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鰻小骨が喉に刺さって死にかけた話

2024年8月14日
誕生日の前日に、わたしは人生で初めての経験をしました。
それは「鰻小骨が原因で瀕死の状態になる」という経験です。

あなたは終わりの見えない地獄を経験したことがありますか?
わたしはありませんでした。
ホラーグロ系の映画や漫画での拷問シーンくらいでしかみたことがなかったのです。(ここは日本ですしね)

さて、このコラムを読んだ後、あなたはしばらく鰻が食べられなくなると思うので、閲覧注意でもあります。
(ま、食べるとしても一口ごとに1000回くらい噛めば、多分大丈夫なので、大丈夫だと思います)

それを覚悟の上で次に進んでくださいね。

***

【緊急】のどにつまった鰻の小骨を取り除く裏技大募集!

8月13日に上記の内容でFacebookに投稿すると、コメントが70件近くついた。なんと、いいねの数よりも多くのコメントがつくという非常事態。

コメントした方は特に気になっているのではないか?

【で、結局鰻小骨とれたん?】ってこと。

とれたよー!という一言では到底表せない壮絶なドラマ(という名の悲劇)が起こったのである。

このバズ投稿で多くの方から「耳鼻科にいけ」との、まともなアドバイスをいただいた。
素直だけがとりえな雨音は、言われた通り耳鼻咽喉科にいった。

誕生日を迎える前日のこと。
その日は知り合いが誕生日を祝ってくれるとのことで、お昼にお寿司を食べる予定だった。
午前中に病院に行って小骨を取ってもらおう。
1時間もあれば予定にも間に合う。
そう思い、町医者を調べた。

***

家から徒歩10分くらいの耳鼻科。
9:10に行ったら20人並んでいたという口コミを鵜呑みにし、8:50に意気揚々と並び、2番目の整理券を勝ち取る雨音。(あれ?チョロい……)

「初診です」
ちょっと喉の調子が悪くて、念の為に耳鼻咽喉科にきた女を装いながら保険証を差し出す雨音。

「今日はどうされました?」
えっ、ここで言うの?恥ずっ!
他にも数人待合に待ってる人いるで!?!?
でも嘘はアカン!(真面目)

「えと……鰻の小骨がノドに……」
(陰キャのような小声)

「えっ?あ、、、はい」
一瞬、鰻小骨案件ね顔をする受付(どんな顔だ)

「いつ食べられたんですか?」
「おととい……」
(コミュ障のような小声)

「では、こちらに記入ください」
「はい……」
(チー牛のような、か細い声)

待つこと20分。
「雨音さーん」
ついに呼ばれた。

鼻から内視鏡をいれられ、
「ベロ出してー」とか
「息はいてー」とか色々やってもらい、
咽頭ファイバーを差し込み、モニターに映し出された鰻小骨(注:閲覧注意)。



なんと、右ベロの奥(扁桃腺らへん)のぼこってなったところに、まつり縫いのような形で1cmくらいの鰻小骨が刺さっていて、とびだしているところが2mmくらいだった。

内視鏡を見た女医も
「あーーここなのかぁーーー」みたいな様子。

骨が途中で折れていたようで、突出部分が短く、今よりもう一個太い咽頭ファイバーを鼻に入れて、小さいピンセットで摘んで取らないといけないことがわかった。

絶望の二文字。

「オエッてなるところにあたるから、少し苦しいかもね。管も一段階、太くなるし」
「全身麻酔はできないですか?」

真顔で質問する。

「うちでは全身麻酔はできませんね笑」
あたりまえのように女医が言う。

あまりにも鬼気迫る雨音が怖かったのか、
「ウチの設備だとモニターの画質も粗いので」
という謎の理由で、大学医学部附属病院に紹介状を書いてくれた。

おそらく、やっかいな案件の匂いがしたのであろう。
(まあ、その女医の感は的中することになる)

お盆の真っ只中、鰻小骨がノドに刺さって、大学医学部附属病院を紹介された女は、きっと日本中でわたししかいない。

これはかなりヤバい案件であることは間違いない。これからおぞましいことが起こるのではないか……と絶望しながらも、ライターの血は騒ぐ。

絶望と不安な気持ちの狭間で、某大学医学部附属病院に向かう雨音。(駅から徒歩16分)

町医者女医によると、「そこでもたぶん全身麻酔は無理だと思う」とのこと。不安でならない。。

地獄へいくような足取りで、某大学医学部附属病院に向かう道端で笑顔の人々とすれ違うたびに思った。

おそらくだが、このすれ違う人々は、鰻小骨がノドに刺さっていない。
つまり勝ち組ってこと。
鰻小骨がノドに刺さっていない全人類が羨ましく思える。

「あなたも……?あなたもですか?今、鰻小骨のどに刺さってないですよね?それ、素晴らしい人生ですよ」
と一人ひとりをとっ捕まえて言いたい気持ちだ。(迷惑行為)

早くこの苦しみから抜け出したい。苦しい。

鰻め……。
皮肉にも、私の地元は鰻の養殖がさかんな地域で有名だ。
おととい東京事変のバンドメンバーと行った割烹で食べた鰻。鰻は好きな方だった。

もちろん、鰻にも罪はないし、鰻の骨にも罪はないのだが。
わたしがよく噛まずに飲み込んだのがいけないのだ。

2年前コーチングを学んだ時にも教わったではないか。
他責ではなく、自責の気持ちを持ちなさい、と。

スピ系の方もよく言うではないか。
自分の身に降りかかる災難には感謝をしなさい、と。

それにしても、なぜ君はあの日あの時あの場所で、そこに刺さったんだい?
とやっぱり鰻を責めたくなる気持ちを抑えながら、大学医学部附属病院に着いた。

******


待つこと1時間20分。
まず15分間、吸引式の麻酔をすることに。
便器をがぽっとやるやつみたいな黒いやつを口にあて、機械から出てくるまずい煙を15分間吸う苦行。

まずいし気持ち悪いし、オエオエしながら地獄の15分だった。

その後、処置室の外で30分待たされた。
麻酔は完全に切れた状態で椅子に座らされる雨音。
(あの15分はなんだったん……)

「あの、時間経ってますが、麻酔切れてませんかね?」
「大丈夫ですよ」

長めに効くタイプのやつなのかな?と半信半疑に思うが、不安な気持ちは全く消えない。

まず、鼻から咽喉ファイバーという太めの管をいれられた。
痛い。
プールで鼻に水が入った時のようなツーンとする痛み。

筒状になった咽頭ファイバーの中に、細い管が通せるようになっており、その管の先端には小さいピンセットのようなものが付いていて、口腔内の鰻小骨を摘んで取る、という作戦だ。

まず、女医がそれをトライする。
「ゔぉぉおおえええっ」
最初からずっと心配し、恐れていたことが起こってしまった。

麻酔が全く効いていない☆

普通に死ぬほど痛いし、オエオエなってるではないか。

あまりにも雨音が暴れるので、モニターから鰻小骨は見えなくなり、女医が冷静に咽喉ファイバーを抜いた。
「一度楽にしてください」

楽になんてしていられるものですか。
またこの痛い管を鼻から入れられるという恐怖と戦わなければならない。
「あの痛みがくるのか」という絶望が同時に押し寄せる。

「もう一度行きますねー」
「お゛ぇえええええ」

つまむ瞬間、喉のオエゾーンに小さいピンセットの先端が必ず当たると、鋭い痛みとオエずきが同時にくる。

鼻からは鼻水、目からは涙。
喉からは血が吹き出していた。

途中、唾液と血で視界が悪くなるとのことで、チューブで口腔内の唾液などを吸引することに。
吸引チューブから唾液と血の塊がじゅるじゅると通るのが見える。

うわーやべー喉傷ついてるやん、血出てるやん、やべー。

「じゃあもう一度頑張りましょうね」
あ、拷問って、こんな感じだわ。直感で感じた。

でも厄介なのは、この人たちはわたしを救おうと頑張ってくれている、だから「やめてください」とも言えない。

だから実際問題、拷問ではない。
わたしを鰻小骨の苦しみから助けようとしてくださっているのだ。
でも、苦痛が伴いすぎでは?

さすがに女医も麻酔が切れているのに気付き、喉に直接塗るタイプの麻酔をすることになった。

これまた地獄だった。

アイスの棒みたいなやつに楕円形の麻酔が染みた布。
それを喉に押し当てる。
「おえええええええええ」

「はい、頑張って!だんだんオエーってしなくなったら効いてきた証拠だからね」

「おえええええええええ」

3〜4回喉の奥に棒を突っ込む作業を繰り返される。

喉がジンジンして、だんだんオエ付きが少なくなった。

「じゃ、処置台にいきましょう」

仕切り直しで、鼻の中に咽喉ファイバーを通す。

ここに来る前に2〜3回入ってきてるので、だんだんどれくらいの痛みかは把握してきた。でも、このフェーズも地味に痛いのだ。

咽頭ファイバーから通ってきた細い管が喉の鰻小骨スポット(オエオエゾーン)に到達する。ちくちくした痛みがくる。

「唾液我慢してください」
からの
モニターで鰻小骨をみつけるまで、顔の角度を変えられたりするときに喉に激痛とオエゾーンタッチによるオエつきがおこり、

「う゛ぁあああ゛あ゛あ゛あ゛」
と断末魔のような絶叫をあげる雨音。

終わりの見えない地獄、おわかりいただけたであろうか?

上記を1セットとすると、おそらく7〜8回同じくだりを繰り返しても、なかなか取れないという、状態が続いた。

補助の看護師がひとりふたりと増え、医者も4人くらいやってきた。
看護師からは丸めたタオルを渡され「これを握ってください」と言われた。

最終、わたしのまわりには合計、7〜8人の医者+看護師がいた。
まるで大物患者の緊急オペのような状況である(ただし意識は超ある)

青いオペ着を着て、目のところにマイクロスコープをつけてる外科医みたいな方も「俺、行こうか?」みたいに聞いている。

あまりの病院中に聞こえるかのような大絶叫だったので、何事かと覗きにくる医者もいた。

彼らはこの患者が、鰻小骨がノドにささった(命になんの別状もない)患者だと知っているのだろうか?

意識のある状態で、麻酔なしで、鼻から入った管と、その中を通る、先端が尖ったピンセットがのどを何度も何度もつまみ、その度に断末魔のような声を上げる雨音。

「殺してくれ」
拷問をされ続けた人がいう言葉。
あれを言いたくなる気持ちもわかった。

いつ終わるかわからない地獄。

失敗しては、管を抜き、少しだけ間を開けたら、また再度鼻から入ってくる。

途中選手交代(医者交代)も行われた。
メガネの真面目そうな男性。

「いー」って言ってとか「うー」って言ってとか。
さまざまな言語を言わされ、ベロをつかまれ、動かないようにした状態で、喉にピンセットを持ってくる。

何度も何度も失敗するたびに、わたしの目から光は消え、
なにを言われても、天を仰ぎながら「お゛……あ゛……う゛……」と、拷問されすぎて気が狂った人のような、声にならない声をあげた。

【このまま何時間も取れないのではないか?】
医者たちの顔にも不安の色が見えた。

最初に鼻から管を通した時から1時間が経とうとしていた。

何度も何度も激痛に耐えなければならない状況に、わたしも体力は奪われ、涙は枯れ果て、絶望しかなかった。

9回目くらいのトライ。
ものすごい激痛と共に、鰻小骨が取り除かれた。

「取れましたあっ!!!!!」
わぁあああああああああああああああああああああ

処置室に歓声が上がる。

海猿2の劇場版フィナーレで見たことある光景が広がった。
確か、亡くなったかと思ってた伊藤英明が生きていて、生存者も無事だったことがわかった時の司令室にいた50人くらいが書類を上に投げて喜ぶシーン。

まさにあれだ。

わたしは、長時間に渡る痛みと苦痛で、体力を奪われすぎていたが、拳を振り上げて「よ…かっ…た」とつぶやいた。

「小骨、持って帰ります?」
女医が笑顔で尋ねてきて、若干イラっとしながらも
「いや、それは大丈夫です」
と答えたが、

「写真だけ撮らせてください」
わたしは、この壮大なエピソードを伝える義務がある
謎の使命感に駆られた雨音は、写真だけ撮った。

ライタープロ魂に心を奪われた女医は、わざわざライトを当ててくれた。

「ちなみに鰻小骨が刺さって、ここにくる人っているんですか?」
「よくいますよ〜」
「いるんですね。みんなこんな大変な思いするんですね」
「あ、いえ大体みなさんすぐ見つかって5分くらいでピッて取って終わりです」
「え?」
「1時間もかかったのは、雨音さんが初めてです」
「まじすか……」
「しばらく鰻は食べれなそうですね★」
「はい……しばらくは懲り懲りです」


診察室から出て、処置室にタオルを握らせてくれた看護師と、麻酔のやり方を指導してくれた看護師がいて、

「おせわになりました」

ぺこりと頭を下げると、

「大変でしたね……とれて、本当に良かったです!!」
と笑顔で近づいて、手を握ってくれた。

「わたしライターなので、この話コラムに書きたいと思います」
「絶対読みます!」

「雨音です、雨音なりです」
コナンが自分の名前を名乗るときに使うあの手法(「コナン。江戸川コナンだ」)で、一応ビジネスネーム「雨音なり」を名乗り、処置室を後にした。

誕生日前に、終わりの見えない地獄を体験したわたし。
鰻小骨が刺さって、こんな惨劇を経験したのは、きっと日本中でわたしだけである。(雨音調べ)

今後、鰻小骨が刺さった方に向けて、このコラムを書き残しておこうと思った次第だ。

鰻小骨をナメてはいけない。

どのネット記事にも、

鰻は柔らかい骨だからチョロい、みたいなことしか書いていない。
侮るなかれ。

変な場所に刺さり、取れなくなった時、苦痛を伴うことになるからだ。

今後同じ場所に刺さった際は、どんな手を尽くしても全身麻酔で眠った状態で処置してくれる病院を選択しようと心に誓った。

その前に、もうしばらく鰻は食べられないと思う。もはや、魚も心配だ。

もし、今後鰻を食べる方がいたら、声を大にして言いたい。
1口ごとに1000回くらい噛んで!もしくはピンセットで、骨を全部抜いてから食べて!

刺さったら、絶対に他のものは食べず、耳鼻科か耳鼻咽喉科に行ってください。(全身麻酔奨励)

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ゆびきゅう@おやゆび編集長
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