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ジョン・フィールド『社会関係資本:現代社会の人脈・信頼・コミュニティ』の翻訳者からのメッセージを頂くに至る長い物語

ジョン・フィールド(2022)佐藤智子・西塚孝平・佐々木菜々子 訳『Social Capital 社会関係資本 現代社会の人脈・信頼・コミュニティ』明石書店(矢野裕俊 解説)

2022年の秋、本書を贈呈いただいた。
3月に大学(非常勤を含む)を離れて、齢70にしてRADIO Personalityデビューしていた私は、アカデミックな文献を読むことなしに過ごしていた。
読んだとしてもこれまでの蔵書の整理のために読み直す程度だった。
読みたくなった文献があった場合、極力、公共図書館から借りて読むことにしてきた。新刊がその対象になった時は、ただただ順番を待つという暮らしをしていた。
ともかく書/倉庫を片付けること、残す残さないを峻別する日々を送っていた。

RADIO Personalityの仕事と言っても、いわゆるプロボノ。入ってくるものは0(ゼロ)。奇縁あって4月からTOKYO854くるめラというローカルFM(東久留米市)で月2回ほど「なりっちの越境する学びの時間です!」という番組を持ち始めた。

すると、どうだろう。これまで目の前には当たり前のように、学生・院生がおり、これまでの私の研究-実践史をもとにシラバスをもとに講義やゼミする。受講者やゼミ生たちは、講義を聴き、討議し、ゼミでは課題研究を行ない、これからのためにこれまでを問い直すReflectionをってゆく。その学生・院生たちのReflectionをfeedback /feedforwardし、教授の私自身もReflectionを行い、これからの講義・ゼミをリデザインしてゆく。

しかし、RADIO Personalityは、ガラスの向こうにいるアシスタント兼ミキサーのあこちゃんと掛け合いトークしながら、電波やネットの向こうにいる?目に見えないリスナーさんに54分間「越境する学びの時間」を放ち送ってゆく。
「越境する教育学(Holistic Education/Care)」を専門にしていた私が、ラジオで大学・大学院と同じように講義やゼミをする訳にはいかず、当初は手探りでScript Designをしていった。54分間話しっぱなしではなく、オープニング・あこちゃんとなりっちの《あこなりトーク》、楽曲を3曲ほど選び、お届けする。

2022年4月9日(土)第1回目の放送、聴き直すと恥ずかしくなる54分間だった。スポンサーになってくださったキーステージ21さんがSpotifyにポッドキャストをあげてくださっている。

「越境する学び」(様々な「境」を越えてゆくまなびやくらしの方へ)
「啐啄同時/逆・啐啄同時」の話
「楽しく・分かり・為になる」番組をめざす
「南方熊楠」や「羽仁もと子」が使っておられた言葉「化育」の話
「よみききの時間」詩や物語などのご紹介
「まだ おさないころ」(河田 宣世さんの詩)
『想像力:創造の泉をさぐる』(内田伸子著、1994年)
「リスナーさん」と「あこちゃん」と「なりっち」とで創ってゆく番組
2022年10月からは名称を「なりっちの越えるまなくらタイム」に変えて、
2024年3月23日(土)最終回まで、通算全48回、改称後#36の生放送番組を続けてきました。
過去のポッドキャストは、こちらのSpotifyからお聴きになれます。

TOKYO854くるめラでのRADIO Personality経験は、掛け替えのない至福の時間でした。大学・大学院での講義・ゼミとはまったく異なるフィールドに足を踏み込んだ。5歳・中学生から88歳までリスナーさん、特に親子リスナーさんを中心に多世代・多職種・無職の生活者市民/住民の方々とのおたよりとリクエスト曲を交わす珠玉のフィールドワークでした。限られた方々と行ってきた研究-実践の文脈から《まなくらしごと(学びと暮らし・仕事)》する方々とのつながりかかわり合う並進(Mutual translation /Mutual Reflection /Mutual Care)という文脈への越境だった。

2022年10月からパーソナルなラジオ番組 stand.fm『よみききの世界へ』(15分から20分程度)も始めてゆく。これは、ほぼ毎日のように「声の日記」として公私にわたるお話——昨年6月出した拙著『物語「教育」誤訳のままで大丈夫!?-Education のリハビリ、あなたと試みる!-』キーステージ21みらい新書をめぐるお話、お散歩の途中に収録する他愛ないお話など——を収録・配信している。

話を原点に戻すと、ジョン・フィールド(2022)佐藤智子・西塚孝平・佐々木菜々子 訳『Social Capital 社会関係資本 現代社会の人脈・信頼・コミュニティ』明石書店の翻訳者のおひとり西塚孝平さんは、こうした「越境生活」と「蔵書整理」の日々を送っている私にもお気遣いをくださり、お送りくださった。
私としては、久しぶりのアカデミックな文献、しかも新刊をいただくことができた。
早速、本書を手にしながら、読み始めたところで、stand.fm『よみききの世界へ』(2022.12.1)で、「Social Capital 社会関係資本:2011拙稿2編〜2022新刊」(26分)という番組を収録・配信し、西塚さんにお送りした。

読むラジオ(Web Site):https://genkaikyoukaiekkyo.blogspot.com/2022/11/social-captal.html

この番組を収録・配信したのは、本書をいただいた喜びと、本書の主題「Social Capital/社会関係資本」という概念が私のフックに掛かったからでもあった。
研究論文などではないが、かつての拙稿の中に「社会関係資本」について書いた記憶があったからだ。
● 成田 喜一郎(2012)「Post3.11の教育・社会と文化・歴史的活動理論の可能性」活動理論学会編『活動理論の可能性と課題』2012年8月22日, pp.1-3. https://bit.ly/3uabR2T
社会関係資本とは、①相互に信じ合える関係性【信頼】、②お互い様と言える関係性【互酬性】、③結んだり解いたりできる緩やかな関係性【ネットワーク-絆】で構成される概念とした。(成田,2012:3)
● 成田 喜一郎(2011)「ESDの質保証とHOPE評価の可能性:子どもと教師のためのエスノグラフィー」ACCU編『ひろがりつながるESD実践事例48』、2011年3月15日, pp.181-190.
https://bit.ly/3ufmPo1

2022年秋冬の西塚浩平さんとのやりとりの後は、しばらく音信が途絶えていた。西塚さんは大学でのご研究などでお忙しかったこと、私は私で「越境生活」に沼落ちしていたことなど、お互いに忙しない日々を送っていた。

余談だが、RADIO Personalityをしていて、世代の異なるあこちゃんやリスナーさんとの送るフィールドで、元大学教授の知らなかった世界と言葉に触れていった。
「沼落ち」という言もあこちゃんから教えていただいた。何かに「ハマる」という表現は使ったことがあったが、そうした事実・事象・現象を「沼落ち」などという表現は初体験だった。

また当初は、番組内でかける楽曲もなりっちが考えて決めたり、あこちゃんのリクエストをかけたりしていたが、5歳の「小さな人」、中学生の「小さな人」、その親御さんという「元小さな人」、88歳の「元小さな人」からのいただくリクエスト曲は、なりっちこと私が聴いたことのない世界の楽曲だったりもした。

話があちこちに向かってしまうのは、2年以上にわたる「越境生活」で身について習性であるだけではなく、研究-実践者だった時、大学院での講義・ゼミの中で触れてきた概念「社会構成主義」を「越境生活」の中で身を以って体験してゆくことになってきたのだ。研究-実践者としての私が援用してきたのは、Kenneth J. Gergenの「Social Construction/社会構成主義」だった。

この「社会構成主義」が様々な「教育諸理論・哲学」の中でどのような位置にあるのかは、次の表や図をご覧いただきたい。
教育諸理論の三層包括分類表(Ver.15.3)」である。
これは、教育哲学者の吉田敦彦さんが作成された「教育諸理論の三層包括的分類」(吉田敦彦『ホリスティック教育論―日本の動向と思想地平』日本評論社 , 1999年,p.291)をもとに、私が様々なフィールドワークに入る度にその表が増殖・更新してきたものである。また、表だけではなく図も描き添えてきた。
この「教育諸理論の三層包括分類表(Ver.15.3)」(2021)が最新版で、それ以後、更新してはいないが、ここまでどのような道を辿ってきたのか、ご関心のある方はこちらのサイト〔「教育諸理論の三層包括分類表」改訂更新のEthnography
実践と理論と哲学を俯瞰する〕も参照されたい。
https://tokinomahoroba.blogspot.com/2019/08/19992019.html

2024年5月、西塚浩平さんと再会するに至った経緯は、以下のとおりだ。
・2024年5月17日、私がしばらく休業中だったFacebookのプライベート・グループを再開したことに端を発している。
旧名称「なりっちのよみききタイム」の時空間・人間(じんかん)」(2022年10月18日の投稿後休業)を「よみききの世界へ:書字文化と口承文化の架け橋」に変更し、グループメンバーに再開を宣言し、Facebookの公開タイムラインにも再開のお知らせを投稿した。
・プライベート・グループの再開の契機は、ある教育学研究者から拙著(2023)物語「教育」誤訳のままで大丈夫!?-Education のリハビリ、あなたと試みる!-』キーステージ21みらい新書へのReview/書評が届いたこと、読書が苦手、読みたくともなかなか読めない方々と拙著を読み合う「並進読書会」へのお誘いのためだった。
・西塚さんから加入のリクエストを頂戴し、メッセンジャーでのやりとりも再開した。
・私の近況報告として、この4月から株式会社キーステージ21の顧問の仕事を始めたこと、新入社員(企業者市民)の方々への「研修」というかたちで「並進(Mutual translation /Mutual Reflection /Mutual Care)」を始めたことなどお伝えし、西塚孝平さんからも近況報告をいただく。
・いただいたメッセージの中で、2022年刊行されたジョン・フィールド(2022)佐藤智子・西塚孝平・佐々木菜々子 訳『Social Capital 社会関係資本 現代社会の人脈・信頼・コミュニティ』明石書店について、私が取り上げたラジオのことも想起してくださった。
・このラジオ「Social Capital 社会関係資本:2011拙稿2編〜2022新刊」(26分)が版元である明石書店さんでも話題になったこともお知らせくださいました。

実は、明石書店さんとは長いお付き合いをさせていただいてきた出版社だった。
私が所属していた日本国際理解教育学会の著作(5冊で分担執筆)や学会の紀要(10年近く編集委員をさせていただいた、投稿論文もあったり)、「研究報告書」(編著)など、ゆかりある出版社だったことを想起した。

2024年5月23日、私の統合Web Site『越えるまなくらへの旅:学びと暮らしと仕事』に「日本国際理解教育学会の著作及び紀要・研究報告書と私との間にあった出版社:明石書店」をアップした。

そして、20204年5月24日、stand.fm『よみききの世界』に
「ジョン・フィールド『社会関係資本:現代社会の人脈・信頼・コミュニティ』の翻訳者からのメッセージを頂くに至る長い物語」を収録・配信する。【口承文化記録】

ラジオをお聴きになる場合は、読むラジオとしてのこのnote「よみきき文化想造への道:Imagination /Creation」も合わせてお読みください。【書字文化記録】


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