【番外編】なろう発じゃないけど勧めたい!『あせとせっけん』
皆さんこんにちは、女性向けのなろうコミックをレビューしている氷雨と申します。
今回は小説家になろうからのコミカライズの紹介ではありません。
講談社のモーニングで連載されていた「あせとせっけん」のレビューをしていきたいと思います。
実はずーっと前からレビューを書きたいと思っていた作品の1つでして、実写化もされていましたし、落ち着いたこのタイミングで紹介させてもらおうかなと。
個人的には実写もよかったとは思うのですが、できれば原作をお勧めしたい。その理由は、コミックであれば実写化では描けなかった部分もしっかり表現できる。(色っぽい描写あり)
それと、とっても穏やかでさわやかな男女の恋愛が見られること!
2人とも成人して会社に勤めていますから、しっかりしていると思います。
……語ると止まらなくなりそうなので、まずはあらすじからまいりましょう。
あらすじ
女性に絶大な人気を誇る化粧品&バス用品メーカー・リリアドロップに勤めるOL・八重島麻子(やえしまあさこ)は、重度の汗っかきなのがコンプレックス。
デオドラント製品が手放せない生活の中、ある日、商品開発部の名取香太郎(なとりこうたろう)に、「君の体臭は素晴らしい! 新商品の石鹸開発のため、これから毎日、君のにおいを嗅ぎに来ます!」と言われてしまう。
でも、彼に匂いを嗅がれるのは、そんなに嫌でもなくて…。
大人の恋愛がゆっくりと進んでいく
この作品を読んでいく中で、主人公である麻子さんと香太郎さんが成人していることが大きいと思っています。
正直、学生が主人公の場合周りが見えなくなっている中での行動が多いので、時折共感できない場面が出てきてしまうんです。
でも、今作は社会人だからこそ、周囲の目も気にしつつ動けるので、とても安心感があります。
それに、内容的には主人公のコンプレックスをヒーロー側が包み込んであげるという。ざっくりと言うならそんな感じの流れになるかなと。
しかも、お互いの関係を進めていくのもきちんと納得してからです。
足並みをそろえるためにきちんと話し合いますし、香太郎さんの方も自分が先走ってしまったときには素直に謝罪できる人。
だからこそ、麻子さんも「きちんと自分の思いを伝えなきゃ」と頑張れるんです。
いやぁ、本当に可愛い。自分を卑下してしまいがちな麻子さんをきちんと受け止めて肯定してくれる香太郎さんの優しさよ。
イラストも結構可愛らしい感じだけれども、少女漫画ほどキラキラしすぎないというか。個人的には丁度いい塩梅です。
コメディの部分でのデフォルメも可愛らしいし、キャラクターの表情も豊かなので、感情移入はしやすいかも。
匂いフェチにはたまらない
正直なところ、リアルに香太郎さんのような人がいた場合、驚きますし多分引いちゃうかもしれません。
まぁ、初対面で「あなたの香りが好きです、嗅がせてください」はヤバいですから。でも大丈夫、これフィクションです。
でも、それは香太郎さんの生まれや仕事に関係しているんだよなと読んでいく中で分かるので、まぁそこまで嫌悪感はないのかなと。
というか、全体的にいい人すぎるんです、香太郎さん。
でも、善人ぶっているわけじゃなく、麻子さんともっと一緒にいたいからという理由で隠れ家(サボり場?)的な場所に彼女を招くことも。
相手に惹かれたきっかけは匂いだったけれど、そこから少しずつ絆を深めていく2人の歩みはゆっくりなのですが、その足並みがきちんとそろっているのがいい。
麻子さんも仕事で忙しい香太郎さんとの立場の差とか、周りの人たちとの関係から少しずつ明るく雰囲気が柔らかくなっていく様子がとても微笑ましいんです。
しかも、シーンごとの雰囲気もばっちり。きちんと仕事のことまで描いてくれるのは、社会人の登場人物ならではかなと。
キャラクターたちがしっかりと成長していっているなと思うからこそ、読み進めたいって気持ちが高まるのかもしれません。
コンプレックスを支えてくれるヒーローや友人たち
冒頭やあらすじでもお伝えした通り、麻子さんは自分が汗っかきであることにコンプレックスを持っている人です。
そして、汗をかくからこそ、自分の匂いにも不安から鋭敏になってしまっている状況といえます。……実は、私この気持ち共感できるんですよね。
自分も汗をかきやすい人間だからこそ、脇とかの匂いが気になる瞬間とかありましたし。ケア方法とかも調べて実践することもありまして。
そんな麻子さんのコンプレックス、実は幼少期の経験からくるもの。
自分の同級生からのいじめが原因で、敏感になってしまったとか。
……小学生の子どものいじめって、結構陰湿なんですよね。しかも、女の子は特に。
作中で出てくる同級生の雰囲気もさすがというか、麻子さんが傷つくのもわかるなぁと感じていました。
あれはアカン。本当にダメだ……。弟くんが過保護になるのもわかる。
これで長年苦しんでいたと思うと、結構胸にくるものがありました。
だからこそ、そこで少しずつ自分のコンプレックスを克服するんじゃなく、受け入れる方向に香太郎さんが持って行ってくれるのが素晴らしい。
自分じゃ体験できない部分だからこそ、しっかりと相手の話を聞いて受け止める。
話したくないことは話してくれるまで一定期間待つ、それでもなかなか来ない場合はこちらから踏み込むなど。
香太郎さんだからできる行動は、とても素敵ですし、思いやりのある動きだよなぁと感じました。
終わりに
今までたまっていた分の情熱が暴発しているような気もしますが、それはそれ。あせとせっけんは個人的に今でも読み返すことも多々ある作品です。
本当に素敵なロマンス作品となっていますので、甘い空気が好きな方はぜひ手に取ってみてください。
また、実写ドラマ版を見て気になっていたよという方も、ぜひ。
それぞれの違いや空気感を比べてみるのも、また楽しめるのかなと思います。
それでは、今回はここまで。
また次回の作品でお会いしましょう。