12月の年末。 保護主にせめてトライアルだけでも！と頼み込み、渋々トライアルを許可してもらえた。 シェパードの飼育経験者が匙を投げたなら、シェパード初心者に託してみてもいいのでは。とレスキューチームの方が進言してくれたらしい。 しかし、私はすでに返す気なんてさらさら無かった。 もちろん、トライアルには条件がついた。 その中で訓練所に通う事は絶対だった。 私は『なな』が我が家に来た事が嬉しくて嬉しくて、毎日が幸せだった。 しかし、問題は割と早くやってきた。 トライアル当初、大
シェパード『なな』がトライアルに失敗した理由は様々だった。 躾が入っていないシェパード。 そう言われたら、歴代シェパードを飼っていた事がある人は、「大丈夫。シェパードならすぐに覚えますよ」と言った。そうしてトライアルに引き取り、今までやってきたように躾ける。 それは『なな』にとっては耐えがたい日々だった。 環境が次々と変わり、言う事を聞かないとショックを与えられる。何をしても、しなくても怒られる。 こんな経験は初めてだった。 「なな」は何度も脱走を試みた。脱走するためには
2011年9月 憧れの大型犬が欲しくてネットで犬の里親募集を見始める。 保護犬がどんなものかも分からないが、ただ成犬の大型犬が欲しかったからだ。深い理由も何もない。 しかし、なかなかピンとくる犬はいない。 運命の糸はまだまだ見つかりそうになかった。 10月 里親募集でシェパード『なな』を見つける。 写真を見て何故か心踊った。 一見シェパードと書いていないと分からないような、少し貧そな犬だった。だが、その犬の目に強く惹かれた。 しかし、見つけたのは過去の募集記事。 現在、山口
たまに食べ物を投げ入れてくれる近所の人にも唸りながら、誰一人勝手に入って来ないように家を守る事が、この犬に出来る最大の使命だった。 おじいさん、早く帰ってきて。 おばあさんと先輩犬と、どこに行ったのかな。 一緒に行きたかったよ。 お留守番はつまんないね。 でも、お利口さんにちゃんと待っているよ。 誰も勝手に入って来ないようにこの家を守ってるからね。だから早く帰って来て。たくさん褒めて欲しいな。おじいさん。 そうやって頑張って頑張って、空腹に、孤独に耐えながら過ごす日々。
独りぼっちになってどれだけ日が経ったのかさえ分からない。 ただ分かるのは、この家には誰も居ないことだけ。 おじいさんはどこに行ったの？ おばあさんは？ 先輩犬は？ どうして独りぼっちなの？ どんなに吠えても誰も来ない。 食べ物も水もない。 もう何日も飲まず食わずだ。 こんな事は初めてだった。 真っ暗な夜に怯え、空腹に耐える。 どんなに暑くても日差しを避けるものもない。 徐々に動くのさえ億劫になる。 けれど、この家を守らなくちゃ。 家族で過ごした家だから、しっかり守らなきゃ
熊本県のとある田舎町。 まだ子犬だった1匹の犬が、老夫婦の元にやってきた。 田舎の番犬として可愛がられ、芝犬の先輩犬と共に成長していく。特におじいさんに懐き、畑に行く時も一緒。軽トラの荷台に乗り込み意気揚々と出掛ける。広い畑は山に接しており、おじいさんの作業を横目に遊んだり昼寝したり思う存分毎日を楽しんでいた。 ５歳になる初夏。 その日からその犬にとって最大の試練が訪れる。 大事に育ててくれた最愛のおじいさんが入院してしまい、そのまま亡くなってしまったのだ。 静かだった家
普通の社会人である私が1匹のシェパードと出会い、人生観が変わった。 今は穏やかに、楽しい毎日を過ごせている日常を紹介していきたいと思います。
