哲学教室 『ガリバー旅行記』編 [小学生の部] (4月16日)
ナラナラ・スクール事務局の矢口ゆりです。
各教室の様子を個人的な感想と共にお伝えします。
https://narranarra-school.myportfolio.com/
4月16日(日)に哲学教室(小学生の部)を実施しました。
世界中で読み親しまれている『ガリバー旅行記』(ジョナサン・スウィフト 作、柴田元幸 訳)を読みながら、自由に語り合う教室です。
◉『ガリバー旅行記』第2部が風刺する内容等
4/16に確認した内容:
・HIV感染者等、患者に対するいじめが存在する
・小説家の北條民雄は19歳でハンセン病を発病し、隔離生活の中、23歳で夭折した
・現在は薬で治療可能なハンセン病だが、かつては療養所に一生涯隔離する政策が取られており、患者への差別も行われていた
・患者から離れようとすること自体が差別のスタートであり、患者にとっては既に差別されているという感情が生まれる
・人権意識が低い時代に発行された『ガリバー旅行記』では、病人や貧乏人、障害者に対して醜いという表現を用いているが、醜いという感情は人間の中にある自然なものである
・外見の気持ち悪さや怖さ、病気が伝染するかもしれないという恐怖心から、人は差別をしてしまう
語り合った内容、意見等:
・周囲でいじめがあったらどうするか
・外国人と接する機会があるか、外国人や障害者に対する差別について
・昆虫や爬虫類等、生き物で苦手なものはあるか
・海外における昆虫食、日本の生食や鯨食等、食文化に対する差別について
・刺青に対する差別について
・日本は平等な国だと思うか
・日本の人権意識は遅れていると言われている
・日本は良い国だと思うか、日本について少し変だと思う点はあるか
・日本の政党について
次回実施予定日:4月27日(木)
ここからは私の個人的な感想をお伝えしますね。
最初に、いじめについての話から始まりました。
周囲でいじめがあったらどうするか。
難しい質問だと感じたのですが、参加者さんの回答はとても建設的で冷静な意見でした。
続いて、日本の食文化の話になりました。
祝いの席で鯨料理を食べる風習について、参加者さんのお母様が教えてくださいました。
鯨は恵比寿様の化身とも言われているそうで、縁起物なのですね。
味噌についても参加者さんが発言されていましたが、地域によって味や色が全く異なるので面白いと思いました。
海外の食文化の話になり、昆虫食の話が出ました。
日本でも、一部地域で昆虫を食料としていますよね。
私が一度食べてみたい物の一つにへぼ飯(蜂の子の混ぜご飯)があるのですが、友人は絶対に食べたくないと言います。
独特な匂いが癖になるくさやも、苦手な人が多いとも聞きます。
納豆も好き嫌いが激しく分かれる食べ物ですが、私もその匂いと粘りが生理的に受け付けず、数年前まで大嫌いでした。
今ではむしろ好きで毎週食べていますが、以前は家族が食べている姿を見ることすら少し苦手でした。
食に対する好みは人により様々です。
日本で生まれ育った人でも、どうしても拒絶反応が起きてしまう日本の食べ物があると思います。
ましてや海外の食文化は、想像以上に多種多様だと思います。
そう考えると、食文化に対する差別もまた容易に引き起こされやすいものなのかもしれないと思いました。
後半は日本の印象についての話になりました。
日本は良い国だと思うか、という中村の質問に「良いと悪いの割合が65対35ぐらいで、日本は良い国だと思う」「外国のように殺されたりしないので良い国」と参加者さんが回答されていました。
日本について少し変だと思う点については、公約を守らない等の政治家に関する回答が複数ありました。
確かに、公約違反が目立つ気がします。
今回取り上げていた話題から、ふと思い出した出来事があります。
海外のとある国出身の二人と知り合う機会があった時のことです。
その国は人口の大半を占める民族と幾つかの少数民族で構成されており、Aさんは少数民族、Bさんは人口の大半を占める民族の出身でした。
ある時Aさんが「私たちの民族は母国では差別的な扱いを受けている。進学先も制限されていて、Bさん民族の言語が流暢に話せないと仕事が見つからない。だから私たちの民族の言語しかほぼ話せない親や祖父母世代は特に生活が苦しい」と、私と二人きりでいた時に話してくれました。
その後Bさんと私の二人だけで会う機会があり、AさんBさんの母国の話になりました。
「私たちの民族は生活の苦しい人が多いけれど、Aさん民族は進学先や就職先に優先枠があって、待遇が良い職にも就きやすく色々と優遇されている」とBさんは私に話してくれました。
Aさんは少数民族だから言語的にも職業的にも差別されていると言い、Bさんは少数民族は優遇され過ぎでむしろ自分たちの方が差別を受けていると言っている。
二人とも誠実な人柄なので、きっとそれぞれが本当のことを話していたのだと思いますが、このような問題を解決する難しさを改めて感じました。
今回は差別に関する内容が中心でした。
差別の理由となるものは、肌の色や刺青といった外見的なものから食習慣のような文化的なものまで、実に様々なのだと改めて感じました。
「患者から離れようとすること自体が差別のスタートである」という中村の言葉が、ずしりと心に響きました。
参加者さんや中村の発言から色々と考えることができ、貴重な時間でした。
皆様、お疲れ様でした。