茨城県 株式会社武勇 第2回
今回は製造のお話からスタートします。
酒母は全体の6~7%が一般的とされています。
山廃、生酛、速譲酛は酒母の中をどう殺菌するかで分けています。
酒母の中を酸性状態にするのが基本です。
生酛は自然由来の乳酸菌を育成して酸度を上げて中を抗菌状態にさせます。
それは、抗菌状態だと他の菌が入れない状態で酵母を発酵出来るからです。
速譲酛は最初から乳酸を入れるのですが、これも酸で抗菌する為です。
高温糖化酛は酸を入れる前に熱を使って殺菌と糖化を行います。
これは殺菌と糖化が同時にできる方法です。
高温の55°位で酵素活性も上がり酵素の作用で中を一気に糖化させ、糖化が進んだら30°以下迄下げて乳酸と酵母を入れて更に殺菌を行います。
これにより糖化と酸性状態が出来、手順が少ないので7日~8日で酒母が出来ます。
速譲酛だと約2週間、山廃生酛だと約1ヵ月です。
※何の為に酒母があるのか?
それは酸性状態の中で酵母を大量に獲得する為です。
酸がいらなければいきなり大仕込みをしても良いのですが、もし酒母無しで添え仕込み(初添え)を始めたら醪の中で殺菌が出来ません。
酸性状態で酵母を大量培養して、大仕込みに移してあげると酵母が大量に入るので酸性状態ではなく酵母の数で他の菌が入れない状態にします。
仮に一段仕込みで一度に酵母を入れてしまうと、酵母が薄まって汚染されやすくなってしまいます。
なので、3回に分けた三段仕込みを行いますが、設備が整っている所は2段仕込みもあります。
この際に多少酵母が薄まっても、沢山入っている為汚染されづらいです。
初添えの後、踊りといって酵母の増殖を促す時間を作り酵母が増殖していっぱいになった所で中仕込みを行いまた増殖させ、留め仕込みを行います。
初添え (タンクの中に酒母、仕込み水、米麹、蒸米(掛米)を加える事)
踊り (休ませ、酵母の増殖を促す事)
仲仕込み (仕込み水、米麹、蒸米を加える事)
留め仕込み (再び仕込み水、米麹、蒸米を加える事)
日本酒造りはどう汚染させないかが重要です。
添え、仲、留めと1:2:3と仕込みます。
添えは温度が高いし、酵母を急激に増やす為に発酵させやすくなっているので、添えを大きくすると酵母がいっぱいなので仲、留めを仕込んでも力が弱らずに短い期間で発酵を終わらせる事が出来ます。
添えを小さくすると酵母が少ないので仲、留めを増量しておくと増える時間がかかるので長期醪が組みやすくなります。
短期、長期醪の違いとは?
理由については色々あり環境や仕込み方でも違いが出ますがサクイソ系の香りを取るものは長期の方が出やすく、カプロン酸系の酵母を使う時は短期の方が香りが出やすいです。
酵母の特徴を活かす作り方。
酵母に対してどういう麹が必要でしょうか?
例えば、カプロン酸エチルの酵母にはグルコースを沢山作る麹の方が都合が良く、香りがあって甘く感じるけど、辛めのお酒も造れます。
高グルコ菌を使って造るお酒は日本酒度メーターで辛さを測る際に、辛口だけどグルコースが多くて甘く感じるお酒も造れます。
・日本酒度計…甘口と辛口の判定に使う物
日本酒度計は水に対しての比重で、軽ければ辛いとなります。
ですが、グルコースが高いと日本酒度が軽いのに甘く感じるお酒が増えてきています。
今までの日本酒度計では間に合っていないのかもしれません。
日本酒度などを表示しない蔵が増えてきているのもこういった事情がありそうです。
次は浸漬について。
大吟醸などの高精白米などは水を吸い過ぎてしまう為数分程度しか水につけていられません。
更に細かく洗わなくてはいけないなどより慎重に扱います。
最初に白米の重量を計っておきます。
吸水歩合10%とは白米10㎏に対して1㎏重くなるまで水を吸わせた11㎏です。
大体の吸水具合だと米に対して30~32%吸わせたりします。
浸漬をする際は事前にテストをしておき、おおよその時間を決めておいて時間を測りながら水を切ります。
多いい時だと300㎏位洗います。
米の水分は元々10%位あります。
ですが、米によって水分が12%、8%ある事もあるのでそこで30~32%で合わせてしまうと数%ずれるので均一ではなくなってしまいます。
吸水具合から水分量全体を割り出す計算式があるのでそこで水分量を決めます。
そして同じ水分量になる様に米を洗います。
ここでは再現性が大切で同じスペックのお酒を毎年造るので、味がバラつかないようにレシピ(マニュアル)を作っておきます。
米など材料の性質はその都度変わってくるので、これらに対応出来る様に何パターンもレシピを作ります。
全く同じ酒を造るのは難しく、仮に同じお酒を毎月造ったとしても消費者は変わってきていると捉える事が多いそうです。
同じ物を造っていても甘くなっていると捉えられる事が多いので、少しずつ辛く仕上げています。
もしかしたら甘い物を飲み続けていると重い(味が濃い)と]感じる事がありますが、それが原因かもしれません。
材料も安定しませんが私たち消費者の舌も絶対ではないという事です。
武勇酒造ではどういう風に感じさせるかを考えてお酒造りをされています。
ただここで注意すべき事は消費者に合わせる事も大事ですが、自分達のコンセプトである味を忘れない事です。
専門的な内容が多いいので今回はここまでとします。
明日6月22日(水)にはSAKEstoryに武勇の造り手である高橋さんをお迎えしてイベントを開催します。
たくさん考えて自分の経験値となる様に頑張ります!