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e-カリキュラムデザイン曼荼羅の意味

例えば、これからの国際理解教育実践カリキュラムのための
e-カリキュラムデザイン曼荼羅の意味と可能性

成田喜一郎

e-カリキュラムデザイン曼荼羅は、これからの国際理解教育実践カリキュラムを見通すための反射・反響・反映する「鏡」としての意味があるのではないかと感じ、考えています。

まず、カリキュラムとはいったい何でしょうか。

わたくしは、これまでの研究-実践(成田2017)を踏まえて、今、カリキュラムには、以下のような意味があると感じ、考えています。

カリキュラムとは、長-短いずれの場合においても旅のようなものです。
 一般に、旅をするときに不可欠なものは、なぜ、何、どのように目的地に向かうのか、目的地を示した地図が必要です。【Map(Plan)】
 また、時に道に迷ったり、外れたり、戻ったり実際に旅をした足跡ができます。【Footmark(Do)】
 そして、旅を終えて訪れた土地の景色やそこで出会った生き物や人々とのつながり、旅にかかった時間的な推移などの記憶/想い出の「鏡」から反射や反響・反映してきたことも意味しています。【Reflection(Check)】
 さらに、新たな未来への旅をデザインすることもあります。【Design(Action /Trial)】
 しかし、時としてMap(Plan)を持たずに、デラシネ/déraciné(根なし草)のような旅をする場合ももあります。【Déraciné】
 そうしたデラシネの旅は、歩き続けたあとに残った足あとによって前人未踏の新地図Mapができることもあります。【Untrodden】
 旅としてのCurriculumは、世代を超えて、また職の有無を超えて、生活者市民/住民(Inhabitants)の《まなくらしごと》(学びと暮らしと仕事)の中にあります。【Lifelong/Life History】
」  (2024.6.27 創発/生成されてきた意味)

出典:成田喜一郎「カリキュラムって何?—定義の生成から意味のデザインへhttps://note.com/narisen2017/n/nac641109a78b(2024.6.28note)

e-カリキュラムデザイン曼荼羅の開発・実践のヒストリーについては、章末の参考文献(今井・成田2018)をご参照ください。

ここでは、「e-カリキュラムデザイン曼荼羅とは何か」今、創発(emergence)/生成(generate)してきた最新の意味をご紹介します。

形式例「e-カリキュラムデザイン曼荼羅


e-カリキュラムデザイン曼荼羅とは何か


(1)定義から意味へ
 この「e-カリキュラムデザイン曼陀羅」は、たった1枚で単元や本時/学びや暮らし・仕事上の実践を鳥瞰・俯瞰でき、常にねらいやねがい/Unit questions=U.Qや本質的で根源的な問い/Essential Questions =E.Qに守られながら、学びや暮らし・仕事を構成し展開できるところに特色と可能性がある。

 デザインの語源は、「“計画を記号に表す”ことを意味するラテン語のdesignare で、これから敷衍(ふえん)すると、デザインとはある目的に向けて計画を立て、問題解決のために思考・概念の組み立てを行い、それを可視的・触覚的媒体によって表現・表示すること」(福井1978)である。まさに、デザインDesign とは、印(道)sign無きところに印をつけていくという行為である。
*福井晃一(1978)『デザイン小辞典』ダビッド社、p.186

 「e-カリキュラムデザイン曼荼羅とは、まさに、前人未踏の時空間・人間(じんかん)において問いのかたちとなった「ねらいやねがい」に向けて見通しを持ちながら、次々と創発/生成され、広がりと深まりをもたらす問いを探し愛し、自他共にレスポンスし続け生きる感覚と思考とその概念化のプロセスを描くシートであり、それを図式化・可視化した創作的表現構成物である」と定義し、意味づけておきたい。(成田2024.8.28生成的定義から意味へ)

 なお、この「e-カリキュラムデザイン曼陀羅」は、デザインシートとしての活用以外に、カリキュラムを実施・実践した記憶の記録/Documentationのためにも援用できる。

(2)描き方

 描く順番に留意/集注されたい。
 ウィギンズ&マクタイのBackward Designの逆向き設計論/backward Designを援用し、ゴールを見据えて終結から逆向きに描くことを推奨している。

 はじめに、中央の枠内「問い」に、
 ①「本質的で根源的な問い/永続的な理解や思考をもたらす問いEssential Questions」と、
 ②単元or本時等のGoalにあるねらいやねがい/Unit Questions」を書く。

 特に「本質的で根源的な問い/永続的な理解や思考をもたらす問いE.Q」は柔軟に設定し実践する。

 ・「本質的で根源的な問い/永続的な理解や思考をもたらす問いE.Q」とは、答えは一つではなく多様で、本時/今ここを超えて永続的な理解や思考をもたらす問いであり、学習者と実践者が相互に考え続けていくことになる問いである。

 ・「本質的で根源的な問い/永続的な理解や思考をもたらす問いE.Q」は、実践/学びと暮らし・仕事の展開過程を見通しつつ実践することによって、事中や事後に創発(emergence)・生成(generate)されてくることもある。
 その場合、当初は空欄になる。

 ③次に、「起」の象限に、単元or本時棟の評価規準/基準・身に付くだろう力や価値観、各時の主題・評価計画・時間数などのエッセンスを書き入れる。

 ◎ここには導入のための導入(学びの当事者性、自分ごと性の担保)を記入しておきたい。
 ・本時の1時間は、単元(Unit)の、問いのかたちにしたねらい(規準)や展開のどこに位置付いているのか、「鳥の目」で見ておくこと。(鳥瞰の重要性
 ・多様な評価方法を選択できる評価計画も考えておくとよい。
  初めて単元等に入る第1時に、評価規準/基準票=ルーブリックを学習者に提示するとよい。まさに、ここが逆向き設計の醍醐味である。

 ④そして、「結」の象限から逆向きに書く。

 まず、ねらい/ねがいU.QやE.Qを踏まえて、実践の「終結」=本単元or本時のゴールをイメージしたい

 ・学習者が何を向かって学びゆくのか、何をするのか。リフレクトされたことの言語化と共有など作業を通じてなのか、話を聴き感じ考えることを通じてなのか 等。
 ・実践者はどんな言葉を発するのか。本時のまとめを語ってしまうのか、新たな問いを発するのか、学習者から問いを引き出すのか、次時への期待や希望を共有するのか 等

 ⑤「転」の象限 さらに、単元or本時の「山場」となる象限を書く。
  「結」の章につながる実践の「展開」をイメージしたい。

 ・本時のねらいやねがい=U.Q(あるいはE.Q)にレスポンスするために感じ、考える活動をイメージする。
 ・「山場」としての「転」の章に至るに必要な知識・概念・スキルを確認しておきたい。
 導入と「山場」の狭間の地道な道、すなわち知識や概念・スキルはいったい何なのか。それは、既知か今ここでの習得なのか吟味したい。そして、⑥「承」の象限
 ・実践の山場をめざす。問いや謎を解く、盛り上がるor澱む場面を具体的にイメージすること。

 ⑥「承」の象限 最後に、単元や本時等に不可欠な「承け」の象限を書く。

  ねらいやねがい=U.QやE.Qをめざし、転・結につながる、学びに「火」がつくものやことひとは何か選択したい。
  ここ⑥「承」の象限は、③「起」の象限の《導入のための導入》を受けた展開を書いてもよい。

 以下、「導入スタイルの多様性」を示しておきたい。

 ・予想だにしない「もの」「こと」「ひと」の提示:「えっ?何?それ?」と気持ちや関心を集注(一点に集め注ぐ)できる方法等、もっとも適切な方法を選択したい★★★
 ・本時のねらいとしての問いや評価規準(ルーブリック):到達点をイメージさせるか(逆向き設計上の正攻法)★★
 ・前時の学びのおさらい:つながりを想起し合う時間とするか(単純正攻法)★ 
 ・世間話や雑談:広義の時事問題や他愛無い話への興味・関心を引きだすか、自他が学びに向かうために不可欠な規律への注意で引き締まるか(本時の内容との関連性の強・弱)★ 

◎この「e-カリキュラムデザイン曼陀羅」のあとに、「学習財」研究の過程で収集した史資料、実際に使用したい「資料やプリント」や「板書計画」などを添付したい。

また、出典の明示を忘れずに。可能な限り原典に当たりたい。

●但し、実践とは生きもの/生命活動である
 逆向き設計のデザインであるにしても強引な展開は禁物。実践は、今ここで学習者とあなたとの並び進みゆく関係性(相互性/Mutuality)の中で創成・生成されてゆくものである。

●なお、この「e-カリキュラムデザイン曼陀羅」は、実践(講義・講演、日常の学びと暮らし・仕事)のデザインシートや記録シートとしても活用することができる。
 つねに、その実践のねらいやねがいU.QやE.Qを予想・考察しながら、言語化してゆくとよい。

●また、このシートがなくても、無地の用紙(A4判)の中央にE.QとU.Qを書く欄をつくり、実線で4象限に区切り、デザインしたり、記録をとったりすることができる。                           (2024.8.28)

主な参考文献

・ウィギンズ&マクタイ著、西岡加名恵訳(2012)『理解をもたらすカリキュラム設計―「逆向き設計」の理論と方法』日本標準.

・今井文男・成田喜一郎(2018)「カリキュラムデザインのための『曼荼羅』シートの開発と実践:『e-カリキュラムデザイン曼荼羅』への道」『東京学芸大学教職大学院年報』第6集 ,p.1-12.
https://www.u-gakugei.ac.jp/graduate/professional/upload/a_report_2017_01.pdf

・成田喜一郎「カリキュラムって何?—定義の生成から意味のデザインへ」(2024.6.28)
https://note.com/narisen2017/n/nac641109a78b

・成田喜一郎「e-カリキュラムデザイン曼荼羅とは何か」(2024.8.28)https://genkaikyoukaiekkyo.blogspot.com/2024/08/e-2024828.html

・stand.fm「よみききの世界」(口承文化記録としてのethnography)https://stand.fm/channels/63397af68fc92d08babaf481

・note「よみきき文化想造(imagination /creation)への道」(書字文化記録としてのethnography)
https://note.com/narisen2017/ 

なお、本章に関するお問い合わせは、mahoroba2023★outlook.jp までどうぞ。


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