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知識は自分の人生を明るくしてくれる。『「赤毛の役立たず」とクビになった魔力なしの魔女ですが、薬草の知識がハンパない!と王立研究所に即採用されました』
こんにちは、女性向けのなろうコミックをレビューしている氷雨と申します。
今回紹介する作品はこちら。
『「赤毛の役立たず」とクビになった魔力なしの魔女ですが、薬草の知識がハンパない!と王立研究所に即採用されました』です。
……タイトルが、長い!
平成のライトノベルのような感覚がありますね。
この作品は現状3巻まで発売していまして、今のところ全巻読んだ状態でのレビューとなります。
薬草の知識がとてつもない女の子と貴族との身分差ストーリーです。
なろう系でよくあるのは、薬草を取り上げる際に現実世界にあるものを題材にするパターン。
しかし、今作はしっかりとオリジナルの薬草の設定を作ってくれているので、とてもわくわくしながら読めました。
個人的にリアルにあるものを取り上げられると、ついつい調べてしまうクセがありまして……。
そこが気になると読み進められなくなることが多々あるんです。
取りあえず、まずはあらすじからまいりましょう。
あらすじ
「ルジェナ・レジェク。今日でお前はクビだ!」
「みんな気を遣ってたんですよ。魔力がない魔女なのに、調剤まで下手くそなんて」
薬草工房長の代替わりにより、仕事と住む場所を突然失ったルジェナ。
しかし、偶然知り合った貴族のエーリクは前のめりに提案する。
「ルジェナ、君の薬草の知識、すごいよ!私の作った王立研究所で働いてくれないか?」
それまで自分の知識を褒められたことなどないルジェナは、信じられない思いでそれを承諾する。
しかし、エーリクの提案はそれだけではなかった。
なんと、偽の婚約者になってほしいと言ってきて――!?
一方、ルジェナが去った後の工房は、作る薬の質が下がったと苦情が殺到。
ルジェナを追い出した者たちは、彼女の居場所を探そうとするが……。
スタートは追放もの
物語の始まりは、主人公が住み込みで働いている薬屋の工房で、唐突にクビになるところからスタートとなります。
結構追放するまでが早かったので、その後の話にもっていってからの余裕がある分、じっくりとストーリーを進められている印象です。
それに、主人公の境遇もあってか、やはりなろう系特有の自己肯定感低めの女の子。でも、きちんと前向きに歩んでいく感覚は好感が持てます。
また、主人公が働いていた工房の若旦那もわかりやすいクズで何より。
これは、感情移入しやすいかもしれませんね。
追放されてからは、貴族のイケメンに拾われて自分の技術や知識をフル活用できると知り、どんどん生き生きと動けるルジェナ。
輝きを取り戻していく過程は、なかなかいいですね。
ラブストーリー的には身分差の恋といえるとは思いますが、進みはとても穏やかです。
お互いに薬草や薬の知識・研究が大好きだからこそ、好きなことに向き合っている2人はとてもイキイキしています。
いいですよね、一緒に打ち込める趣味があると、話題に事欠きません。
それに、自分に魔力がなくても「自分は自分だ」という意識を親や貴族であるエーリクから言ってもらえることで、心が救われていく様子はとても王道。
進み具合もなかなかゆったりとはしていますが、小物や衣服の描写なども細かく丁寧な印象を受けますので、きれいなイラストが好きな方はぜひ手に取ってみてください。
主人公の薬草の知識
ルジェナの持つ薬草の知識は祖父から受け継いだものであり、祖父が亡くなった後も独学で学んだという努力家な主人公は好感が持てます。
また、その知識は香りや味などの五感をフル活用して調剤から梱包までなんのそのという主人公。
万能系の主人公ではありますが、やはり自己肯定感の低さから「私、何かやっちゃいましたか?」というテンプレの反応をします。
しかし、少しずつ自分の知識をエーリクに使ってもらえるうれしさから、素直に知識を口にしてくれるようになるのは成長なのかなと思うのです。
やはり、認めてもらえるというのは、それだけで活力になっていくんだと実感させられます。
そして、エーリクの穏やかさの中に見えるルジェナへの執着は、恋愛へと少しずつ進んでいくのだろうと希望を持たせてくれるものです。
いいですねぇ、ゆっくりと話しが進み、人間関係も前へ進んでいく感覚は好みです。
もちろん、ゆっくり過ぎるのも問題ではありますが、今作はそういった感じではないのでご安心を。
この作品の中で好きなフレーズが、「思い出は直線ではなく点だ。どの日々も単独で蘇る。順番なんてめちゃくちゃで、その日その時が突然胸の中に蘇る」という言葉。
消えないでずっと自分の中にある、だからこそ時に幸せだし苦しくもある。なかなか味わえない感覚ではありますが、心からほっこりさせてもらえる場面でした。
一方元いた工房は……
一方、ルジェナを解雇した、もとい追放した工房ですが、とことん汚くなりますし薬の質も落ちていきます。
特に、若旦那のダリミルにお叱りの矛先が向くのは当たり前なのですが、実は先代の主の方が実は悪いたくらみをしていたという。
もちろん、同じ薬師だからこそ主人公の祖母も孫を託したのだと思いますが……。まさか7年間も工房に閉じ込めておくとは。
しかも、ルジェナの素直な思いを逆手に取っているという。
本当に、「おぬしも悪よのう……」的な奴ですね。
しかも、結局主人公の追放に加担したぶりっ子の刺激を求めている女の子は基本的に何もせずにずっと工房にいるし……。
マジで何をしたいのやら。
まぁ、ただ単にルジェナが不幸になってほしいだけなのだと思います。
彼女は人が泣いているのを見てみたいというだけでしょうから。
もう1人の何を考えているのかわからない男の子の方は、なにやら暗躍しつつ情報収集をしているので、何やら訳ありみたいです。
早く続刊でないかな……気になって仕方ないです!
終わりに
まだまだ謎が多いこの作品、早く続きが読みたいですね。
それに、エーリクとルジェナは一緒に王都まで行けるのかどうか。
また、祖父や父親に関しての言及もまだないので、そこも気になるところ!イラストも素朴な絵柄で進んでいきますし、とてもほっこりとした感覚を味わえる作品だと思います。
ゆっくりと進むラブストーリーが好きな方は、ぜひお手に取ってみてくださいね。
それでは、今回はここまで。
また次の作品でお会いしましょう。