しずかにデモに行く
私のインスタグラムのストーリーはカオスだ。
首がなくなった子どもを
両手で持って高く上げるしかない大人
ピラティスに行ったよ
五人並んで寝ているように亡くなっているこども
ぷにぷにのふくふくで
誕生日を祝われている友達の子ども
最悪の栄養状態でガリガリになって
餓死した7ヶ月の子ども
今日もコーヒーがおいしい
すごいきれいな夕焼け
この空とつながった場所で
今まさにラファでぎゃくさつが行われている。
過去の歴史の教科書にあることじゃない。
今。
インスタグラムの
ストーリーをめくっていたら、
デモの告知を見つける。
誰かが
「やる必要がある」と
腹をくくって決めた日時と場所と、
できるだけ多様な人が
安心安全に参加できるようにと配慮された
グラウンドルール(*1)と、
情報保障(*2)の案内が載ったストーリー。
ストーリーの画像も、誰かの手作り。
サクッと流れてくるそのストーリーの裏には、
自分の生活に精一杯な人がほとんどの
この日本で
時間・労力・気力を
振り絞っている人がいる。
行けるかな、予定を確認する。
行けそうだったので、カレンダーに予定を入れる。
えーと、持ち物は。
メルカリで買った、でっかい旗。
首に巻くクフィーヤ(*3)。
プラカードもあるといいけど
こないだ友達に渡してしまって手元にない。
このまま向かおう。
新宿駅で降りて東口に向かう。
新宿ベルクで腹ごしらえをする。
ここのコーヒーが大好き。
隣の席の人に
「そのクフィーヤとても似合ってます」
と言われてうれしい。
東南口に移動すると、人だかりができていた。
人の薄いところにフワッと着地する。
旗を広げて高く揚げる。
この日は、5月29日水曜日。
5月29日はかつて日本が台湾征服戦争(*4)を開始した日。
1895年、1万人以上の台湾人をさつがいしている。
私はこの日のことを知らなかった。
もっと前から知りたかった。
自ら情報を得てこなかった。
得なくても生きてこられてしまった。
学ぶのは被害の歴史ばかりだ。
加害の歴史を知らないまま生きてこれてしまっている。
沖縄のこと、朝鮮人ぎゃくさつのこと、アイヌのこと……
他にも山ほどあるだろう。
どれもいまだに解決していない。
さまざまな人のスピーチを聞く。
デモに行くといいことは、
生の声をここで聞けることだ。
いま苦しんでいるその人の生の声を聞くことで
私はその声の目撃者になる。伝えていくことができる。
歴史を学ぶことも必要。
そして、今起こっていることを
アップデートし続けることも必要だ。
コールに参加する。
参加してもいいし、聞いているだけでもいい。
この日は参加した。
手のひらのスマホで
こどもたちのぎゃくさつが
ライブストリーミングされている。
声をあげずにいられない。
非人道的な方法で
人権が、これからがあった命が、
蹂躙されている。
デモは途中で来てもいいし帰ってもいい。
けっこう人が入れ替わる。
みんな自分の生活のすきまをぬって
デモはつくられていると感じる。
仲間に出会う場でもある。
SNSでよく発信してくれている人に会って
「勇気をもらっています、ありがとう」
と伝える場でもある。
そしてゆるやかな連帯が生まれている。
職場にはだれひとりぎゃくさつに反対の声を
あげているひとがいないけれど
ここにはこんなにいて
よかった。と言ったひとがいた。
そして散り散りに帰っていく。
さっぱり解散する。
一人で駅に向かって、まっすぐ帰る。
フル参加したから、
つまり2時間大きな旗を振り続けたわけで、
右腕がじんわりと痛い。
私は、ほんのつい最近まで、
デモをしている人たちを
横目に「なんかこわい」と足速に通り過ぎる人だった。
デモは"デモンストレーション"の略。
憲法21条に定められた「表現の自由」に基づく行為で
憲法でも手厚く保護された、
民主主義の根幹ともいえる行動。
このことを知らず
「なんかこわい」と曇らせていただけだった。
選挙に出て思ったけれど、
公共の場に生身の人間が立つことの
表現の力はあなどれない。
ものすごいちからがある。
デモにもいろんな形がある。
「シッティング」という
地面に座って主張するもの。
寒い時期はおしりが冷えるから
座布団を持っていくのがいい。
「ダイイン (die-in)」という
地面にゴロンと寝転び
参加者が死者になりきることで行われる抗議。
寝転んでもいい服装で来るのがいい。
などなど。
コールも、いつも手作りされていて、
楽しげなものもあるし
激しめなものもあるから、
まだ参加したことがない人は、
いくつか覗いてみたらいいと思う。
声をあげる一つの選択肢として、
デモが、もっとカジュアルになるといい。
今まさに現在進行形で行われている
ぎゃくさつにたいして
一緒に声をあげられたら
すごくうれしい。
🍉毎日毎日どこかでアクションが行われています🍉
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*1
グラウンド・ルールとは、文字通り「その場(グラウンド)を共有する人々が守るべきルール」です。グラウンド・ルールは、ケンブリッジが参画するプロジェクトの現場はもちろん、人が集う様々な「場」に、物理的に、デカデカと掲示されます。グラウンド・ルールを掲示することで「その場で行うべき、好ましい振る舞い」を促進する、逆に「好ましくない振る舞い」を防止する、という効果があります。
*2
情報保障とは、障害のある人が情報を入手するにあたり必要なサポートを行うことで、情報を提供すること言います。主に、視覚障害者と聴覚障害者への配慮として用いられます。
*3
*4
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