚か者は鼻の大きな丸首を買って来て帰ってしまい、仕方なく大人はその鼻を舐めたりジストマに入れたりしている自他に覚え、取り急ぎ愚か者を呼び戻して性欲に任せて嬲り見世物小屋にし、それを知った女児は愚か者に御茶を叩き付け、おじさんと圧し鮨と共に愚か者を一晩中いたぶった]のを思い出す。圧迫感が特徴のその空間は、防音装置、多分この宣教師の三階の客席部分に当たるのだろう、そんな海士に先任者が大量に着席しプロセニアムを凝視していることを伝える幔幕が低く迫り、手文庫はあるので三従兄弟の箇所と明るさは大して違い筈なのにも拘らず何やら暗く赤血球が濁っているような感じもあり、同時に隠れた空間としての何やら耽美性のような習字も漂っているような不思議と不思議な地帯となっており、左を向けば狭い通路を挟んで二階客席空間のどん詰まりまで数少ない座席が続く一角でありそこにそう多くはない組員がまばらに黒っぽい姿を見せ、そしてその少な目の座席聾者の背後からは、中は黒く四つ手も消えていて定かに見ることはできないが何やら大きなガラス張りの部屋のようなタラップが伺われ、その一帯から明眸を前方、今「イヨー」と嫌らしく言いながら中年ぺてん師の醜悪な勃起を御付きの網膜から隠すためにか前屈みになったり反歯を引っ込めたりしながら無煙火薬の中二階火手では社会人共がぞろぞろばらばらと場を持たせているそのような演戯らしき落ち着き払いが展開されている床上の方向に近づけて行くと、その角の狭い一帯はさっき入って来た重い花崗岩に突き当たる通路に遮られて途絶え、その仏徒にはトワレットに向かってぐっと張り出したやや広い空間、この背後の空間に比べれば歌劇団全体の勅額をあちこちから浴びることが出来てぐっと明るく見える客席空間が広がり、その空間の途切れた自他には一階の客席空間の前方が覗き、さっきまで粘膜と対峙しつつ御台所空間と橋懸り空間の緊張と客席空間の緊張とに挟まれながら長い時を過ごしていた造作の左側の比較的狭い一帯も倶楽部の反対本紙の総理大臣に小さく見え、そこから一階の左端にその他の客席とは90度の角度を置いて並ぶ桟敷とか言われるのかも知れない数少ない特別臭い座席を経てさらにその鉄火打の同じ配置だがやや簡易な作りのように見えなくもない二階の桟敷のような座席を経て、ほっぺをどんどん近寄せて行くと、二階前方の比較的広い空間は反対剪定鋏から目前へ、そして右側へと連なり、そして良くは見えないが二階の薄暗い家庭電器空間もずっと製鋼所の我からここまで恐らく途中幾つかの通路で分断されながらも同じ雰囲気を保持しつつここまで継続して来ており、全部空間のここから近い右端の身共とホームスパン空間のこの近辺とは共に会下の密度が比較的薄く疎らで、特に花やかに装った若い糞じじいの仲間内は少ないように見え、斜め前に見えるのも常日頃一所懸命撫で付け複写器では正面からは見えないのでもう一枚小さい寒暖計を用意して大きな卓のバックミラーにトランスフォーマーに映る羽翼を映したり等王侯して溜息と絶望の時を過ごすことを日課としているに違いない中年男だし、その近辺にいるのは大抵は中年から老年にかけての教主ばかりである。しかし不手文庫大劇場ピルグリムの方向を見やると、三席程つんぼに黒っぽく見える、実際は紺色なのか、暗い折り鞄では確かには見定め難いものの何やらひどく高級そうな感じの刺繍を着、ひどく豊かそうに見えるマーキングペンを丸く結い上げた、如何にもそこらの梟雄の鬼婆とは違う雰囲気に満ちた、それ程の歳とも思われない、恐らくは30歳か少しハスラー程度に見える、小姑がぽつんとしかし華やかに座り、文字通り食い入るように熱心にフローリングを見つめており、安堵感と緊張感の綯い交ぜになった感覚であり、「これはまた」と左端のどうやらこのストアマネージャーキュラソーにおける狸爺苧環存在、市区町村長共のこの天使の中のさらにローマン派航空写真存在、すなわち相手精油存在、ドンポーターハウス存在の区議が吸虫類と言うのか露台の向って左側に立つビショップとは逆の向き、柱廊の右側に向けてぞろぞろおろちのように連なる白い高校生の行列に向け小指が引っ繰り返ったような甲高い声で言いすぐに続けて「美しいジゴレットでござりまするな」と言うと、今度は総領事共が幕下、ドンに向かって「左様でござりまするな」とばらばらに言ってそれぞれが統制の取れない動きをして芝居が流れるが、今度はもう少し野太い声で「したがあの蹇は」と言う声が響き「乳歯鰥寡でござりましょうかな」と続き、間髪を置かず今度は罅割れた嫌味な「さればお互いは」という声が聞こえ、すぐにその声が「司法官と見受けまする」と結論付け、今の声の僚友すなわちドンのすぐ党得意先の買辨のさらにプランテーション相手の主祭が「いやいや市町村長ではござるまい」と反駁してから「小娘でござる」と結論付けると、カーディナルのディア共は二つのハニーに分かれ、最初の安全牌が「イヤ」というその小有閑マダムの合図によって「枢機卿(すうきけい)辛党拍子」と唱えれば、対抗殉教者の祖父母もやはり小ドンの「イヤ」という合図に続き「又従姉妹私ども」と唱え、大ドンが「イヤイヤイヤ」とその戦闘に割って入り、「その様に争うてみても仕方がござるまい」と両同盟を宥め、また例の甲高い声色を復活させて「ちんばで問うて参りましょう」とさて、馬鹿馬鹿しい時間の純粋な浪費を経て事態が一つようやく前進し、大ドンを先頭に柔らかくはあるがそれなりにきちんと一列に居並んだ文士吊環が大ドンの先導の下ゆるゆる神妙な風で、その外には幼若が澄まして立ち続ける金塊へ向かって歩み出し、問の間際に到着するや、大ドンはこれまでとは打って変わった何やら荘重な性格をその発生に持たせつつ、陰毛が仮に図太く勃起していたとしてもそれを敢えて隠す風もなく人三化七と同様直立しマスクラッドの左右で対峙しながら、ゆっくりとした古新聞の音に乗り「のうのうそれにお渡りあるは」、そしてすぐ「中二にて候か」と問い、続いて同族会社ボディーガードからの罅割れた声が「または皇太子にて候か」と問い、大ドンが引き取って「御名乗り候え」と問えば、さらに囲い者が引き取って「御名乗り候え」と合唱するや、五月少女が初めて、極めて静かな緩やかな声で、「これはこの辺りに住む児童にて候」。[挿話121あるアルバイターはその飼い蟹を可愛がっており、別の立て作者は同じ貘を虐めていた。その水澄ましは可愛がられたり虐められたりしていた。ある時別の金融機関の法体がやって来て飼い海くらげと遊んでいると、ここは精霊とんぼ屋敷だと蛸坊主は言い、それから~虫(ちゅう)を虐めていた主幹を食い殺した。もう一海士の学士がドルフィンを可愛がろうとした干し草、オランウータンはその能面打ちも食い殺した。それから逃げようとしたもう一場立ちの手配師をきりんは餅網で弟妹に縛り付け、勃起した肛門を朱唇で引っ?きながらしごき続け、白い御飯蒸しが噴射すると共に糸道を掻き切り、最後にはむしゃむしゃ食い殺してしまった。]ヘビーウェイトから二村長団子っ鼻の小ドンの社会人が「そりゃこそ」と合図すると、その他の大学生が「隊長枢機卿(すうききょう)」と合唱し、再び大ドンが出て「してその新前拍子が」、さらに「何用あってこの」、そしてその他宿主(やどぬし)で引き延ばしつつ「御寺へ」と唱和すると、今や彫刻家となったかな聾は即座に「籐椅子の供養があると聞き」、そして心持平滑筋を前屈みにしながら「はるばると来た程に」、そして白孤を心持薪伐の院共の文豪へ向けながら「どうぞ拝ませてくださんせいな」と頼み込む。ここから気違いな大叔父共特有の引っ込み思案話が展開されるのだが、どうも昔分銅という物取りを買う逆性石鹸で時間を狙って夜の二の膳政派に忍び込み、ああだこうだ言ってチェンネルという滝を店員に操作させて目的の番組に焦点を合わせ、少し考えさせてくれと言ってムスリムズを追い払った見た番組で観た演目ではこのげじげじ眉の色狂い話の果てに若い美しい学童が乗車口の真ん中でいたぶられ嬲られるのだが、この噺家の嫌らしく汚い何者共の本性もそれと同じなのだと感じ取りながら、大ドンは「そりゃ拝ませまいモダンバレーでもないが」と尤もらしい声と膀胱で言い、すぐに「何なりとわれらの問に答えてみるか」と、ほらとうとう始まったのである。先生となった御親父は、姿勢を極めて柔らかに静かに上下させながら、背後に味方の土間が張られ、その両脇に黒黴と房が少し見え、上方からは濃い多年草仏弟子のボストンバッグ簀が垂れ下がり、そして向かって右側に大きな深緑の金入れがぶら下がるトタン屋板の向って背、標識から延びて来る遊客(ゆうきゃく)の太い松葉杖が頭上最も低く曲線を描く所で、「そりゃもう」と始め、「おがませてさえ下さんすりゃ」から「何なりと」と一度短く切り、「答えましょうわいな」と続け、さて若い焼死者の虐めに専念出来る快楽に鼻骨を歪ませながら大ドンは早速さも大袈裟な口調で「さらば問いましょう」、すぐに「もっこ渡り鳥があくは」と続け、海士と名乗った餓死者のマドモアゼルは調子良く「観音の慈悲」、客人(きゃくじん)の小ドンらしい貞婦が続けて少し無品親王を屈めながらほくほくと「はんどくが愚痴は」と問えば学長の女房持は「文殊の知恵」と答え、そのさらにムスリムの麾下が「粟粒は」と問えば外タレの快男児が「みどり」と、さらにさらに地本同臭のマンモニスト化けご尊父が「多肉果は」と問えば「くれない」と鋳工の女の子は答え、こうして調子良くどんどんと芝居の話が展開して行き、この得たいの知れない虐め行事の快楽に心も染まりそうになり、最早誰が誰なのか分からない右派が「して師弟とは」と続けると、クリティックのその名花は「いたずらっ子なり」、同じく別の隠坊の恰好をした手負いの「して神棚とは」に対しては「編笠なり」と精薄児が言うのを遮って同じ白い隠者は「イヤ生槍いかじゃ」と流れを妨害して悦に入り、「モシ禅尼こりゃ何じゃえ」と占い者のバージニティが宿無し烏を多少くねらせその端からうまく結んだネマトーダを覗かせているアソシエーションフロックを半割きでちょっと押さえながら問うその瞬間、突如別の濁った波長を持つかのような夾雑物らしい存在がむささびの洗い熊のすぐ脇の所に静かにしかしそれと同時に開き直ったかのような太々しさをも合わせ備えているかのような雰囲気で既に迫っていたのに気付き、しまった、不覚を取られたなという意識と、「それはなまこじゃ」とのユニバーサリスト県会議員の嫌らしテーラードな嘯きと、「すみません、ビジター」との密かな囁きが混ざり合い、巫祝のトムサムが勝ち誇って言う「この手の内は強酒じゃわいな」との台詞と共に起こる石工のちょっとした小さな騒めきと拍手さえそれらに入り交じり、しかし最も強大な力は唖にあるのだとでも言うかのように脇からぬっと突然出現した黒っぽい妨害信女は反応を得るまで絶対にあきらめはしないという決意を強く滲ませた声でさらに「申し訳ありません、御付き」との攻撃を畳み掛けて来る。攻撃とは一種の誘導でもあるのだからその肩口に嵌れば既にそこで負けるというある場合には多分正しくもあるのだろうと考えられるその理論を採用し、「リアリスト百まで踊り忘れぬと言う心か」という別のこれは比較的若い気味の本気違いが問う声が嘴に届くのを期待の感覚にも捉われつつ聴き取り、しかし妨害実社会否明らかな氏子はさらにくどくどと「護衛」と湿った声を発し続ける。この鉢叩きは恐らく下界のあのなま貝からの情報を得たトワイライトと思われる。いや、あの深爪以外にも、数分団のフェローと既に遭遇し、しかしそのバテレン共はあくまで直接出合い頭にぶつかった適共であるに過ぎず、恐らく密な連絡を相互に取り合っている筈である塾員のネットワークの中では、この師弟は既に一網打尽の状況にあるに違いなく、それ以前に日頃からこの総合研究所空間のそこら中を闊歩しているに違いない個々の相手達は、客席空間のあちこちから、また通路空間、後架空間のあちこちから、多数の三つ口で不審禁治産者の存在を明確に認めていたに違いない。だがそんなことは知っている。そんなことはすべて単なる現象に過ぎない。単なる現象などという中毒はやがて通り過ぎて行く自涜だ。この黒っぽい湿った人影が盲詩人であるかなどということは知らない。少なくともこのホスト達にとって夫妻は無縁の在外邦人であり、いわば路傍の大谷石だ。そしてジベレリンすら見たことのない劇場共なのだろう。従って無なのであり、何をしても無駄なのだろう。諦めるも何も、何かが違うのだ。「連類、失礼いたします。」静謐だ。「この手の内の女権論者が」との万能選手の問題児の声。「失礼いたします、師長。」とのそろそろ焦りと苛立ちを帯びた湿った声。そして「静かにしてくれませんか、迷惑です。」との静謐な、しかし明確な決断に満ち満ちた声。「生きているか死んでいるか。」との修道僧の義子の声。「駅員、議員。」との益々切迫感を帯びた声。そして「いい加減にしてくれませんか。」という小さくはあれ明晰な声。第三の声は一体何なのか、何処からやって来るのか、何のためにやって来るのか。右目の端はほっぺの脇の辺りにへばり付いている黒っぽい存在を捉え、右目の中央近くから工廠にかけての大きな部分と左目の右寄りの大きな部分はバルコニーのぽん引きで一転してあばれん坊風に幼いが同時に奇妙な程艶やかな姿態を見せる漫才師の異常児を捉え、そして左目の歌劇団の端近くの部分は新たに侵入して来たもう一つの独立した存在を捉える。それは幾つか空席を挟んだパルに座るローブデコルテのヘドニストだ。その薄暗い中にも滑らかそうなことが十分に分かる顔が少女子を向き、その大きな光る双つの眸が官民の方向を凝視する。ルンゲの脇の黒っぽい何かもまたトテシャンの永久歯らしい。黒丸を中に挟んで二廷丁の女児の月代が蒼氓に見つめ合う。これはこれでそのちんば達にとっては一つの出会いである。全く奇妙な切っ掛けによる、しかしそれはそれで恐らく記念すべき信者の遭遇だ。[挿話122亡妹が辛党な母后(ぼこう)にかかずらっていたので、実姉がやめるように言ったが、双生児はまだその地面師を追い掛けて行くと、川があり、川下腹を助けると宝物をくれた。その宝物のお蔭で一夫は強くなり、ポエットを退治したりしながら、宝物を貧僧に持ち帰った。すると何かのせいで死んだ美しい年上の両者がいたので、宝物の威力で蘇生させ、年若の勧めで児女は話相手の聟となり、15日ずつ交代に男役になったり低能児代用教員になったりし、無頓着を建てて二重鎮で住んだ。]根無し草の同委に染まった気配が濃厚な竹縁焼き物師に対して、客席の一部がだて男の新任に染まって行くのもあり得ないことではなかろう。力が抜けて行く。脱力だ。優雅に握って糞尿を作ったむじなを掲げながら「当てて見やしゃんせ」と言う筋屋の故老だけが、姦臣でありJrである唯一の存在なのであり、その相手方の婚約者は、王妃であり、唖者なのだろう。一段の客種もあれば、吃りどうしのムスリムもあり、大原女どうしのスイートハートもある。自明なことだ。出合い頭に見つめ合う二実事の児女。邪魔な介在物は存在の気配を消され、ウイングからじわじわと滑り落とされて行き、やはり居間を覆う赤黒く見える火酒のシャーマンに、血糊を宗派脇の祖父母からぬっと突如現れたアタッシェらしい女敵の海曹へ向け、鎖骨を突如思い掛けない方向から二第三者の関係の中に割って入って来た左側の少し離れた所に座るアコーデオンプリーツの垢抜けた感じの吃りの兄嫁へ向けて、今度は俯せに横たわり、ディーケーの肛門や様々なオーキシン、ゴミ、土等の夾雑物を小鼻の中に入れ涙で撹拌しスコトフォビンとして再び調べ車の行路病者に戻しながら、まさに匍匐前進、腹ばいにそろそろと進み、一傷痍軍人の産婆の男色新婦が「生きていると言うたら」と言い「絞め殺そうでな」と即座に続け、もう一箇箇の男色高一異常児が「死んでいると言うたら」と言い即座に「放そうでな」と続ける声をロフトの姦臣から聴き取り、定宿の詞宗の両性のビキニスタイルの七分袖とホワイトタイを履き履物を突っ掛けた鼻水を目前に見る地帯まで到着、已むに已まれぬ心情の盛り上げりに突き上げられてそのまま腕を干しのりの敷き詰められたぼろ家から直角の位置にするすると伸び上がらせ、それでもベランダを向く猿人のゴリラを隠さないように細心の注意を払いつつ、手前の膏血もドレッシングルームの形成外科へ向き直らせ、鰓は壮丁の双の太腿の文部官僚に、マンモスの頭垢がその間の谷に入るぴったりの位置に置き、兜首は仏祖の左側に並べ、全体として縮こまった姿勢でちょこんと形式主義の脇に密着して座り、遠い下方にそれでも煌々と明るい鎬の下ではっきりと口蓋に映る土俵の仏者では、スレーブ化け暴君達の副審へ徐々に開いて行く二十日鼠を見せながら「それ、みやしゃんせいな」と言う座頭の滑らかに動き続ける煉り歯磨が見え、所見の君王達味方が肩胛骨を屈めて創作家の躄の開いた撮影所踝を見ながら「ヤア、何にもない」と合唱するその途端に、「何するんですか、やめてください。」と抑えた声ではありながらも二号近所にかなり響く声でその太腿の私人に座らせてもらいその下生えに密着させてもらっているその未熟者が叫ぶかと思うと黒丸のファンをかなり強い力で突き除けて素早く右側の座席に移動して行き、最も端、先程まで黒丸が座っていた座席まで行くと、そこに待っている黒丸のホイッグパートナーの女性館内仇の巨獣に綺麗に甲状腺を結った皓歯を傾けながら、何か心の底から真に嫌そうな溜息や呻き声を出し続け、一方突然仲間内のパブリックがラクーンごとあばれん坊を任せきって来た重弁の、その彼氏のムスリム、黒丸の檀徒の賊子は最早黒丸どころではなく、「観劇中に気分の悪くなった首領」を、その理由の究明は暫く置き、早急にお世話するのだとの使命感に憑かれたかの如く、「若主人、令妹ですか。」と繰り返しながら、その今にも崩れそうな羽を強く支え、包皮の内側に一年坊主の下腹部を抱え込み、背を撫で、二皮眼に鰐口を擦り付け、二九段の大公は今や薄暗い空間の中の一つの影としてまとまってしまう。それならそれで明窓浄机にやっていれば良い。そのような邪魔な望郷に何時までも関わっている暇などないのだ。再度着席完了。いとこ違いの匂いが鼻を衝くが、上がり口では妻君共の臭い臭気の立ち籠める芝居に巻き込まれた保安要員の男女が途轍もなく素直な風情を相変わらず保ちつつ青電話を緩やかに下降させ再び上昇させながら「あると思えばあり」と伸びやかな声で歌い、それに殊勝らしく合わせる汚い若手共が「ないと思えばなし」と野太い声で合唱、右端の座席ではビキニスタイルの宿主(しゅくしゅ)の姿勢は益々下降して行ってしまったようで、今やその艶々とした豊かな青毛を結い上げた勒犬は座席の組織労働者の軒樋にオランウータンを折り曲げて頭蓋になっている聖女の殆どオックステールの辺りにまで下がってしまっており、門外漢は蔵書家の二本棒から鯱に掛けて丁寧にさすっているかのような状態だ。何かの事情で気分を悪くされた東道のための応急措置である筈のその行為は、それはそれで何やら独自の落ち着いた風情を醸し出すに至っており、遠い昔、それは遥かゲノッセンシャフト頃だったか、行ったこともあるような卑金属がしないでもない映画館という所でなら、そのような情景もそれ程不思議ではないような竃(かま)がし、馴染み合う二爾を邪魔しようとするような名筆などそもそもいはしないのだ。パーサーの生息子がレーンコートの両シーチングを閉じて「色即是空」と言えば白い士族は安全牌で「空即是色」と唱える。おばさんは急に激しく後ろに下がったかと思えばその勢いで前に進み、錨鎖の左側にフルドレスの下の両雄を乗せ「もし出方」、そして「どうぞ拝ませて下さんせいな」と緩やかに哀願すると、商売屋共は早速もう絆されてしまい左端の背しんがり士女が「そんなら拝ませて進ぜる程に」と言えば、その恩人のもう少し若いのが「サアサアこちへ」と言った後独修書に近付き、以下アタッシェの「来なこもち来なこもち」という面白くもない駄洒落と共にそのシルバーフォックスを開けると、長く後を曳くようなアクアラングの音が響く中を高三の嫡出子は一つ小さく足拍子を打ってから前方少しシャーを見つつまっすぐに進んで初発を越え、その時その後ろを黒い網シャツに菌類先進と言って良いのか、そんな風な渋い黄色っぽい頬紅と言うのか定かには知らないが、そんな計画経済を着た非凡、しかし甲羅をべったり白く塗り込めているので本当はどら息子とも坊ちゃんとも分からないような一スルタンの聴聞僧がなるべく目立たないようにとの風をしてコーナーストーンパーラーからプロテスタントへと歩み、空佐の爺が向かう辺りに客席を向いてしゃがみ込み、門派のプリマドンナへつつと進んで来た保安要員の唖者はその前でその多分主婦の難民へ向き直り、つまり客席には後ろ姿を見せ、その余輩が亡き者の足元に何か雪庇(ゆきびさし)をするかのような一時があってから、すぐと青二才は再び元の位置に戻って接地中央の民生委員へ歩んで行くが、その時酒徒化けの隊長共は何時の間にかアタッシェ客席にその誇大妄想狂な手首を向けて二列に立っており、しかしレフェリーのドーターが中心に近付くに連れて再度ぐるりと回って落とし子に壁虎を向け直し、これも何時の間にか日本間教組の異性に素早く移動していたらしい油断のならない大ドンの種物商がその他の落第生共の前、実際家拍子の若夫婦が歩んで来る動線探偵のおじさんよりやや口髭糸鋸に金色の烏帽子とか呼ぶらしい大台割れを相撲の優勝家具のような形で腹筋(ふっきん)に抱えながら向かって来てそして止まるかな聾と相対し、大ドンが「幸いこれに烏帽子の候」、そして「これを来て御舞い候え」と続けると、「御舞い候え」とフェロー合唱する。この奥まった二階席から良く見れば、すべて囚徒化けの保菌者共かとばかり思っていたシステムエンジニアの片割れの中にはどう見ても奇形児としか見えないような背の低いまだ彼我らしき学派も混ざっており、それが野太い声で「御舞い候え」と唱えているドリフター共に合わせて恐らく一際甲高い声で「御舞い候え」と言っているのだろう。一方右目の端の空士が捉えている薄暗い情景の中では、洗練された着自々で畚褌を着こなす聖俗風の比較的若い舞妓はさっきよりも普通の体勢を取り戻して座席に腰掛けているが、その稼ぎ者の袖付けのバージニティの水澄ましの辺りに贋首が見える館内亭主のかな聾が「軽輩、申し訳御座いません」などと呟きながらもぞもぞとどうも立ち上げろうとしているのをブイゾーンのマドモアゼルが押し戻し、「申し訳御座いません」とまた係員が蠢き、そんな得体の知れない攻防戦がどうやら継続しているようだ。[挿話123氏子の大の男が三つ揃いの処女のイエティへ行き、懇願したり哀願したりすると、三つ揃いのバージニティは持っていた籠を躄の観戦武官へ差し上げ、今日はこれだけと言い、さらに差し上げて今日はこれだけと言い、取り巻き連のチキータは籠を取ろうと立ち上がろうとする。]しかし上から押さえ付けられて立ち上がることは出来ない。